会社の書類や帳票の保存期間の一覧
会社の書類や帳票には法令で保存と期間が義務付けられたものと、義務はないものの各企業の運用上それぞれが保管期間を決めているものとがあります。
書類は帳票とは、取引や各種契約、会計帳簿、伝票といった経理から人事労務、営業・仕入れに至るまで法令で保存期間を指定されたもの(法定保存文書)や業務上その内容を証拠として残しておく必要のあるものが多々あります。
会社の運営に必要な株主総会をはじめとする各種議事録、見積書、注文書、納品書、検収書、領収書、請求書、稟議書、伺書といった書類や契約書等の文書、入出金伝票、経理書類、決算書等にかかわる帳簿書類が事業を続けていく上ではついてまわりますが、こうした会社の書類の保存期間を一覧を依拠する法令ごとにまとめました。
法令で明確に保管期間が指定されているもの以外の書類については、法人であれば、社内規定等で定められていることも多く原則はそれに従って運用することになります。規定がない場合やこれから規程を作るというような場合、どのような法令を調べたらよいかについても見ていきます。
- 会社の書類や帳票の保存期間の一覧|目次
依拠する法令やルールの違いに注意
まず、冒頭で述べたような書類、帳票や伝票類の保存を義務づける法律は複数あります。具体的には、会社法、所得税法、法人税法、労働基準法、金融商品取引法、民法、下請法、関税法、健康保険法、厚生年金保険法など会社での取引や運営、税務にかかわる法令です。また、製造業であればPL法といった法令の影響を受けるものもあります。また何らかの業界固有の認証規格等を受けている場合は、そうしたルールも参照する必要があります。
これらは同じ帳票や書類であってもそれぞれの法律やルールで保存すべき年限や期限に違いがあったり、そもそもどこへ分類してよいか不明な帳票や書類もあることから、多くの企業では安全を見て年限が長いほうに統一する傾向があります。
ごく単純化していってしまえば、会社法関係では10年、税法関係では7年帳票(欠損金にかかわる場合は9年または10年)や伝票を保存しておけばよいということになります。
法令名称 | 保存期間 |
---|---|
会社法 | 10年 |
所得税法、法人税法 | 7年 |
下請法 | 2年 |
所得税法 | 法人税法 | 会社法 | |
---|---|---|---|
5年保存義務 | 7年保存義務 | 7年保存義務 | 10年保存義務 |
請求書控え、見積書、契約書、納品書控え、注文書 | 帳簿、決算書類 貸借対照表、損益計算書、青色申告決算書、現金や預金の入出金の証拠となる書類、領収書、請求書、預貯金通帳等 | 帳簿と取引等に関して作成または受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限を起算日として原則として7年間保存。注文書、契約書、送り状、領収書、見積書等を受領したり、その写しを作成した場合も。 | 会計帳簿については、税法の規定にかかわらず10年間保存。会社法に定めのない領収書や請求書などの書類については税法で定める7年間。※欠損金処理がある場合は9年(10年)。計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すためのもの)も10年保存。 |
文書ごとの保存期間の一覧
下表に代表的な書類や文書、帳票、伝票ごとの保存期間の一覧の事例をまとめていきます。ただ解釈が分かれるのは、「会社法 第四百三十二条 会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない」に規定されている書類・資料が具体的に何かという点です。これは法務省令の会社計算規則によると解されているものの、どの帳票を意味するかは法令に直接的な言及がありません。税法では直接7年と規定されている帳票や書類であっても、会社法の「会計帳簿」に該当する可能性があるため、10年間の保存期間と設定している会社が多い状況です。
なお、会社法では貸借対照表や損益計算書およびその附属書類については計算書類として直接言及されており、総勘定元帳や売掛金元帳、買掛金元帳、売上帳、仕入帳、附属明細書、現金出納帳といったものは10年保存が必要なことが分かります。
税法(法人税法、所得税法)で明確に保存することが定められているのは、帳簿関係や棚卸、B/SやP/Lといった決算関係書類を除くと以下となります。
- 注文書
- 契約書
- 送り状
- 領収書
- 見積書
- その他上記に準ずる書類
- 自己の作成した上記の書類でその写しのあるものはその写し
ただし法令ではこれらを取引相手が作成して受け取った場合に保存義務が生じるものであるため、受け取らなかった場合や相手が作成しなかった場合は保存義務はありません。裏を返せば、受領義務もないということになります。
さらに自分でこうした書類を作成して写しがある場合はその写しの保存義務が発生しますが、写しの作成義務については言及がなく、義務はないと解されています。つまり、納品書(控え)や注文書(控え)、見積書(控え)などを作っている場合は7年保存が必要ですが、作っていなければ保存は不要ということです。
重要な根拠条文のため、少し長いですが会社法、法人税法施行規則、所得税法施行規則のそれぞれの該当条項を以下に引用します。
- 会社法
- 第四百三十二条 (会計帳簿の作成及び保存)
株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
2 株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。 - 第四百三十五条 (計算書類等の作成及び保存)
株式会社は、法務省令で定めるところにより、その成立の日における貸借対照表を作成しなければならない。
2 株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。
3 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、電磁的記録をもって作成することができる。
4 株式会社は、計算書類を作成した時から十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。 - 法人税法施行規則
- 第五十九条(帳簿書類の整理保存)
一 第五十四条(取引に関する帳簿及び記載事項)に規定する帳簿並びに当該青色申告法人の資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿
二 棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに決算に関して作成されたその他の書類
三 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し - 所得税法施行規則
- 第六十三条(帳簿書類の整理保存)
第六十条第一項(決算)に規定する青色申告者は、次に掲げる帳簿及び書類を整理し、起算日から七年間(第三号に掲げる書類のうち、現金預金取引等関係書類に該当する書類以外のものにあつては、五年間)、これをその者の住所地若しくは居所地又はその営む事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならない。
一 第五十八条(取引に関する帳簿及び記載事項)に規定する帳簿並びに当該青色申告者の資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿
二 棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに計算、整理又は決算に関して作成されたその他の書類
三 取引に関して相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し
文書、帳票、伝票名称 | 保存義務期間 | 根拠 |
---|---|---|
輸出帳簿 | 5年(輸出許可の翌日から) | 関税法、関税法施行令、関税法施行規則(事後調査で使用) |
輸出のインボイス、パッキングリスト、注文書(PO、契約書)、価格表等、電子取引のデータも含む | 5年(輸出許可の翌日から) | 関税法、関税法施行令、関税法施行規則(事後調査で使用) |
輸入帳簿 | 7年(輸入許可の翌日から) | 関税法、関税法施行令、関税法施行規則(事後調査で使用) |
輸入のインボイス、パッキングリスト、注文書(PO、契約書)、価格表等、電子取引のデータも含む | 5年(輸入許可の翌日から) | 関税法、関税法施行令、関税法施行規則(事後調査で使用) |
貸借対照表、損益計算書、附属明細書、事業報告 | 会社法では10年、税法では7年 | 会社法 第435条 計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。)を作成した時から十年間、当該計算書類及びその附属明細書を保存しなければならない。法人税法施行規則 第五十九条では七年と規定。 |
株主総会(本店備え置き)・取締役会・監査役会・委員会議事録 | 10年 | 会社法318条、371条、394条、413条による |
総勘定元帳 | 10年 | 会社法432条による。税法では7年。 |
現金出納帳 | 10年 | 会社法432条による。税法では7年。 |
売掛金、買掛金元帳 | 10年 | 会社法432条による。税法では7年。 |
売上帳、仕入帳 | 10年 | 会社法432条による。税法では7年。 |
株主総会(支店備え置き)議事録 | 5年 | 会社法318条 |
有価証券届出書・報告書、内部統制報告書及びその添付書類並びにこれらの訂正届出書 | 5年 | 金融商品取引法25条 |
四半期報告書・半期報告書及びその訂正報告書 | 3年 | 金融商品取引法25条 |
臨時報告書及びその訂正報告書 | 1年 | 金融商品取引法25条 |
労働者名簿 | 5年 | 労働基準法109条 |
雇入・解雇・災害補償・賃金に関する重要な書類 | 5年 | 労働基準法109条 |
派遣元管理台帳・派遣先管理台帳 | 3年 | 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 37条、42条 |
労災保険に関する書類 | 3年 | 労働者災害補償保険法施行規則51条 |
健康保険に関する書類 | 2年 | 健康保険法施行規則 34条 |
厚生年金保険に関する書類 | 2年 | 厚生年金保険法施行規則 28条 |
雇用保険に関する書類 | 2年 | 雇用保険法施行規則 143条 |
被保険者に関する書類 | 4年 | 雇用保険法施行規則 143条 |
見積書 | 10年 | 会社法432条の会計帳簿の一種と解釈した場合、新規、改訂ともに。ただし法人税法施行規則59条では7年。所得税法では5年。 |
納品書 | 10年 | 会社法432条の会計帳簿の一種と解釈した場合。税務上の確証、証憑としては7年 |
納品書控え | 5年 | 所得税法では5年。法人税法では7年。ただしこの帳票を作成している場合に限ったもので、作成義務はない。 |
検収書 | 10年 | 会社法432条の会計帳簿の一種と解釈した場合。税務上の確証、証憑としては7年 |
領収書 | 10年 | 会社法432条の会計帳簿の一種と解釈した場合。税務上の確証、証憑としては7年 |
受領書 | 保存義務なし | 保存義務を規定した法令なし |
注文書 | 10年 | 会社法432条の会計帳簿の一種と解釈した場合。法人税法施行規則59条では7年。所得税法では5年。 |
支給書 | 10年 | 会社法432条の会計帳簿の一種と解釈した場合。受領している場合、法人税法施行規則59条では7年。 |
支給品要求書 | 10年 | 会社法432条の会計帳簿の一種と解釈した場合。受領している場合、法人税法施行規則59条では7年。 |
入金伝票、出金伝票(控) | 3年 | 税務対応上。発行している場合に限る。ただし、法人税法施行規則59条や会社法ではこれら伝票を元にしている帳簿の保存義務を課しているため、状況による。 |
棚卸表 | 7年 | 法人税法施行規則 59条 |
固定資産台帳 | 7年 | 法人税法施行規則 59条 |
契約書 | 7年 | 法人税法施行規則 59条。会社法にかかる契約書であれば10年。法定保存文書としてはこの通りだが、ただし以下分野別の契約の通り、債権等の消滅時効を考慮してより長い期間保管することもある。会社によっては重要な契約書は永久保存扱いになっている。 |
不動産の譲渡契約 | 10年(代金完済日から) | 通常の債権等の消滅時効のため |
不動産の譲受契約(売渡証書) | 10年(当該不動産を譲受けた日から) | 通常の債権等の消滅時効のため |
不動産の賃貸借契約 | 10年(代金完済日から) | 通常の債権等の消滅時効のため |
不動産賃貸借契約 | 10年(代金完済日から) | 特に法令の定め無し |
債権の譲渡・譲受契約 | 10年(代金完済日から) | 特に法令の定め無し |
無体財産権の譲渡・譲受に関する契約 | 20年(代金完済日から) | 民法167条による消滅時効 |
無体財産権の使用許諾契約 | 20年(残存義務を負わなくなってから) | 民法167条による消滅時効 |
技術援助契約、共同開発契約 | 20年(残存義務を負わなくなってから) | 民法167条による消滅時効 |
秘密保持契約 | 20年(残存義務を負わなくなってから) | 民法167条による消滅時効 |
動産売買契約(買主) | 7年(代金完済日から) | 税務上、注文書・納品書との整合性 |
請負・委任契約(注文者・委任者側) | 7年(代金完済日から) | 税務上、注文書・納品書との整合性 |
動産売買契約(売主) | 10年(代金完済日から) | 通常の債権等の消滅時効 |
請負・委任契約(請負・受任側) | 10年(代金完済日から) | 通常の債権等の消滅時効 |
取引基本契約(買主・注文者側) | 20年(契約終了日から) | 民法167条による消滅時効 |
取引基本契約(売主・請負側) | 20年(契約終了日から) | 民法167条による消滅時効 |
品質保証契約 | 20年(契約終了日から) | 民法167条による消滅時効 |
クレーム補償契約 | 20年(契約終了日から) | 民法167条による消滅時効 |
金銭消費貸借契約 | なし(返済後、破棄) | 法的根拠なし |
動産賃貸借契約 | 5年(弁済終了日から) | 法的根拠なし |
動産使用貸借契約 | 5年(設備返却日から) | 法的根拠なし |
会社が連帯保証する契約 | 5年(債務弁済が終了した日から) | 法的根拠なし |
稟議書・伺書(接待、進物) | 7年 | 税務上のエビデンスとして。法令の決まり無し |
稟議書・伺書(取引開始) | 5年 | 税務上のエビデンスとして。法令の決まり無し |
製造標準、製造指示書 | 11年(廃止から) | PL法(製造物責任法)上の対応。この法令は製造物の欠陥が原因で生命、身体又は財産に損害を被った場合に、被害者が製造業者等に対して損害賠償を求めることができることを規定したもの。遡及して製造標準や指示書の記録を確認できるように。 |
監督官庁による改善指摘・指導に関する文書 | 10年(発行日から) | 法令の決まり無し |
取引先に関する調査報告書 | 10年(発行日から) | 法令の決まり無し |
特定プロジェクト、特命、営業権の譲渡・譲受に関する契約や文書 | 永久 | 社史編纂上の理由から永久保存される事例が多い。法令の決まり無し |
保存期間ルール制定の所管部門
社内で帳票や保存書類のルール決めを行う部署は多くの場合、全社的なものであれば総務部門ですが法務部が行っていることもあります。法令の所管部署が責任をもってルール化し、社内のコンプライアンス体制に則って運用していくことが望ましいですが、法令ごとに担当する部署が違うことも多々ありますので、それらの取りまとめという意味で総務部門が旗振りをしていることが多いようです。
組織が大きくなると各部門ごとに保存書類の年限を定めて運用していくことになりますが、そうした各部門がルール作りをする際に依拠する土台となる全社的なルールを法令に基づいて作っておくことが法令順守の一助になります。
帳票の保存期間ルールの所管部署が総務というのは、書庫や文書保管庫を所管していることが多いというのも一つの理由です。各部署で保存しきれない会社の中で保存が必要な書類を総務が管理する書庫等で保管することになるためです。会社によってはグループ会社や社外に業務委託しているケースも散見されます。
保管期限の過ぎた書類の廃棄方法
法令で明確に保管期間が定められている以外の書類については、「万が一のために」という安全主義で保存年限を設定すると時に書庫や保管庫が書類や伝票で溢れかえってしまいます。合理的な根拠のあるルールを設定して、保存期間を過ぎた書類や伝票類はどんどん捨てていきましょう。
取引相手先の社名や取引内容がわかるような帳票の場合、廃棄は原則としてシュレッダーでの粉砕や溶解処理で行うことが一般的です。数字や記号の羅列がメインで他社で見ても中身がわからないようなものはそのままリサイクルに出されていることもありますが、抜き取られる可能性がある場合や個人情報を扱っている書類が混ざっている場合は、必ず粉砕や溶解処理を行って廃棄する必要があります。特定のプロジェクトや特命事項をはじめ、会社の機密にかかる内容についても同様です。昨今、もっとも問題となるリスクが多いのが個人情報となりますので、捨てる際にはよくよく確認が必要です。
法定保存文書以外の保存義務期間の過剰設定に留意
会社で使用する帳票はとにかく種類や枚数が多くその保管には頭を悩ませているところは多いでしょう。電子帳簿保存法の改正によって、データでの保存に拍車がかかっていても紙での取引情報を正としている企業はまだまだあります。なお、電子帳簿保存法での保存対象は既存の法令と少し異なるところもあるので本筋と少しずれますが、確認の必要がある項目です。別の法令では証憑とされていないものが、電子帳簿保存法では証憑とされる可能性がある場合も考えられます。
保存書類の山で保管場所の確保に困っている場合、明確に根拠となる法令で保存期間が指定されている法定保存文書以外については、保存義務期間に合理性があるか今一度各部門で見直してみると保管庫が減ったり、外部業者への委託も減ったりといったコスト削減効果も見込めますので、定期的に見直していくことをおすすめします。
見直しの際は、その帳票や書類の目的と実務上参照回数・使用頻度や紙での保存が必要な理由をまとめてみるとその必要性についての再検討に役立ちます。
例えば20年、30年といった保存年限が設定されている書類でまったく使用されていないものがあったとします。これらは運用上永久とほぼ変わりませんが、ではその期限はどのような根拠に基づいており、保存できなかった場合にどのようなリスクがあるのかを社内ルールとして書面で残しておく必要があります。該当する法令がある場合、その法令が改訂されることで保存義務がなくなることもありますので、根拠不明の状態で年限を設定するということだけはやめたほうがよいといえます。
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