貿易における二重インボイスとは何か
二重インボイスとは、本来は1通であるべきインボイスが二重で存在することを意味し、この内容に差異があることで通関時の過少申告や申告漏れ等になるリスクがあります。
通関時には、申告に使用するインボイスの価格に基づいて関税や消費税等の付加価値税等を支払いますので、インボイスの価格が実際の売買価格よりも安いと、国の目線で見れば税金が本来によりも安く支払われていることになり、一種の脱税ともなります。
例えば、売買する際にあわてて仮単価を設定して通関インボイスに記載して輸入通関したものの、あとから正規単価が決まったので、別の請求インボイスで通関時に使用したときよりも高い単価で請求を行ったような場合、輸入通関時の評価額のほうが、実際の売買価格よりも安くなってしまいます。この場合、修正申告を行わないとあとから事後調査等で判明した場合、追徴課税という形であとから税金を支払う必要が出てしまいます。
二重インボイスにはこうした過失によるもののほか、故意に関税や消費税等の間接税を下げるために行われるものもあります。
例えば、本来はCIF価額で100万円するもので、関税が10%、消費税が10%のものがあった場合、輸入通関時には関税を10万円、消費税を11万円、合計おおよそ21万円の税金を納める必要があります。このとき、CIF価額を1万円であると偽り、通関インボイスもそのように記載した場合、関税は1000円、消費税は1100円の合計2100円となってしまいます。売買当事者の間では、あとから別の請求インボイスを発行して差額のやり取りをし、本来の売買価格で取引して、通関の時だけ不当に安いアンダーバリューでの申告とするような違法行為に使われることもあります。
通関用のインボイスと請求用のインボイスを分離することは、送金手数料や事務工数低減からよく実施されることではありますが、上記のような手口も存在するため、二重インボイスとなっている取引形態には、ことさら注意が必要です。
請求用にまとめてあとからインボイスを発行するような場合、形式はどうあれ、通関時に使用したインボイスが正であり、それらを数通まとめて1通にするという仕組みであれば、通関時と請求時の評価額にも差異が生じません。発行する側、受領する側の双方で、通関時のバリューと支払額が一致しているかどうかを確認するプロセスを組み込む必要があります。
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