ポジティブリストとネガティブリストの違い
ポジティブリストとはわかりやすく言えば、やっていいことや使用を許可するものを一覧にしたものを意味し、反対にネガティブリストはやってはいけないことや禁止品だけを一覧にしたものです。どちらも英語がそのままカタカナになっており、物品に限ったリストであれば、ポジティブリスト=positive listは日本語では自由品目リスト、ネガティブリスト=negative listは制限品目リストとよばれることもあります。
- ポジティブリストとネガティブリストの違い|目次
どちらにするかでルールの自由度や規制の強さが変わる
リストの前についている英語は下表の意味があります。
用語 | 意味 |
---|---|
ポジティブ(positive) | 肯定の |
ネガティブ(negative) | 否定の |
リストという名称がついている場合、一般にはこれらは物質のリストを示すという使い方がなされることが多いです。
食品や薬品、化学物質などの使用禁止の法制を定める際にポジティブリスト方式なら原則すべての物質は禁止ですが、使用してよいものだけをルールとして定め、ネガティブリストなら反対に使用してはいけないものだけをルールとして定め、そこに載っていないものはすべてOKとするという規制になります。
このことから、ルールを作るときにネガティブリスト方式の制度設計にすると自由度が増し、ポジティブリスト形式にするとより自由度を制限することができます。両者の違いをまとめると下表のようになります。
ポジティブリスト | ネガティブリスト |
---|---|
原則禁止、一部許可。許可するものだけを記載 | 原則許可、一部禁止。禁止するものだけを記載 |
日本語では別名「自由品目リスト」 | 日本語では別名「制限品目リスト」 |
自由度低い。農薬や化学物質であれば許可する品目とその量や濃度をセットで規定できるので安全度が高くなる。 | 自由度高い。禁止する品目だけを規定する。裏返せば禁止品目以外はすべてよいことになるため、安全度は低くなる。 |
現存する法令や規制を読み解く際も、上記のリスト方式の違いにより、国がどのようなスタンスで規制しようとしているのか推察することができます。
ポジティブリスト方式でやってよいことを列挙しようとすると広範囲に及び、仮に記載事項が膨大なものになったとしても内容によってはそれでも自由度は低くなります。すべてを網羅することは難しいうえ、記載されていないことはできない、不許可、ということになるためです。行動や行為を記載されている内容に限定する、という性質があります。
また未知のものや影響が明確にわかっていないもの、意見が分かれるものはポジティブリストには入れないことが多いため、疑わしきものは禁止になることも多いです。これと含有量などとをセットにして用いると、使ってよい物質とその量が指定されるため、そこに適合しない場合はすべてNGということになります。
反対にネガティブリスト方式は禁止事項を増やしても記載されていないことはできるので自ずとOKとなる範囲は広くなります。こちらでもなるべくたくさんの記載項目を作ったとしても、今度は逆に、NGとすべき明確な根拠がないものや疑わしいもの、未知のものについてはリストに入らないこともあり、そうなるとそれらはOKということになります。行動や行為についても禁止するものだけを指定する為、指定されていない内容はすべて可ということになります。
自前で何らかのルールを作る場合も自由度や規制をどこまでかけるかの違いや作成工数によっても採用すべき方式を検討したいところです。 なるべく制約を少なくしたいのであれば、最低限の禁止事項をネガティブリストに定めておけば自由度の高いルールになりますし、行動や内容をより限定してコントロールしたいのであればやってよいことやOKなものだけをポジティブリストに指定しておけば自由度の低いルールにすることができます。
軍隊や警察をポジティブリスト、ネガティブリストに例えると
警察と軍隊にも例えることができます。警察はやっていいことだけを規定するポジティブリスト型(やっていいことだけを権限としてルール化するので原則すべて禁止。権限が強くなりすぎないようにする)となりますが、軍隊の権限についてはやってはいけないことだけを規定するネガティブリスト(原則すべて許可だが、やっていけないことだけをルール化)になるという違いがあります。これは国によっても異なりますが、軍が実施できる内容が広範囲に及ぶのはこれが理由です。もっとも、どちらの組織も指揮命令系統のもと動くことに変わりはありませんので、何らかの指示に基づいて動き、その指示の根拠が、このポジとネガで異なるという意味です。
日本の自衛隊は警察と同じポジティブリスト方式になります。この場合、何らかのアクションを起こすのにも条件が必要になるため、権限が強くなりすぎない反面、臨機応変な対応が難しくなることがあります。実施可能なことを法令で定めているため、何か新しいことを行う場合は根拠となる法令を国会で通す必要があるという形式が取られています。
スポンサーリンク