金型のショット数から生産能力を計算する|金型のメンテナンスを加味、生産能力を上げる方法
金型を用いることで大量生産が可能となりますが、どれくらい製造することが出来るか、つまり金型が持っている生産能力、生産性についてはそれぞれの金型によって異なります。生産能力の算出には、設備的な要素、金型を使う場合にはその数、作業人員、作業シフト、稼働時間、設備トラブルの有無、不良率などが関わってきます。
自動車部品業界においても、金型は素材に応じて多種多様なものが使われていますが、金型を用いて製造する製品の場合は、生産能力の確認は「金型能力」をみる確認でもあります。顧客側にて増産の検討を行う際には、その仕入先の生産能力確認を行うことがほぼ必須となっています。また、昨今は同一の部品を複数の製品へ使うことでコスト低減をはかる傾向があるため、生産能力の確認はその製品が使われるすべての用途・製品について行う必要があります。
また、自動車部品の場合、新しい車種の立ち上がりやモデルチェンジなどで企画台数が増えるような場合、カーメーカー側から、生産能力調査、供給能力調査というような形の依頼がきます。この際も、金型を使うタイプの部品については、生産能力について詳細を記載する形になります。
ただ、実際には日々の生産能力というのは、流動数に対して設備・金型・人員もギリギリのところで抑えられており(これらを余剰にかかえるとコストばかりかかり採算があわなくなるためです)、急に増産するような場合は対応できないことが多々あります。
生産能力がオーバーしている際に、能力をあげるために行う検討の内容としては、以下のようなものがあります。能力アップは能力増強、略して能増とも呼ばれます。残業での対応が最も容易な方法となり、設備の数そのものを増やす方法がもっともコスト・時間がかかります。
また人員の数を増やす方法も、単純作業ではなく、熟練を要する作業内容の場合は人の育成に時間がかかる為、経験者を採用するにしても困難を伴います。ただし、人を増やしても設備や型がネック工程となり生産能力がそれ以上上がらないような場合は意味がありません。能力を上げる必要がある場合、どの部分の工程がクリアされれば能力が上がるのか、その「ネック」となっているネック工程を最初に突き止めておきます。
基本的には、売れているものについては量が増え、売れなくなれば量が減るため、人の増減も急に行う必要があるのですが、今月は必要だが、来月は不要なので解雇、また再来月にきてほしいといったようなことはできませんし、人の採用や抑制も簡単にはいきません。売れ行きと連動した話ではありますが、発注が計画とずれてきたような場合、工場の人員や設備・金型のやりくりに苦しめられることになります。中には、急に発注がなくなるような場合、あらかじめ準備していた工場に対して補償を行うこともありますが、減らした人をまたすぐに採用というのはうまくいかないため、工場側にとってはある程度の期間継続した計画が求められます。
- 残業や休日出勤等の稼働時間延長で対処する
- 金型の数を増やす、改造によって金型のもつ生産性を上げる
- 設備を改造する
- 人員の数を増やす(人の数によって生産性を上げることが出来るタイプの製品のみ)
- 設備の数を増やす
項目 | 説明 |
---|---|
製番、品番等 | 対象品を特定するため |
金型の種類 | 金型の種類は、素材によって変わるが、特定のプレス様式に合わせたものも多い。金型の種類によってショット数 |
面数 | 金型の数。金型の数量の単位は「面」で数える。 |
取り数 | 金型1面あたりの取り数。一つの金型で何個の製品ができるか。取り数は改造によって増減する場合がある。 |
ショット数(1日あたり) | 1日に打てる金型のショット数。通常はこのショット数に、メンテナンスに必要な時間を係数化したものをかけて、実際のショット数を算出する。ショット数は計算上、1時間当たりのショット数を計算し、一日の稼働時間をかけることで算出される。 |
日当り生産能力(日産能力) | 1日あたりに生産可能な能力。面数 x 取り数 x ショット数 = 日当り生産能力 |
稼働形態 | 1週間のうち何日間稼働することになるか。 |
稼働時間 | 1日に金型を使って生産可能な総時間。 |
メンテナンス周期 | 何ショット打つとメンテナンスが必要になるか |
メンテナンス工数 | 金型のメンテナンスにかかる時間。再コーティングを実施する等のケースが多い。メンテの工数がかかる場合、実際の生産能力はその時間分だけ落ちることになるため、以下のような算出方法で、実際にうてるショット数に係数をかけて調整をはかることがある。 (例) ・メンテ周期:200ショット/日 ・生産能力 :95ショット/日 ・メンテ工数:1.5日/回 メンテ係数 = (200/95)/(200/95+1.5) 理論ショット数 x メンテ係数 = ショット数 |
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