ビジネスにおけるCRの意味
ビジネス分野でのCRはCost Reductionの略語で、コスト削減や原価低減を意味しており、英略語風に言い直した表現です。「シーアール」と呼ばれているため、慣れないと一体何のCRのことかわからないこともあります。原価低減活動のことをCR活動と呼んだりもします。
企業の利益を増やす方法が売上増とコストを減らすことにしかない以上、どの業種でも定期的なCR目標を達成していく必要がありますが、ここでは特に製造業、自動車分野、自動車部品におけるCRについて述べていきます。CRは%(パーセント)で目標値にされることもあれば、絶対値で今期はいくらのCR必達ということで各部署へノルマが課せられることもあります。
コスト削減におけるCRとは
自動車部品では同一の部品を大量に一定期間生産して販売する形態になりますが、ともかく薄利多売が基本となります。物量の多さが自動車部品のひとつの特徴ですが、こうしたことから、納入先となる顧客からは定期的なコスト削減であるCRを前提とした値引き要請が出されます。
裏を返せば、自動車の部品はCRを継続して達成できなければ、基本的には毎年利益が減っていく、ということになります。値引き要請の幅や額は部品や納入している自動車メーカーごとにも異なりますが、仮に毎年1%ずつ値引きとした場合、モデルチェンジまでの5年間としても最終的に5%の値引きとなります。
値決めもある程度それを見越しての設定するケースもありますが、取引先によっては製品のコスト部分である原価構成をある程度開示していることから、あまりバッファーを見て設定することは事実上できないとも言えます。
つまりCR活動なしには継続的に利益を確保していくことが難しいという環境になります。
とはいえ、部品を製造するという立ち位置は、納入先は大手の自動車メーカーである一方、原料や材料の仕入先も大手の材料メーカーとなり、こちらへ容易に値引き要請を転嫁できるかといえば、それも難しく、むしろ材料市況の変動により製品に使う原材料のほうを「値上げする」と言われた場合、受け入れざるを得ないケースがほとんどです。値上げを受け入れない場合、原材料の供給が止まったり、後回しにされたりします。当然、値下げを要求されている自動車メーカーにその値上げを転嫁などできず、間に入っている部品メーカーが挟まれて損失を被るということになります。
それを繰り返していては会社が立ち行かなくなりますので、CRを日々の業務活動の一環として継続している企業がほとんどかと思います。
CRの対象範囲
おおよそすべての分野でCRの検討は可能ですが、効果が大きく出せる部署とそうではない部署の違いはあります。例えば製造業の分野で具体的に大きく分けると以下のようなカテゴリーです。
ただし並行して実施されることが多いCCC(キャッシュコンバージョンサイクル)の改善活動とは一部の分野でバッティングすることがあります。貿易の例が分かりやすいですが、コンテナは一度に大量輸送するほど輸送費が安くなるので、例えば、普段は20ftコンテナで十分な購入量を増やして40ftコンテナの輸送だけに切り替えるとします。輸送費は下がりますが、ここで在庫金額が増加しますので、キャッシュフローは悪化してしまいます。このバランスをどう取るかは各企業ごとの方針によります。
部署 | CR活動の事例 |
---|---|
設計・技術 | VAやVEを駆使してコストを下げるための設計変更を行う、部品や材料を共通化する、コストのかかる加工方法や材質を変える、公差の緩和、不良品が出にくい設計へ |
製造 | サイクルタイムを上げる(製品1個当たりにかかる製造の時間を短くする)、生産性を上げる(人、設備、製法)、生産場所を変える(統合)、外注先を活用する |
工務 | 工場のランニングコスト、光熱費の低減 |
生産技術 | 新しい製法での製造原価低減、生産条件をより低コストに。 |
設備技術 | 設備の改造を行い生産性をアップ。時間短縮や無人や省人化。設備そのものの製造コストダウン。 |
品質保証 | 過剰品質の排斥、検品検査方法・体制の改善 |
調達 | 部品や原材料などの仕入れコストを下げる。まとめて購入することで下げる、有利購買 |
生産管理 | 在庫圧縮による倉庫費用の低減 |
物流 | 運送費を下げる(輸送費を下げる、荷材費を下げる、高効率の梱包にして製品1個あたりにかかる輸送費を下げる)、デポなどの物流拠点の統廃合や変更、配送方法をミルクランにするなどの変更 |
貿易 | 梱包方法の変更、輸送手段や輸送ルートの変更、FTAやEPAなどの関税減免手続きの活用 |
営業 | 販管費・販促費の抑制 |
共通 | 事務工数低減による時間短縮 |
人を減らすと企業活動の中で大きな部位をしめる人件費が落とせますが、反面、現場含め士気が低下しますので、これらはどちらかというと最終手段で、それ以外の方法をまずは模索することになるかと思います。
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