エフの意味と英語表現|エフを付けて納入するのはなぜ

2021年5月6日更新

製造業における生産現場でのエフは荷札とは違い、以下のような製品を識別させる役割と意味を持っています。英語ではエフのことはlabelやparts label、PPAP label(PPAP用途のエフの場合)等と表現されます。

  • 新製品(初回納入時)
  • 設計変更された製品
  • 工程変更された製品
  • 久しぶりに納入が再開された製品
  • 特採された製品
  • 臨時使用品

ここでは自動車業界、自動車部品の場合の運用について述べていきます。単に「えふ」というだけでなく、用途によっては初品エフ、初物エフとも呼ばれます。

納入時にエフが必要となるケース

新製品(初回納入時)

量産工程ではじめて生産されたもの、つまり量産工程での初回ロットで作られたものを通常「初品」(しょひん)と言いますが、これらを識別するためには納入される箱などにエフと呼ばれる札をつけます。これによって、初回ロット品がどれかを容易に判別できるようにしています。

製品にエフをつけるだけでなく、検査データ、製品のスペックを示す各種特性データ、自動車メーカーごとに異なる書式を持つ宣言書(初回納入品につける品質保証のための書類)もあわせて提出することが一般的です。納入する物品につけることは稀で、同じ納入便で別封筒などに入れて提出するかデータで自動車メーカーの担当者へ届くように送ります。

設計変更された製品

自動車のモデルチェンジに伴うものだけでなく、部品の設計変更には様々なものがあります。スペックをよりよくするものや、工場での組付けがしやすくなる、コストが下がる、一緒に使われる他の部品が変更となるため、セットで変更になる、製造側の都合での変更等の理由です。

いずれについても、設計変更された初回品を納入するときは、エフが必要となります。後述する工程変更品と同様、こうした場合は既存品が常時納入されている中での切り替えが必要となります。ある日付から既存品→設変品への納入へ切り替わるため、それを示す意味合いもあります。

工程変更された製品

材料メーカーの変更や製造工場の変更、新しい金型での製造、製造設備の変更、製法の変更などこうしたものは図面の変更伴う設計変更ではなく、工程変更として定義されています。

こうした場合もエフをつけることでどの分から工程変更されたものなのかトレースできるようになっています。

久しぶりに納入が再開された製品

これは多くの自動車部品が量産での車両生産に使われなくなってからも数十年以上、修理品用等の目的でサービスパーツいわゆる補給品として販売が継続されることに由来します。車両工場での新車の生産はそれこそ毎日生産されるため、納入もそれに準じたものになりますが、量産打ち切りとなって補給化してしまうと、月に数個になったり、ものによっては数年に一度の出荷になることもあります。

こうした長期間納入がなかったものの場合、製造するのが久しぶりであったり、長期間在庫してあるものであったりするため、その品質確認を目的としてエフをつけての納入を求める自動車メーカーが多いです。この久しぶりの期間や在庫年数については各社で基準が異なります。

特採された製品

本来の品質基準や設計内容とは異なる品物であっても、客先側から特採(特別採用)されることで納入可能になるケースがあります。こうした品物についても品質管理上、特別な管理が必要となるため、エフをうけて初回納入をトレースできるようにしています。

上記いずれの例についてもエフを付けるというのは、端的に言えば、今までと異なる部品や材料が入ってくるということを関係者に知らしめ、品質に問題がないか特別管理できるようにするために用いる品質保証上の仕組みです。どのケースでも最初に納入する製品やロットのみにエフを付けていく形になります。大量生産にて非常に多くの部品を扱うのが自動車分野の特徴ですが、そうした中でも部品や材料の素性を明確にし品質上のトレーサビリティを確保して品質管理していく必要がある場合に有用な方法といえます。

ただし、これが確実な方法かといえば、出荷側でエフを間違えてつけてしまうこともあり、そうなればお手上げです。また、エフを正しくつけていても途中の物流拠点でエフがとれてしまったり、不要なものと判断されてとられてしまうというような場合にも意味を成しません。

エフは漢字ではもともと「絵符」「会符」と表記され、荷物などにつける目印の札のことを意味しています。原義は、江戸時代に幕府や武家などの特権階級が物資を輸送する際に、その特権があることを示すために荷物につけた札のことです。転じて、荷物札や荷札のことを意味するようになりました。自動車業界等ではこれが納入される部品の箱につけられる荷札となって上記のような目的で使われています。

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