重保の意味とは|重要保安部品のSマーク記号の定義
重保(読み方:じゅうほ)とは「重要保安部品」を略した表現で、製品としての機能を失うと車が走行・使用不能、火災、人身事故につながる重大災害や重要クレームに発展する可能性のある製品(自動車部品)のことを意味しています。図面上、▽中にSマークの記号で表記されることがあり、自動車メーカーごとに指定があります。ただしこの用語は法令で定められたものではないため、各メーカーで使われるうちにいろいろな意味が混ざり合ってしまっています。
保安部品よりもさらに管理等級が厳しいものを重要保安部品という場合もあれば、重要保安部品と保安部品を同じ意味で使っているメーカーもあります。
実のところ、自動車部品の多くは保安部品に相当し、こうした部品であることは特段珍しいことではありません。大きなカテゴリーで分けた場合、どのような自動車部品が保安部品となるかについては、以下が参考になります。
道路運送車両法
(自動車の装置)
第四十一条 自動車は、次に掲げる装置について、国土交通省令で定める保安上又は公害防止その他の環境保全上の技術基準に適合するものでなければ、運行の用に供してはならない。
- 一 原動機及び動力伝達装置
- 二 車輪及び車軸、そりその他の走行装置
- 三 操縦装置
- 四 制動装置
- 五 ばねその他の緩衝装置
- 六 燃料装置及び電気装置
- 七 車枠及び車体
- 八 連結装置
- 九 乗車装置及び物品積載装置
- 十 前面ガラスその他の窓ガラス
- 十一 消音器その他の騒音防止装置
- 十二 ばい煙、悪臭のあるガス、有毒なガス等の発散防止装置
- 十三 前照灯、番号灯、尾灯、制動灯、車幅灯その他の灯火装置及び反射器
- 十四 警音器その他の警報装置
- 十五 方向指示器その他の指示装置
- 十六 後写鏡、窓拭き器その他の視野を確保する装置
- 十七 速度計、走行距離計その他の計器
- 十八 消火器その他の防火装置
- 十九 内圧容器及びその附属装置
- 二十 自動運行装置
- 二十一 その他政令で定める特に必要な自動車の装置
上記に該当するものを「保安部品」と呼称していることが多いのですが、例えば「四 制動装置」にしても、多数の部品で構成されています。その一つ一つが、重保や保安部品ということになるため、多くの自動車部品が該当することになるとはこうした意味からです。ねじ1本にしても、どの部位に使われるかによって保安部品なのか、重要保安部品なのか変わってくるということです。
さらに部品ごとを詳細に見ていく場合、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」「道路運送車両の保安基準」に詳しい部品の種類と部品ごとの保安基準が規定されています。
御覧の通り、自動車を自動車たらしめている「コア」「主要部」がすべて保安部品といえます。
「保安部品」という用語も、法令上は定義されておらず、国で「保安基準が定められている自動車装置」のことを便宜上言っています。「公道で走るにあたって安全確保や環境保全を目的に法令で基準が定められている部品のこと」です。
保安部品に対して、「重要保安部品」は道路運送車両法に規定もされておらず、一体何を基準に「重要」になるか、という点はそれぞれの自動車メーカー判断になります。
重要保安部品や保安部品に指定されているものは、図面に▽のなかにSのマークが入った記号が付記されています。
複数の品種の自動車部品を製造しているメーカーで、重要保安部品とそうではないものを作り分けているようなケースでは、「重保」に指定された部品の「品質管理等級」を変えたり、それに応じて重保を製造する工場を指定したりといった方法で扱いを変えています。多くのメーカーでは品質管理等級が異なると決裁権者もより上位へ上がっていきますのでそれだけ取り扱いが厳しいものになります。
特に自動車部品の世界では下請事業者や協力工場の名目で外注先を非常に多数使うことに特徴があります。自動車メーカーへ直接納入するTier 1と呼ばれる部品メーカーも、すべての部品を自社で製造しているわけではなく、外注先に製造指示を行って作らせているものを納入していることは多々あります。
こうした場合でも、重保の製造を行うのは自社や自社グループのみに限定したりといった方法で管理をより厳しくする措置が取られることがあります。図面・部材・設備・治工具まで支給して指示通りに製造を委託しているといっても、自社で製造するのと外注先とでは品質管理の能力やレベルも異なるためです。
保安部品や重保で欠陥があれば大規模なリコールなどの措置が取られることになります。
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