量産型の意味

2021年10月10日更新

製造業の分野で量産型といった場合、量産に使う金型のことで別名「本型」とも呼ばれるものを意味しています。いわば大量生産となる量産工程で使うことが前提となっている型のことです。

量産型と試作型の違い

そもそも金型は大量生産に使うためのもので、それがなぜ区別されているのかといえば、量産用の金型を作る前に、試作品や量産前の段階の製品は試作用の金型を使って製造を行うからです。

これは自動車をはじめ、品質確認が厳格な業界ではよくある慣習の一つですが、実際の量産に入るまでの間に、品質上や性能上の問題がないかクリアしたものが次のステップに進んでいくという方法をとり、試作段階では試作型でよかったものが、ステップが進んでいくと量産型で作った部品の納入が必要となってきます。

例えばトヨタであれば、AS→FS→PCV→1A→量A(量確)→品確→L/O(量産開始)と量産までに複数のイベントを経ますが、PCV以降のイベントでは量産型で作った部品を納入することが求められます。

高精度かつ大量生産に耐えうる仕様

試作用の金型と量産用の金型では、生産する数量が段違いなうえ、精度が異なり、量産用のものは製作と準備にそれなりの期間が必要となります。試作であれば、数十個やせいぜい数百個作ることができればよいので型で作った後の手直しもありですが、量産用となれば、月間数万個から数十万個の供給となることも珍しくなく、分野によっては月間数百万単位での供給となる製品もあります。

同じ品質・スペックのものをそれだけ大量に製造できる、という金型は設計・製作からトライ評価にいたるまで時間がかかります。不具合や不良が多いととても修正できるというレベルではなくなります。

例えば量産で使う型なのに不良率が25%も出ている、あるいはバリが出てしまって後工程で仕上げや手直しの工数が発生してしまっている、メンテナンスに想定以上の時間がかかっている、等の問題が出た場合、試作と違って量産で製品をつくり続けることが難しくなります。よしんば無理に作り続ければ、製造現場の高負荷に加えて、廃棄コストや選別コストもばかにならず、ともかく高コストになってしまい事業性があるかどうかも分からなくなってしまいます。こうした工程能力の低い状態で立ち上がってしまう製品は悲劇とも言えます。もちろんこれはすべてが金型原因というわけではなく、設計上や製法上こうなってしまう、という場合もありますが、試作ではどうにかなったものでも量産ではそうはいかなくなる、という点は留意が必要です。

金型で作った製品は、評価段階で図面通りのものになっているか寸法検査を実施します。これは図面に指定されている箇所すべての計測を実際に作った製品で行い、公差範囲におさまっているかどうかを確認するものです。量産型はこれをかなり厳格に行いますので、工程能力が低い状態のものは量産投入される前に修理や改造を経て再度トライや評価が繰り返し実施されます。こうしたことも量産型の準備に時間がかかる所以です。

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