順建て、順立ての意味|順立て生産や順建て納入とは
自動車メーカーとの取引している会社であれば必ず耳にする言葉のひとつではありますが、「順建て」あるいは「順立て」とはどのような意味なのでしょうか。これは「じゅんだて」と読みますが、表記が会社によって異なることもあります。順建てと順立てを区別して使っているケースと、両者に違いはないとしているケースの2つのパターンがあります。
共通する広い意味での順立てや順建てとは、組み立てる順序にしたがって同一の部品を並べてセットで納入したり、その順番に従って生産することを意味しています。つまり、組み立てる順番にしたがって部品をそろえる事を「順建て」「順立て」と呼んでいます。
ライン生産を前提とした考え方であるため、これには少々補足が必要かもしれません。
自動車の生産というのは、例えばトヨタ殿の例を見た場合、生産する台数と1台あたりを生産するのにかける時間というのは決まっています。まったく同じ車を連続で作り続けるロット生産だけでなく、ラインには複数の車種や仕様の車が流れてきます。こうした場合、自動車の組み立てに使う部品をすべて揃えておいたのでは、部品の置き場がなくなってしまうばかりか、多数の部品在庫を抱えることになってしまいます。
自動車の製造ラインは、製造業のなかでも大きな部類になるラインですが、使用する部品の点数が非常に多く、設備トラブルで生産が遅れるだけでも、部品在庫の置き場がパンクしかかってしまうほどの物量があります。
トヨタ殿では無駄を徹底的に廃し、余分な部品在庫も持たないで生産するジャストインタイム方式と呼ばれる生産方式をとっているため、部品メーカーは、指定された時間に、指定された個数だけ部品を持ってきます。その部品をタイムラグほとんどなしで生産ラインへ投入し、組み立てていくという方法がとられています。
このとき、組み立ての順番のとおりに部品が順序立てて納入される通い箱に入っていたら、作業者もより効率よく組み立てができ、品種ごとに箱を分けずにすむ為、ライン上の部品置き場も少なくてすみます。8個の部品が入っている通い箱の中に、4種類の部品があるとしたら、本来は通い箱は4箱必要なことになります。ところが順建て納入で、箱の中に組み立てる順番に従って並べてセットしておけば、1箱で8個の納品が可能です。生産する側も、この箱が所定の場所に入ってくれば、順番にそこから部品を取り出すだけでよいという具合です。
これが順建て納入あるいは順立て納入です。
実際には自動車メーカー内にある部品棚から、ピッキングされたものが大きなカートに入れて生産ラインに運ばれていきますが、これにも当然時間制限があり、一定時間以内に指示のある部品をピッキングしてすぐに生産現場となるラインへ運ばなくてはなりません。車両組み付け等を行う自動車の生産ラインには、本当に必要な部品だけをタイムリーに届ける仕組みになっています。
順建て納入されている部品だと、そのピッキングにかかる時間も低減できるという寸法です。
「順建て」と「順立て」が区別されて使われるケースでは、ドアやフェンダー、フードなどをボデーへ取り付けるような「建て付け工程」で使われる比較的大きな部品で、組み付ける順番どおりに揃えておくことを「順建て」と呼んだりします。対して、小物部品などでピッキングによって部品置き場から組み立てる順序にしたがって選び出し並べておくことを「順立て」と呼んだりします。
部品メーカー側のほうではあまりこの使い分けはしないのですが(厳密には、部品メーカーによって「順建て」と言う用語を使うメーカーと、「順立て」という表記をするメーカーとに分かれていることがほとんどです)、自動車メーカーやそれに近い立ち位置のメーカーで区別して用いている場合は、このように、部品の大小や工程の種類、段取りの組み替えやすさ等に応じて使い分けられることがあるようです。
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