公出の意味|自動車業界の法出、休出の違いと英語表現について

2016年6月20日更新

公出とは「こうしゅつ」と読みますが、自動車業界で使われる場合、休日出勤のことを意味しています。休出(きゅうしゅつ)とも言います。英語で公出を表現すると、legal holiday work、official holiday workや単にholiday workとなります。残業とは似て異なるもので、あくまで休日に出勤するのが「公出」です。この用法は業界や同じ自動車業界でも会社によって若干ニュアンスの違いがあります。

たとえば、法出(法定出勤)と、公出(公定出勤)とを使い分けている会社もあり、この場合、公出のほうは法定外休日に出勤することを意味し、法出のほうは法定休日での出勤を意味します。この使い方は、所定休日には、法定休日と法定外休日の2種類の休日があることからきているものです。もっとも、多くの会社ではこれらを区別して表現しているわけではなく、単に本来会社が休みとなる休日に出勤することをすべて公出や休出と呼び習わしています。したがって区別して使っている会社以外、これらには大きな違いはありません。

自動車業界の場合、基本的に祝日というのはありません。平日の月〜金は、国民の祝日に関係なく工場稼動させ、かわりに土日を完全に休みにするというパターンが多いです。これは自動車メーカーがこのようなカレンダーを組んでいることから、納入メーカーも毎日納入する形態の取引が多く、客先にあわせた稼動日か、客先よりも若干多い稼働日にしていることがよく見られます。

英語で公出(法定休日、法定外休日)に関する表現
日本語 英語
法定休日での出勤 Legal holiday work
法定外休日に出勤 Non-legal holiday work
所定時間外 法定超 Overtime work: Legal overtime
所定時間外 所定超 Overtime work: Fixed overtime
休日出勤に対して支払われる割増賃金率 Additional pay rate for holiday work

こと自動車部品に限って言うと、その多くは金型を用いて製造するものですが、1日に生産できる数量は稼働時間や金型のショット数などからかなり正確に割り出されます。こうした状況でも、客先からの急な増産に伴う発注があると、残業を増やしても生産が追いつかず、休みの日の出勤する「公出」が発生することになります。自動車業界においては、初期の流動を見込んでいた企画数を大幅に上回った発注がくることは珍しいことではありませんが、最初の立ち上がりの際には生産が計画されている台数である企画台数を目安に生産能力を準備していくため、この数字が狂ってくると、休日出勤を余儀なくされるというのが実態としてあります。

ちなみに休出や公出を断れるか、という問題もあります。企業間取引においては、資本金が一定額以上の発注元が資本金が一定金額以下となる下請企業に対して買い叩きをはじめとする不利な取り扱いを規制しています。ただし下請法では、企業間取引において休日出勤自体を禁じるものではありませんので、これに伴う所定の費用を支払うといった場合、現実的には下請会社は断ることが難しいです。一方、従業員と使用者との間は労働法で規制されており、過度な休日出勤を強いることは通常はできません。労働者には所定の休日を与えることが法律で義務付けられています。ただ、土曜日だけ、日曜日だけ出てほしいとなった場合は、難しいところです。通常は労使間で何らかの取り決めをしていることが多いですが、自動車業界の場合、公出ができないことで客先の生産ラインが止まる危険性があるため、断るのが難しいというのが現実でしょう。

増産対応を行う場合も、公出を行って尚対応できないという理由付けがないと金型の増面自体を認めない会社もあるため(金型の費用は通常客先が支払うため)、休日出勤というのは自動車業界ではよくあることとも言えます。また、よしんば金型を増面できる(数を増やせる)という承認を客先からもらった場合でも、実際の金型の製作納期、量産に使えるようになるまでには数ヶ月を要しますので、その間は公出や休出で欠品を起こさないよう、生産をつないでいくこととなります。

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