自動車部品が価格高騰する要因
自動車部品の価格高騰の要因は、大きくは製造メーカーの状況の変化と、製造に使用する部材の価格上昇となります。自動車部品の多くはそれぞれの特定の車種や車型にあわせた専用品になりますので、需給バランスで市場価格が変わるということはあまりありませんが、半導体のような複数の業界から引っ張られて自動車用にまわってこないものや、多数の業界に使用される材料は別で、これらは需給バランスで価格が変わっていきます。
部品の製造原価は、量産での車両生産にあわせて設定されているため、大量に生産するからこその価格となっており、車の生産台数が大きく減ってしまうと原価が上がります。それに呼応して自動車メーカーでも量産が終了してから一定年数が経過すると購入価格を改定する動きを取ることがあり、価格が徐々に上がっていきます。ただしこの段階ではあまり大きくは上がりません。
高騰といえるようになるのは、部材が手に入らなくなったり、金型や設備投資が新たに必要となったり、供給契約が終了した後に再生産が必要となったり、メーカーにもよりますが量産打ち切りから10年が経過した部品だったりといった事情によるものです。
自動車メーカーが部品メーカーから購入する価格というのは量産が終わってもあまり大きくは変わらず、1.1倍〜1.5倍程度が多いとされます。ただしこれが年数が経過したり、特殊な事情が入ってくるとさらに価格が上がったり(中には10年経過すると価格が10倍になるものも)、制度として価格アップを認めていることがあります。
部品の価格が高騰する要因としては以下のものがあります。
- 材料市況相場が上がり、特定の原材料の価格が高騰している
- 量産打ち切りに伴い使用量が減少したが材料・部品等特定のものについて小分けでの調達ができず、量産時と同様の数量でしか購入できない(例えば2個だけ必要でも、20000個できてしまう)
- 部材が従来の取引先から手に入らなくなり、特殊なルートでの入手となっている
- 部品メーカーがその部品の生産から撤退している
- 部材が手に入らず、値の張る代替材を使わざるを得ない
- 大量生産を前提とした製法を使っていたが、量産終了後の補給品のオーダーでは製造コストが著しく上がってしまう。例えば、金型をセットして生産すると最低でも1000個は作らないと人件費が出ないが、必要なのは1個だけ、という場合等
- 金型や設備等専用の物を使っていたが、長期間使用して更新が必要な状況となった。金型は打てるショット数に応じて寿命が決まっているので、一定年数経過すると更新が必要だが、量産中はだましだまし使っていたが、補用品となっていよいよ金型が使えなくなった
- 注文頻度があまりに低かったため、仕入先が設備を廃棄してしまっており、作れなくなっていた
- すでに製造廃止となっている部品の為、金型や製法を一から準備することになった
自動車メーカーと部品メーカーの間では、毎年一定の値引き要請がありますので、部品価格は徐々に下がっていく慣習ですが、上述の材料市況の変化や量産打ち切り後の補用品やサービスパーツについては特殊な価格設定がなされています。自動車メーカーから補償を受ける必要がある場合、部品メーカー側からはそうした個別補償を受けない代わりに、値引きの幅を小さくしてもらう、というような交渉も行われます。
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