なぜなぜ分析の事例とフォーマット|トヨタ式の問題特定のやり方

2020年6月17日更新

なぜなぜ分析とは、問題の真の原因である真因を見つけ出し、その問題を解決するための対策を立案するためのツールであり手法の一つです。海外では英語で5 whys(five whys)と呼ばれ、「なぜそうなったか」「なぜそう思ったか?」「なぜ気づけなかったか?」等となぜを5回以上繰り返すこともあることから、こうした名称で呼ばれます。

トヨタ自動車殿での発祥で、同社のトヨタ生産方式や改善活動では頻出する技法です。このため、自動車部品業界の多くでは、この技法・手法を聞いたことがないということはほとんどないとも言えるほどポピュラーな手法です。

対策書やクレーム報告書などには決まって「なぜなぜ分析」により真因をどのように特定し、どう対策したのか記入する欄を多くの会社で設けています。ただし、正しい形でなぜなぜ分析を実施できているケースはあまり多くなく、実際には対策のための対策に終始して再発防止につながっていないことも多々あるのが実態です。

なぜなぜ分析の回数は5回?

冒頭で触れた通り、この手法は、なぜ気づけなかったのかを分析し、プロセスを改善するためのツールの一つですが、「なぜ」を5回繰り返さないといけないと誤認されていることもあります。実際には、なぜをどこまで掘り下げていくかは問題の種類にもよりけりですが、短く終えられることに越したことはありません。なぜを5回、というのは真因にたどり着く前に対策しても意味がないことの戒めともとれます。真の原因にたどり着く前に対策を立案してしまってはいけないということになります。

真因という言葉の意味にも注意が必要です。これは真の原因のことですが、なぜなぜ分析における真因というのはあくまで有効な対策を実施できそうな要因のことです。つきつめて掘り下げすぎてしまうと、対策不可能な部分にまで進んでしまったり、堂々巡りに陥ってしまったりといった弊害もあります。

したがって、なぜなぜ分析は必ず止める必要があります。止める際の判断基準がこの有効な対応策を実施できそうな要因が出てきたときと、その要因に対してすでに対応策を実施済みであるというものが出てきた時です。

なぜなぜ分析の目的

特定した問題に対し、その問題がなぜ起きたのか真因を洗い出して、対応策を立案することが目的です。このとき、立案した対応策を実施すれば、問題が解決するかを逆から見ておく必要があります。対応策を行っても問題が解決・解消しない場合は、対策のピントがずれているか、真因が間違っている、あるいは、なぜなぜ分析の要因が間違っていることが考えられます。

なぜなぜ分析を再発防止策につなげるやり方

トヨタにおける再発防止というのは、自工程完結の考え方やトヨタ式の段取りのやり方でも紹介されていますが、問題を特定するところからはじめます。まず起きた状況を振り返り、全体を「みえる化」します。このとき、関係者と実施したことの順番を業務フローのように時系列でつなげて書いておくとわかりやすいです。このフローの中で、問題の「発生源」と「流出源」がどこかを特定します。

そして発生源と流出源となったプロセスを細かく分解します。なぜなぜ分析はこの段階になってはじめて使用します。この細かく分解したプロセスの中で、「AをBしなかった」というような箇所が出てきます。この部分をなぜなぜ分析で、なぜしなかったのか真因を突き止め、対応策を立案していきます。

再発防止の肝は、この発生源をきちんと抑える源流管理です。おおもとの上流でおさえないと、流出源の部分でいくらチェックを増やしたり厳しくしても、別の流出源が出てきてしまったり、工数が異様に増大したりと、本末転倒の結果になってしまいます。流出をおさえるのはあくまで保険であって、発生のもとを断つことが再発防止策の要諦です。

なぜなぜ分析のコツ|良い例・悪い例

なぜなぜ分析を成功させるにはいくつか注意点があります。この手法は、なぜを繰り返すがゆえに、特定の個人攻撃や他人に責任を押し付けやすく、犯人探しにも使えてしまいます。あの部署がこうしたからこうなった、あの人がミスしたからこうなったといった具合に、批判や非難、他責の応酬が続くと一見当人たちはすかっとして解決したかのように見えますが、何の問題解決にもなりません。これが悪い例の典型の一つです。

というのも、この手法・ツールは、ある人が何かをしなかったからとか、ミスがあったからといったことをあぶり出すためのものではないからです。個人攻撃をするためのものではなく、「仕組み」や「組織」、あるいはシステムに潜む問題をあぶり出し、それ自体をよりよく改善していこうとするためのツールです。

なぜ私たちはこうしたのか、このように考えたか、のように常に主語を私たちにして進めることが重要です。また視点は、個人ではなく組織や仕組み、システムへ向けるよう行うことです。何かのミスがあったとしても、自責を視点にして進めていくと、単なる責任転嫁に終わらないなぜなぜ分析ができます。

なぜなぜ分析を行うにはまず問題を特定する必要がありますが、その問題を4つのタイプの分類してからスタートすると、なぜの回数が減り、真因にたどり着きやすくなりいます。その4つのタイプとは、以下の4つとなります。

問題の類型ごとのなぜなぜ分析
問題の分類 なぜなぜ分析の内容
1.プロセスがなかった この場合、プロセスがなかったことは仕方がないのでなぜなぜ分析せずに、そのまま新しいプロセスを追加する、というところで再発防止策が決着します。しかし、この際、確認する工数を増やすといった流出防止ではなく、発生防止のプロセスを考えて追加することが大切です。また、再発防止の観点では、プロセスを追加するというのは安易な方法でもあるため、この類型に逃げてしまいがちです。

このパターンの問題でもなぜなぜ分析が必要となるケースもあります。それは法令違反などのケースで、プロセスがなかったが当然あるべきものというような場合、なぜなかったのか分析を進めていくことになります。
2.プロセスはあったが実施しなかった 実施しなかった理由を掘り下げていきますが、なぜ実施しないでいいと思ったのか、なぜそう思ったかを仕事のやり方の面から分析していきます。
3.プロセスは実施したが判断基準にまずさがあった こちらについても、判断基準にまずさがあったことになぜ気づけなかったをなぜなぜ分析していきます。
4.プロセスは実施し判断基準も良かったが、必要なもののいずれかにまずさがあった 必要なもの、とは仕事の手順を実施するときに必要となるもののことで、通常は情報、道具、能力の3つの側面があります。これらのなかに適切でないものがあることになぜ気が付かなかったについて、なぜなぜ分析していきます。

なぜなぜ分析のやり方

問題に対して、まず1次要因を洗い出します。このとき、要因の中に原因と結果を一緒に書かないようにします。一緒に書いてしまうと、別の要因があることに気が付かなくなってしまいます。

例えば、プロジェクターが使いたいときに使えない、という問題があったとします。

このときに1次要因のひとつに、どこにあるのかわからない、という理由上げたとします。2次要因として、決まった保管場所がない、と前の使用者が返却していないという二つの要因が上がったとします。この場合、もし1次要因で、「決まった保管場所がないのでどこにあるのかわからない」と書いてしまった場合、前の使用者が返却していないという要因が出てこなくなります。

なぜなぜ分析例
問題 1次要因 2次要因 真因
プロジェクターが使いたいときに使えない どこにあるのかわからない 決まった保管場所がない 保管のルールがない
前の使用者が返却してない 返却を確認する仕組みがない

またなぜなぜを実施するときは、因果関係に気を付ける必要があります。AだからBの関係、原因と結果の関係が、要因と問題の間に成立するかを確認すべきです。問題→なぜ→1次要因→なぜ→2次要因となりますが、逆に2次要因→だから→1次要因→だから→問題という具合につながる必要があります。因果関係がおかしい場合、正しい真因にたどりつけません。相関関係と因果関係は混同しやすいので注意が必要です。

さらに、問題と要因の関係が言葉の入れ替えに終始してしまっている場合も要注意です。自部門では判断できないと思った→なぜ→他部門が判断できると思った となってしまっては単なる表現の違いであり、一種の無限ループです。

個人の気づきや意識の問題が連続して1次要因、2次要因に上がってしまうのも問題です。〜の意識が不足していた、〜と思ったといった具合に、個人の意識の問題が真因となってしまうと、有効な解決策が見えなくなってしまいます。

なぜなぜ分析から導き出される対策

対策としてはまず問題が解決できることが前提としてありますが、さらに、以下の4点が求められます。

  • 自分以外の人でも同じように実施可能か、同じ失敗を起こさないか【確実性・再現性】
  • 今だけでなく将来にわたって問題が発生しないか【継続性・普遍性】
  • 別の要因で同じ失敗や問題が起きないか
  • 対象が異なる別のものごとにも活用・応用できるか

なぜなぜ分析のフォーマット

問題を記載する欄があり、それに1次要因、2次要因、3次要因、真因、対策とつながっていればシンプルなもので実施可能です。あらかじめテンプレートの形式でなぜなぜ分析のフォーマットを作るのであれば、要因の欄を自由に増やせるように表題を空欄にしておくのも手です。使用者が自分で、1次要因、2次要因、3次要因と書いていく形式です。

なぜなぜ分析のフォーマット1 なぜなぜ分析のフォーマット2

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