設計品質と製造品質の違い
ものづくりにおける品質の考え方には、設計品質と製造品質という二つの側面があります。両者の違いは、設計品質が図面でその製品が持つべきスペックや機能の品質を示しているのに対し、製造品質は実際に生産において出来上がってきた製品の品質のことを意味しています。
「品質管理」「品質保証」といった用語から想起される品質という言葉には、一般には製造品質をどのようにして管理し保証すべきかという点にポイントが置かれています。つまるところ、不良の発生をコントロールし、顧客には常に良品のみをタイムリーに供給できる体制を構築するという活動の一部といえます。
設計品質は図面で示したあるべき品質、ターゲットとすべき性能や機能を示しているものであるため、「ねらい品質」とも呼ばれますが、実は出来栄えの品質である製造品質とはしばしば異なることがあります。本来は同じであるべきものですが、ターゲットであるため、そこから外れてしまうこともあります。これには種々の理由がありますが、例えば以下のようなケースで生じます。
- 図面上で指定されている加工難度が難しく、そもそも工程能力が出せない
- 恒常的にそのスペックを出せない設計になっている
- 図面上の精度が高すぎる
- 金型技術や設備技術、生産技術において問題となる事象が設計者に理解されていない
- 熟練工にしかできない内容になっている
設計品質と製造品質に差異が出てしまうというのはある意味致命的なもので、生産コストが異様に上がってしまったり、高い不良率で量産開始となってしまったり、そもそも仕様を満たす製品を納期に間に合うよう継続して生産できなかったりという製造業にとっては大きな問題を引き起こします。
自動車部品をはじめとする工業製品の多くは、図面を顧客と取り交わし、その図面の中で製品が持つべき仕様や機能、性能が数値で示されています。こうした客先承認図で取り交わしている場合、その図面にかかれている性能のものを納入することが契約の条件になりますので、逆に図面から外れた性能を持つ製品を納入することは契約違反とも言えます。
図面に記載されていない事項で、特に取り交わしがないものであれば、それらは製造側で自主管理している性能になるので、外れているか否かは対顧客への納入では特に影響しません。
こうしたことから、いったん納入上の約束をしている承認図に記載の設計品質というのは、必ず守る必要が出てくるのですが、それが製造上何らかの問題で達成できないということになると前述した問題を引き起こします。
工程能力が出せない、つまり良品率を一定以上出すことができないということが量産移管前にわかってもできることは限られており、生産コスト増やムダの発生という代償を支払うことになる為、設計時において生産の実情や自社の実力をよくよく把握しておくことがこうした乖離に起因するトラブルを未然防止することにもつながっていきます。
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