VAとVEの違いとは|自動車部品におけるVA提案とVE提案

2021年5月31日更新

VEとVAは自動車部品には欠かせない考え方の一つで、両者とも目指すものに違いはなく共通して「製品の品質や機能を落とすことなくコストダウンを実現するための手法」を意味しています。その違いは、VEが設計段階、つまり新規部品の開発段階から行うコストダウン提案であり、対してVAのほうはいったん立ち上がって量産されているものに対して行うコストダウン提案であるという点にあります。

VE(Value Engineering)は前述の通り、設計段階で製品の品質や機能を落とすことなくコストダウンを実現するための手法の一つであるため、以下のような提案となります。

  • 設計的に、安く出来る形状を検討する(例えば、鍛造部品をプレス加工でできる形状に変更する、高価な材料の使用範囲を少なくする、複雑な加工無しでできる形状にする、金型や治具のコストが安くなるような形状にする)
  • オーバースペックになっている部位の公差を変更する
  • 形状等の変更を伴う場合、特性・スペックの変更や耐性の変化がないか評価・研究を行う
  • 材料の種類を変更する(例えば、特殊な材料を流通性の高い材料へ変更、オーバースペックになっているような材料を汎用の廉価な材料へ変更する)
  • 現号品を一部流用する(現在量産で生産しているものを新規品にも流用することで開発コストや生産コストを下げる。類似であるものを統合してしまうことで生産コストを下げる)

製品の機能分析・評価を中心に、構造の再検討、素材等の代替案の検討、新たな作業方法・製造方法の開発などについて見直しを行い、客先である自動車メーカーへ提案する形となります。

一方、VA(Value Analysis)提案のほうも内容としては似ており実施・検討事項は上記の通りですが、すでに車両生産に使われている部品に対して行う設計変更や工程変更であるため、自由度はVEよりも下がります。今生産中のものを止めずに、大掛かりな評価見直しをせずにどのようにコストを下げるか、という点がポイントになります。

自動車生産の場合、日々時間単位での生産・納入が必要となるため、現状の生産を継続しながらあるときからランニングチェンジで切り替えるか、日程を決めてきっちり切り替えてしまうかという動きになります。

VAでもやはり形状変更や材料変更などでコストダウンを提案する内容が主流ですが、製法変更も一つの方法です。ただ製法の改善によるコストダウンは、通常部品メーカー側が享受する内容となるため、顧客要求であるコストダウンできる幅を持たせておこうと日々行っている小規模改善から大掛かりなものまであるものの、必ずしもVAに直結するわけではありません。

金型の取り数を自己投資によって変更するというのもその典型です。例えば自動車メーカーである客先からは、金型4個取りの費用を支払ってもらっている場合、当初は4個取りで生産していたものの、途中で部品メーカーが自己投資して12個取りの金型を自分たちで制作した場合、単純計算だと3倍近い生産性アップになります。そうすると自己投資したとしても一定年数で投資回収できる計算となるので、その分は工程変更として客先に申請し、VA提案という形で売価値下げの提案は実施しないこともあります。

また、大掛かりな仕様変更となり、客先である自動車メーカーにて、完成車両に組み付けての実車評価がいるとなると、評価・検証のコストだけで数百万円はかかってしまいますので、こうした場合はそれ相応のコストダウンが見込める場合に提案がなされます。

したがってVAはいわゆる小改善が多いですが、定期的なVA提案が前提での取引となる自動車メーカーもあり(VA提案を行った数が評価される)、部品メーカー各社でそのアイデアを日夜検討することになります。

もっとも昨今ではVEを実施したうえで製品が採用され、そのあとでVAも求められることになるため、VAはVEでは検討しきれなかったものをさらにコストダウンのために実施するということも多々あります。この場合、VE段階で本気を出さずにある程度バッファーを持たせた提案を行うことすらあります。のちのVAで提案するものがなくなってしまうからです。

実務取引においてのVAとVEの違いは上述となりますが、学問的には少し異なり、VEはいわゆる価値工学のことで定義自体は上記と同様であるものの、VAのほうはVEでいうところの分析段階のことを本来は意味しています。

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