輸出貿易管理令の基礎知識

2013年1月22日更新

安全保障貿易の考え方も、多くのメーカーでは常識として定着しつつありますが、あまり輸出には馴染みのない方にとっては耳慣れない言葉かもしれません。一般には、販売先から「非該当通知書」もしくは「該非判定書」といったものを提出して欲しいという依頼がきてこの法律の存在を知ることになりますが、これらは、輸出に当たって規制のある製品ではないことをメーカー側が証明する通知書です。国内の販社経由での取引であっても、場合によってはこれらがなければ輸出が出来なくなります。

現在の日本国の法律では、輸出をする際に、その物品が海外のテロリストや大量破壊兵器の製造者などの勢力に渡らないようにするための措置が講じられています。これは国際的にこういった勢力を締め出す枠組みを構築する一環で作られたもので、他国でも類似のものがあります。

この措置のごく大雑把なあらましは、以下の二本立てによる対策です。

リスト規制

経済産業省の許可が必要な品目を定め、ここに指定されている物品については先端材料や原子力関係など特に兵器転用されると危険なものや高度な技術が使われているものです。ただ、すぐに兵器転用を連想しないようなものも多く含まれていますので、該当するかどうかは精査が必要です。なお、ここに名称があげられている物品であっても輸出許可が不要となる少額特例もあり、イラン、イラク、北朝鮮以外の仕向け地に送るもので、下記の条件に該当する場合は、輸出許可申請が不要となっています。

リスト規制品の少額特例の適用条件

輸出しようとしている製品がリスト規制に該当するものかどうかは、輸出貿易管理令別表第一・外国為替令別表の項番(1〜15項)に該当するかどうかを調べることで分かります。詳細については経済産業省のサイトで公開されています。

リスト規制に該当する輸出貿易管理令別表第一・外国為替令別表の項番の一覧

輸出貿易管理令別表1の1項から15項というのは、以下の分類によるものです。

  • 1.武器
  • 2.原子力
  • 3.化学兵器
  • 3の2.生物兵器
  • 4.ミサイル
  • 5.先端素材
  • 6.材料加工
  • 7.エレクトロニクス
  • 8.電子計算機
  • 9.通信
  • 10.センサ
  • 11.航法装置
  • 12.海洋関連
  • 13.推進装置
  • 14.ML
  • 15.機微品目

該当しないことがわかったら、依頼のあった関係者へ下記のような非該当通知書を発行します。

キャッチオール規制

前述のリスト規制に該当する製品でなくとも、たとえば工具やジグ、一般的な機械部品であっても、それらがテロリストや大量破壊兵器に使われないよう防止する措置を講じた規制です。具体的には輸出者は需要家を調べて出荷し、こうした目的に使われないことを手順に則って事前に確認する必要があります。

確認すべき部分は「用途」と「需要者」の二本立てです。

またこうした確認を行った記録を書面として残しておき、管理していく必要があります。外務省では大量破壊兵器・通常兵器の製造に関与していると思われる外国のメーカー一覧(外国ユーザーリスト)を公開していますので、輸出先がこれらに該当しないかどうかも調べておきます。このリストに掲載されている需要者が関与する取引である場合には、 特に慎重に確認・社内審査が求められます。

外国ユーザーリスト(経済産業省)

ただ、これについてはすべての国への輸出に関して同じように対策を講じているわけではなく、日本や米国の同盟国に相当するような国を「ホワイト国」と定め、これらについてはキャッチオール規制は適用されません。ホワイト国は27カ国(2013年1月現在)あります。

ホワイト国の一覧

リスト規制、キャッチオール規制の該当の有無の判定

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