ステンレスのうち錆びにくい種類は何か
ステンレスには多種多様な種類のものが存在しますが、同じステンレスでも錆びにくいものと、そうでないものが存在します。日常的な環境で使う分にはあまり違いが見えてきませんが、20数年〜50数年といった長いスパンで見る必要がある建材をはじめ、初期のステンレスの種類の選択が誤っていたために、本来発生すべきではないところに腐食や錆が発生してしまうということも無きにしも非ずです。
実際、ステンレスには大きくオーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、二相系、析出硬化系といった分類があり、それぞれの分類の中に多数のステンレスのグレードがあります。ステンレスの中にはそれぞれ耐食性に特化したものがあり、これらは固有の環境での耐食性に強くなるよう、添加元素を加減して作られたものです。
ステンレスのおかれる環境によって錆に強いステンレスは変わる
どんな環境でも万能の強さを誇るというものはあまり無く、何に対しての耐食性や錆びにくさ、錆への強さを優先させる必要があるという点を明確にしておかないと材料選択を間違ってしまうことにもなりかねません。
- ステンレスに触れることになる溶液、ガス、雰囲気などの種類
- pH、つまり酸かアルカリの程度
- 温度
- 表面に付着したものが常に流れ落ちる環境にあるのか、逆に堆積物や微細なゴミ等の付着して落ちない可能性があるか
上記の4項目は、耐食性を考えるうえで重要な確認のポイントで、上記の項目が異なるだけで特定環境で強い耐食性をもつステンレスが、条件が変わることで一気に錆びてしまうということがおきます。
塩化物と塩酸はステンレスの弱点
錆びにくいステンレスにとっても弱点となるものがあり、代表的なものが「塩化物」と、「塩酸」です。また酸性の溶液についても、温度によって耐食性は変わるため、ステンレス材料の選択にはこれらも考慮する必要があります。
塩化物は、海塩や塩素等に起因する塩化物イオンが身近なところでは該当します。
例えば、水道水に恒常的に触れる箇所に使うというのであれば、一般的なSUS304で問題ないところを、塩素濃度が高くなるような部位、気相部や受水槽ではSUS304の耐食性では不足する可能性があるといった具合です。
特定の腐食や錆に強いステンレスの種類の一覧
以下にそれぞれの環境で錆びにくいステレンスの候補材料となりうるものを一覧にまとめました。これらは温度・濃度によっても大きく左右されます。
環境、触れることになる溶液等 | 検討候補のステンレス(温度や濃度で変わる) |
---|---|
田園環境の大気中で使用 | SUS304、SUS316(但し堆積物がたまり雨水で洗浄されないような環境には適さないことがある)。SUS316のほうが耐食性には優れる。 |
海浜・海辺の大気中で使用 | SUS316(堆積物がたまらず雨水で表面が洗い流される環境なら可)、SUS445J1、SUS445J2、SUS312L |
水道水が常時触れる環境で使用 | SUS304(塩素濃度によっては腐食する)、SUS444、SUS329J4L、SUS315J1 |
海水中で使用 | SUS312L |
硫酸 | SUS447J1、SUS316、SUS316L、SUS316LN、SUS317、SUS317L、SUS317LN、SUS317J1、SUS317J2、SUS836L、SUS316、SUS316L、SUS316LN、SUS317、SUS317L、SUS317LN、SUS317J1、SUS317J2、SUS836L |
塩酸 | SUS304が耐えられるのは濃度が約0.5%から1%以下、常温 |
硝酸 | SUS304L、SUSXM15J1の極低C、SUS304よりさらに炭素量を低減した極低炭素ステンレス鋼、SUS310Sよりもさらに炭素量を低減した極低炭素タイプ |
酢酸 | 食品としてのお酢は酢酸濃度4%前後であり、どのステンレスでも問題ない。40%を超える沸騰した酢酸で試験した場合、SUS316、SUS317L、SUS317J2等 |
りん酸 | SUS316L、SUS317L、SUS890L、SUS312L、SUS836L |
尿素 | SUS316L、SUS329J4L |
弱アルカリ | たいていのステンレスで問題なし |
強アルカリ(苛性ソーダ等) | SUS304、SUS316(ただし、濃度50%以下、80℃以下) |
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