ホワイトメタルの融点、用途、成分、種類
ホワイトメタルは、商品名のバビットメタルとしても知られる合金で、主に滑り軸受用合金として使われます。融点は後述の成分比にもよりますが、概ね220℃〜240℃前後のものが多いようです。硬度はブリネル硬度で15〜30前後、成分は「スズ」「アンチモン」「銅」「鉛」の合金で、JISでは11種類が規格化されています。用途としてはベアリングのブッシュ(軸筒)そのものに使う場合と、鋼などの裏金(バイメタルともいい、滑動部の裏などに薄く貼り付けられます)に着けて使う場合とがあります。なお、「ころ」ではなく中に玉が入っている転がり軸受によく使われるのは高炭素クロム軸受鋼もしくはSUJ鋼と呼ばれる高炭素鋼です。
ベアリング(軸受)は絶えず激しい摩擦が起きる機械要素ですが、中でも滑り軸受けに使われることの多いホワイトメタルに求められるのは荷重に対する強さや耐摩耗性のほか、「なじみ性」と呼ばれる性質です。接触面積が大きく、長期間にわたり荷重がかかり、摩擦も発生する環境のため、他の金属とは少々異なる性能が求められます。交換が前提とならない部品の一部として使われることも多いため、疲労強度、耐食性も重要です。
繰り返しかかる摩擦によって表面が硬化せず、触れている軸に溶着しにくい性質を「なじみ性」といいますが、ホワイトメタルはこの性能に優れた金属材料です。摩擦熱の発生も少なく、熱伝導率の大きい種類もあり、こうしたものは熱を逃がしてやることができるため、ベアリングそのものの温度上昇とそれに起因する「焼付き」などを防ぐことができます。
耐磨耗性は一般的には金属の硬度と比例しますが、滑り軸受けのように、単に磨耗に強いだけでなく、焼き付きを起こしにくく、なじみ性が求められる状況では硬いだけでは、接触する相手側に溶着したり、過度な摩擦熱を発生させたりすることが問題となります。
磨耗や摩擦に対し、硬さというよりは、なじみ性と摩擦係数を大きくしない、といった発想で作られた合金ともいえます。
JISでは以下の11種類がありますが、ベースとなる金属によって、ホワイトメタルにはSn系(スズ)のものと、Pb系(鉛)のものがあります。
種類 | 記号 | 用途 |
---|---|---|
ホワイトメタル(1種) | WJ1 | 高速高荷重の滑り軸受け用 |
ホワイトメタル(2種) | WJ2 | |
ホワイトメタル(2種B) | WJ2B | |
ホワイトメタル(3種) | WJ3 | 高速中荷重の滑り軸受け用 |
ホワイトメタル(4種) | WJ4 | 中速中荷重の滑り軸受け用 |
ホワイトメタル(5種) | WJ5 | |
ホワイトメタル(6種) | WJ6 | 高速小荷重の滑り軸受け用 |
ホワイトメタル(7種) | WJ7 | 中速中荷重の滑り軸受け用 |
ホワイトメタル(8種) | WJ8 | |
ホワイトメタル(9種) | WJ9 | 中速小荷重の滑り軸受け用 |
ホワイトメタル(10種) | WJ10 |
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