木材の発火点と引火点
木材の発火点とは火に近づけずとも加熱していったときに燃え出す温度のことで、引火点とは加熱していき火を近づけると燃え出す温度のことを意味しています。木材の場合、後述の通り無炎発火という現象もあります。
木はもともと燃えやすい素材ではありますが、一般に、密度(比重)の高い木材ほど引火しにくく、含水率が高い木材ほど着火が遅くなる傾向があります。
燃焼には「可燃物」「空気(酸素)」「燃焼継続させる温度」の3要素が揃う必要がありますが、木材はその成分の約50%がセルロース、約30%がリグニン、約20%ヘミセルロースという構成の可燃物であり、空気のある環境かつ温度上昇を伴うという場合は少なくないと思います。
- 木材の発火点と引火点|目次
木材が自然発火する温度
木材の成分は、約200℃を超えると熱分解し、不燃性ガスとともに可燃性ガスを放出するようになり、250℃を超えるとさらにこの可燃性ガスが増大します。
このように木材が高温の環境にさらされていると、木材から放出された可燃性のガスが酸素と混ざり合い、可燃性の混合気体が出来上がり木材の表面に滞留することになります。この状態で燃焼の条件がそろうと、約420℃〜460℃前後で木材は発火します。これは火を近づけずとも発火する温度です。
自然環境の中で気温がここまで上がるということは基本ありませんが、火山の噴火や山火事などで周囲が燃えて高温になることで発火したり、引火したりします。
発火点
木材の種類によっても発火点は微妙に異なり、下表のようになります。
木材の種類 | みかけ密度 (g/cm3) |
発火温度(℃) |
---|---|---|
アカガシ | 0.97 | 441 |
ツゲ | 0.86 | 447 |
ケヤキ | 0.76 | 426 |
クリ | 0.68 | 416 |
トネリコ | 0.67 | 430 |
ヤマザクラ | 0.66 | 468 |
シラカバ | 0.66 | 438 |
ハイマツ | 0.53 | 445 |
カツラ | 0.50 | 455 |
ツガ | 0.46 | 445 |
アカマツ | 0.42 | 430 |
エゾマツ | 0.42 | 437 |
一方、日常においては木材を火元や熱源の側で使うということは多々あり(台所、ガス加熱、ストーブ等の暖房器具周辺)、特に住居においては木材は内装材、外装材に多用されています。輻射熱をうけて温度が上昇すると、火源に近づけたわけではないのに、木材部分が発火することになります。
防火地域や準防火地域では建築基準法で延焼の恐れのある部分に木材を使用することに制限がありますが、輻射量が一定以下であれば例外的に使用も可能で、この木材が発火する最低輻射量は約2.8 W/cm3と言われます。引火となるとこれがもっと下がります。素材別にこの輻射強度は下表の通りとなります。
樹種 | 密度 | 最低輻射強度 | |
---|---|---|---|
引火 (W/cm2) |
発火 (W/cm2) |
||
インシュレーションボード | 0.24 | 0.63 | 2.39 |
ウェスタンレッドシダー | 0.36 | 1.47 | 2.68 |
アメリカンホワイトウッド | 0.47 | 1.47 | 2.55 |
アフリカンマホガニー | 0.56 | 1.26 | 2.39 |
フレィジョ | 0.58 | 1.51 | 2.76 |
オーク | 0.61 | 1.51 | 2.76 |
イロコ | 0.72 | 1.51 | - |
引火点
一方、上述の発火の前のように、木材が加熱されて可燃性のガスが酸素と混ざり合い、可燃性の混合気体をまとっている状態で、火を近づけた時に着火する最低温度を引火点(引火温度)といいます。
なお、火を直接木材に接触させて引火させるのは「表面着火」と言われますが、この場合は通常よりも低いエネルギーで引火することになります。
木材は燃焼条件が満たされると200℃未満でも燃えますが、温度が高いほどにすぐに火がつくようになります。
下表が樹種ごとの引火点となります。木の種類が異なっても大きくは違いはありませんが、密度の高いものほど引火しにくい傾向があります。
木の種類 | 引火点(℃) |
---|---|
スギ | 240 |
ヒノキ | 253 |
ツガ | 253 |
アカマツ | 263 |
カラフトカラマツ | 271 |
エゾマツ | 262 |
トドマツ | 253 |
ケヤキ | 264 |
カツラ | 270 |
ブナ | 272 |
シラカバ | 263 |
キリ | 264 |
引火にもタイムラグがある
また引火に要する時間というのは、高い温度ほど短くなります。温度が高いと近づけた火に対して着火しやすいということです。熱気流中の気流温度と引火時間の関係を実験したデータでは下表のようになります。
発火と同様、引火にも最低輻射量があり、約1.3W/cm2前後の輻射量で引火するとされます。
気流温度(℃) | 引火に要する時間(分) |
---|---|
150 | 引火無し |
180 | 14.3から40.0 |
200 | 11.8から40.0 |
225 | 7.2から17.0 |
250 | 4.0から9.5 |
300 | 1.6から3.5 |
350 | 0.8から1.5 |
430 | 0.3から0.5 |
木材を引火や発火から守り、燃えにくくする対策としては以下のように木材そのものに対するものと、他の材料と組み合わせて延焼自体を防ぐ考え方があります。
木材表面に防火被覆材をコーティング | 薬剤処理によって木材を難燃化する |
---|---|
ロックウール、グラスウール、アルミ箔、セラミック系の不燃系の材料を木材の表面に貼る。 | 表面に防火塗料を塗布する方法と、薬剤を木材の内部に浸透または注入させる方法がある。 |
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