ショアリングとラッシングの違い
ショアリングとラッシングはそれぞれ英語ではlashingとshoringと言いますが、コンテナ輸送には欠かせないコンテナ内部での貨物固定作業であり、その違いについては現場で明確にされていなかったり、本来の意味と入れ違えて使われていることもあります。というのも、どちらも貨物がコンテナ内でしっかり固定されて輸送中に動かなければいずれを行っていようが大差ないためです。
用語 | 英語 | 意味 |
---|---|---|
ショアリング | Shoring | 木材の端材、角材を使ってコンテナ内のパレットや貨物を固定すること。コンテナ内部で輸送品が動いて破損することを防ぐ |
ラッシング | Lashing | ワイヤーや紐類、ラッシングベルトなどを使ってコンテナ内のパレットや貨物を固定すること。積み上げたコンテナが崩れないようコンテナ外側にもラッシングロッドで固定を行う |
貿易や物流の分野ではこの作業が甘いことで荷崩れや貨物の破損が起きることが多々ありますのでしっかり行うことが必要です。コンテナそのものが船やトラックへの積み込み・荷下ろしの際に落下してしまったり崩れたりすれば中身はほとんどの場合無事では済まない輸送事故になりますが、普通に運んでいるだけもかなりの揺れがありますので特に輸送事故が起きずとも貨物がだめになっていることがあります。
この写真ではラッシングもショアリングも行わずにコンテナ海上輸送し、コンテナ内で荷崩れが発生。着地で開梱作業であるデバンの時に中身が飛び出て作業者の事故になりかかった事例です。
貿易は基本的にコンテナにパレット単位や箱単位、あるいは大型のものであれば現物をそのまま中に入れ、コンテナ単位で運びます。コンテナの中で貨物が動かないよう固定しておかないと、激しい揺れに見舞われますので、特にコンテナに隙間があるような場合、左右前後、上下に貨物が行ったり来たりして破損したり、コンテナ内部で貨物が倒れたり崩れたりします。
こうしたときに貨物を固定する作業がショアリングとラッシングになります。
ショアリングの意味
ショアリングとは、ショワリングともいいますが木の端材例えば細目の角材を使ってコンテナの中で貨物が動かないように固定する作業のことを意味しています。
角材は10センチ角以上のものがよく使われますが、特に決まりはありません。細すぎると強度が不足するので折れてしまったり、太すぎると取り外しに難があったり、コンテナ内で貨物の入れるスペースを圧迫することがありますが、余った端材を工夫して使うので、適宜複数の角材を重ねて使うことや要所要所で補強しながら使うことが一般的です。
上写真のように簡易なショアリングも梱包状態によっては十分に機能します。
あまり厳重にやりすぎるとコンテナを開梱する作業であるデバンニングを行う作業者からクレームが来ることもあります。もっとも簡易なものだと、V型の角材をコンテナの最後の貨物に押し込むように嵌め込んで動かなくするというものです。基本、隙間を埋めるためのものであるため、木材の長さが足りない場合や適宜別の端材を隙間に押し込んで調整していきますが、釘は木材同士のみに使うようにする必要があります。木材を直接コンテナに打ち込むとコンテナに穴があき、輸送業者から費用請求されることがあります(コンテナはすべて借り物です)。
この写真の例では格子状にショアリングしていますが、外す際にかなり手間がかかる割に、ここまでの必要性がないため、改善要望が出たものです。V字型でも用をなします。
またしっかりした板材のように他のものにも使えるようなものを大量に入れていると、国によっては税関検査が入った際、荷材とはみなされず、木材として輸入申告を求められることがあるため注意を要します。
荷材に使っている木材であるため、木パレットと同じ扱いになりますので、国によっては燻蒸証明が必要なことがあります。これは防疫上の措置から、木材を輸入する際に害虫や自国の生態系を乱す可能性のある生物・種子などがそのまま入らないようにするためのものです。
燻蒸が必要にも関わらず行っていないことが検査時点でわかると臭化メチル等を一定期間コンテナ内に充満させて燻蒸処理させる必要があり、製品の種類によってはこれにより品質がだめになってしまいますので十分に注意が必要です。
ラッシングの意味
一方ラッシングとは、ワイヤーや紐類を使って貨物を固定する作業のことになります。これには二つの意味があります。一つは、コンテナ船で大量に段積みされて輸送する際、コンテナが落ちてこないように固定するためのラッシングです。こちらはラッシングロッドと呼ばれる鉄の棒状のものをX型にコンテナ外側に嵌め込んでコンテナが崩れてこないようにするためのものです。
もう一つがコンテナ内部の貨物を固定する作業であるラッシングのことで、こちらはコンテナ内部にラッシングベルトを通すためのフックが作られていますのでここへベルトやワイヤー(樹脂、金属など強度のあるロープ)を通して貨物が振動で移動してしまわないようしっかりと固定します。
上写真では再利用可能なラッシングベルトを使ってコンテナ内部の貨物が動かないように固定しています。
この写真の例では、X字の形に使い捨てのバンドを使ってラッシングを行っています。コンテナ内の下部には木材でのショアリングもしています。
ショアリングのこともラッシングと呼ぶことがあるのでより広い意味で貨物をコンテナに固定する、あるいはコンテナ自体を船に固定することを意味することがあります。
この作業の不手際により貨物が破損した場合というのはあらかじめ取引契約で責任区分を決めておく必要がありますが、あきらかにラッシングなし、ショアリングなし等の処置でコンテナ内をデバン(開梱)したときに中身が荷崩れしていた場合、梱包した側=輸出した側の責任です。契約にそのように明記されていない場合はもめること必至です。
輸送する貨物の種類によっては、ショアリングとラッシングの併用するほうが貨物破損のリスクを下げられることがあります。
コイル材のように転がるものはこの写真のように下部を木材でショアリングしてから、ラッシングベルトを使って荷物が動かないよう固定する方法があります。
なお、コンテナへ荷物を入れて封止する作業であるバンニングを外注している場合、バンニングの費用であるバンニングフィーとは別にショアリングフィーやラッシングフィーを別途チャージされることもあります。ただし安全にはかえがたい部分であるため、バンニングの専門知識や経験がないスタッフのみで行って貨物破損の事故となるくらいであれば、きちんと費用をかけてでも実施すべき内容ではあります。
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