MOQとSPQの違い
MOQは最小発注量のことで、SPQは最小梱包単位のことを意味しています。MOQがこれを下回る数量では取引できないという線引きに使われるのに対し、SPQは発注単位そのものという違いがあります。似た用語にSNPというものもありますが、こちらは出荷時の梱包単位を意味しています。両者をきちんと理解して取引条件を決めないと海外取引においては思わぬコスト増や経費倒れといった赤字トラブルに見舞われることがありますので、POなり取引基本契約なりに明確に記載しておく必要があります。
- MOQとSPQの違い|目次
MOQとSPQの表記例と違い
実際のやり取りや英文メールなどでは次のように表記されることがあります。
表記例 | 意味 |
---|---|
MOQ/SPQ=100/10 | MOQが100個なので、100個以上でないと注文は受けられない。SPQは10個なので、100個以上で10個刻みで注文できるというもの。100個、110個、120個、130個、140個・・・という具合に注文できる。 |
MOQ/SPQ=1000/50 | MOQが1000個なので、最低オーダーは1000個から。SPQが50個単位なので50個の倍数での注文となる。したがって、1000個、1050個、1100個、1150個、1200個・・・という具合に注文できる。 |
SPQは出荷時の梱包単位であるSNP(Standard Number of Packing)と同じことが多々ありますが、分けることも可能です。SNPが最小の梱包単位を意味しているのに対し、SPQは発注可能な単位を意味しています。SNPは標準梱包単位のことになるので、1箱何個入りなのか、あるいは1箱何キロ入りなのかといったことを示しています。SNPが1箱10個入りとしても、SPQを100個として設定すれば、100個単位=10箱単位でしか注文を受け付けられないことを意味します。
MOQ | SPQ | SNP |
---|---|---|
Minimum Order Quantity | Standard Packing Quantity | Standard Number of Packing |
1回の取引の中で受けることができる最小の発注数量のこと。この数量を下回ると注文を受けられないということを意味している。MOQが1000となっている場合は、1000以上でないと注文を受けられないことになる。 | 直訳すると標準の梱包単位になるが、実質その製品を取引する単位。SPQが100であれば、100の倍数で取引するので、100、200、300、400といった数量での注文になる。 | 直訳すると標準の梱包数量となるが、最小の梱包単位のこと。出荷時の梱包単位のことで、SNPが10個であれば、1箱に10個入っていることを意味している。SNPを崩す場合は、端数となるので、端数管理が別途必要になる。 |
価格設定時に考慮しないと損益に関わる要素
貿易上MOQが重要な意味を持ってくるのは、輸出や輸入する際には数量がどんなに少なくてもミニマムチャージとして最低これくらいの経費がかかってしまうというものが決まっているからです。またこの幅が国内の輸送と比べてかなり大きいものもあり、価格を毎回見積もって都度決定しないのであれば、売る側が損をしてしまうことになります。
輸出や輸入の諸経費は1個あたりに換算して単価に入れるということを行いますが、このときに一体何個での取引に基づいた計算なのかによって価格設定が大きく変わり、少量の発注にされてしまうと取引するだけで赤字になってしまいます。
例えば、FOB取引で日本から韓国の会社へ輸出販売するとしましょう。FOB条件であるため、仮に門司港からプサン港へ船便輸出するとした場合であれば、日本側は門司港で船に積み込みするまでの諸経費を製品単価に載せるとしましょう。FOB条件での輸出で港で船積みするまでに8万円かかるとします(輸出用梱包費用、港までの輸送費、書類作成費、通関費、港でのハンドリングや積み込みまでにかかる費用合計)。工場から出荷する際は1個100円、注文はだいたい1000個単位でもらえるので、8万円÷1000で1個80円のFOBコストとなり、100円(工場出し価格)+80円(FOB諸経費)=180円/個のFOB価格で売れば損をしないということになります。
ところがMOQをしっかり決めていなかったので、あるとき顧客が100個だけ欲しいといわれ、これをFOBの契約単価である180円/個で販売するとどうなるでしょうか。
8万円はFOB諸経費でかかってきますので、100個で割ると、1個当たり800円のFOBコストがかかります。100円+800円=900円/個で売らないと当初の利益は確保できないということになりますが、あらかじめFOBでの単価を契約で取り交わしておりMOQも決めてなかった場合は、100個でも10個でも1個180円/個で売る羽目になり、売る側は販売価格や利益よりも経費のほうがかかってしまい損をしてしまうということになります。
貿易の場合はこうしたMOQのほか、SPQも考慮しないと輸送費やその諸経費が回収できないという事態になるため、非常に重要な考え方となります。例えばMOQを1000個にして輸出または輸入にかかる諸経費を単価にしっかり入れたとします。ところが、1001個という発注をされてしまうと、港までの輸送にトラックがもう一台必要となれば、1個あたりにかかる経費が変わってきますので、この辺りも計算に入れてSPQを決める必要があります。
仮に、港までの輸送費が車建てとして(トラック1台での借り切り輸送)、ここでトラック1台で1000個運べるというのであれば、経費を最も抑えるには、MOQを1000個、SPQも1000個にすると、注文は最低1000個からで、次は2000個、3000個、4000個というオーダーになります。トラック1台が2万円としたら、20000÷1000で1個当たり20円のコストで固定できます。これがSPQを1個になっていたり、取り決めがなかった場合、最悪のケースでは1個運ぶのに2万円ということになってしまいます。
以上から見てわかる通りMOQ、SPQは貿易の損益分岐を考えて設定する必要がある重要な取引条件の一つといえます。これに加えて、工場での生産単位や仕入単位、作業効率、コンテナを使用する場合のパレット枚数、FCLとLCLの損益分岐を考慮してFOB価格を設定していくことになります。CIFやDDUの場合は、これらに加えて海上輸送や航空輸送、日本国外の現地輸送費分を同じ考え方で按分してみて、MOQとSPQを設定していくことになります。
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