ウイグル製造品のアメリカの対応
2022年6月に米国で施行されたウイグル強制労働防止法(UFLPA)により、アメリカにはウイグルで製造された物品は原則輸入できなくする強力な規制が発動されています。中国原産品のうち、新疆ウイグル自治区が製造に関与する製品の場合、強制労働で作成されたものではないことを確認できなければ米国には事実上輸入することができません。
米国税関・国境警備局が輸入例外と認めれば米国への輸入も可能となりますが、要件が厳しいうえ、製造場所がウイグルというだけでなく、UFLPAのエンティティー・リストに掲載の企業・事業体が製造したものも禁輸対象となっています。
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中国原産の場合、郵便番号で識別される
これと連動し、2022年12月15日以降、中国原産、いわゆるMade in China、China originとインボイスに記載された物品については、製造された場所の中国郵便番号の提供がアメリカへ輸入する際には必要となっています。
このため、取引先各社から、納入品のうち中国で生産しているものであれば中国の郵便番号を記入するよう調査依頼が増加しているかと思います。
なかにはこの趣旨をはき違えて、とりあえず製造工場のある郵便番号を調べればよいと誤認して、日本の郵便番号や韓国の郵便番号を調べて取引先に送るというような間違いも発生しています。この郵便番号は米国への輸入通関の際に使用しますので、日本の郵便番号が入力されるとエラー表示となります。
現時点では、中国製のものであってもウイグル地区の郵便番号ではなく、エンティティリストに載っている組織の物品でもない場合はアメリカへの輸入に支障はありませんので、自社の中国工場が当該地域になければ、ほとんどの日系企業によっては影響がありません。
また郵便番号調査はウイグルのものかどうかをスクリーニングするためのものであるため、実は省や都市を示す部分さえ当該地域でないことが分かれば、さして重要な意味を持たない情報です。
この調査は中国産のものをアメリカへ入れる必要がある場合には必須となるため、影響を受ける物品や企業の数も膨大なものとなりますので、2022年11月頃からこの中国の郵便番号調査依頼が急増しています。
使用している原材料や部品にも影響
また、これは製品をアメリカに輸入するだけにとどまらず、その製品の原材料の出所がウイグルでの強制労働によるものではないと証明する必要性が出てくる可能性も指摘されています。つまり、自社工場で使っている製品の原料がウイグル産の場合、禁輸対象となる可能性が出てくるということになります。いわゆる紛争鉱物の際と同様の芋づる式に禁輸対象を絞り込んでいく手法です。
法令の趣旨からすれば、強制労働による製品の輸入を差し止めることで、ウイグルで起きていることについて抗議するとともに、商売として成り立たないのでやめさせるという経済側面から人権を守ろうとする措置である以上、抜け道となるものはつぶしていく必要があり、米国当局と輸出したい側との攻防のいたちごっこが今後も出てくるものと思いますが、自社品の原料にいたるまでのサプライチェーンを把握しておく必要が今後出てくる可能性がある点には留意が要るかもしれません。
日本企業でも、ユニクロのシャツをアメリカへ輸入する際、税関当局が、強制労働に関与していない十分な証拠がないとして、輸入を差し止めた事例があり、話題となりました。フェアネス、公正に則ったサプライチェーンの重要度がますます増しているといえます。
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