トヨタ生産方式での原単位(gentani)の意味
原単位(読み方:げんたんい)はトヨタ生産方式(TPS)においては一つの製品を一単位生産する場合に必要となる部材、工数、箱当たりの入り数(収容数)のことを意味しています。転じて、トヨタと取引のあるメーカー等では作業単位や生産単位のような意味で使われていることもあります。
英語ではgentani
英語では「gentani」と表記されることがあるため、「ゲンタニとは何だ?」と混乱を招くことがあるかもしれません。トヨタ用語の多くはそのままローマ字にして使われる傾向があり、正しくはgenntanniになりますが、nが重複して使われることから省かれる傾向があります。海外に生産拠点を持っていて現地のトヨタと取引があるような場合、こうした表記でやり取りされることがあります。
なお、エネルギー消費や排出管理の分野での原単位とは、一定量の生産物をつくるために使用または排出するモノや時間などの量のことを指しています。つまりある製品の生産を行うのに投入する必要がある労働力原単位や原材料原単位、エネルギー原単位といった使われ方をします。
トヨタ生産方式での原単位は、1回につくる量や1回で運ぶ量のことを言っているので、1箱あたりに何個入るか、といった収容数の観点も入ってきます。
改善は原単位表を作るところから
具体的には原単位表というものが作られ、例えば以下のような情報が収集されます。原単位の改善を行いたい対象(在庫を減らしたい、運搬効率を上げたい、製造原価を下げたい)によって集められる情報は増減します。
項目 | 内容 |
---|---|
品番 | 改善対象とする部品番号(種類を特定できる一意の製品番号) |
荷姿、収容数 | 箱の種類(サイズ)とその中に何個入るかの情報 |
日当たりの必要数 | 品番の日当たり必要数 |
タクトタイム | 定時(実作業時間)を必要数で割った値 |
ネックマシン | ネックマシン(最も加工に時間がかかる設備、ボトルネックとなる機械)の設備機番と秒数 |
正味工数 | インライン作業者の1サイクル(手作業+歩行)+人数分の合計 |
正味人工 | 正味工数÷タクトタイム |
必要工数 | 正味工数+付帯工数 |
必要人工 | 必要工数÷タクトタイム |
ロットサイズ | 1回の仕掛け量 |
段取り回数 | 日当りの段取り回数 |
段取り時間 | 1回当りの段取り時間 |
工具交換回数 | 1個当りの工具交換時間 |
マン・マシン比 | 作業者の作業時間合計÷ネックマシンでの機械の加工時間 |
背番号 | かんばん方式の場合の背番号 |
前工程所番地 | かんばん方式の場合の前工程の所番地 |
供給ルート | 部品が供給されるルート |
直数 | 勤務シフトの数 |
供給回数 | 日当りの部品の供給回数 |
運搬具 | ビシャモン、リフト、エレカ、タグノバ等の運搬に使う機器 |
運搬可能箱 | 1回に運搬できる箱数 |
日当たり箱数 | その日に運ぶ箱数 |
積み込み作業時間 | 1回当りの積み込み・投入する時間 |
運搬工数 | 作業時間+付帯時間+走行時間 |
この原単位が小さいほど各工程で余分な在庫や工数は発生しませんし、余剰在庫が発生しないということはそれに起因するあらゆるムダが排除できることになります。トヨタでの生産方式で提唱されている7つのムダというのは、加工、在庫、造りすぎ、手待ち、動作、運搬、不良・手直しの無駄のことですが、このうち在庫のムダが最も悪影響があるといわれるもので、裏を返せば在庫のムダが減れば、加工、造りすぎ、運搬、手待ちのムダも低減できるということになります。
原単位管理でのメリットと条件
原単位を小さく管理することで途中工程で滞留する原材料、仕掛品、製品が極小化することができるメリットがあります。ただしこれが成り立つためには平準での生産が可能である、後工程つまり売れた分だけ作ればよいという流れが上流で出来上がっていることが前提となります。
ロット生産を旨とする製造現場では、原単位を小さくせずとも端数をなくすだけ、あるいは段取り替えの時間短縮だけでもムダ取りの改善にはなりますので、まずは原単位表を作って現状がどうなっているのか1回で運ぶ量、作る量、箱に入る量が適切で数があっているかを検証してみるのもよいでしょう。
同じ製品で原単位がバラバラとなっている場合、かなり作業や生産にムラが出てしまうので、まずはそこを定めるところから進めていくことになります。不明部分はなかなか大変ではありますが、ストップウォッチで計測しながらデータを取っていくのがよいでしょう。
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