ミルクランのデメリット、メリット|自動車メーカーにおける物流事例
ミルクランとは、もともと牛乳回収・配達になぞらえた集荷方式を意味し、トヨタ、日産、ホンダ、いすゞなど各自動車メーカーをはじめとする製造業が積極採用しています。簡単に言うと牛乳業者が酪農家をまわって効率的に牛乳を回収していくように、トラックが各サプライヤーを効率的に巡回して自社が購入する部品をピックアップし、自社の倉庫や工場まで運ぶ方法です。売るほうが届けるのではなく、買うほうが取りに来る、という物流のひとつの方法です。この輸送方法のメリットだけでなくデメリットについても、買い手と売り手のそれぞれの立場から見ていきます。
ピックアップするポイントから自社までの輸送費は、買い手である自動車メーカーが負担し、トラック便の契約からルート設定も買う側であるカーメーカー側が行います。特に製品を作るのに部品点数が多く、多くのサプライヤーと契約しており、多品種を多回納入(1日に時間を指定して何度も納入)するような方式に向いています。
というのも、こうした場合は各仕入先がそれぞれ異なる運送会社と契約しており、荷量や条件もばらついていることから輸送費が高くなっていることがあり、輸送会社との契約を買い手側がまとめて一手に引き受けて行うと(例えば一社の輸送会社に運送便もまとめてしまうと)荷量も多くなってコストを抑えられるメリットがあります。
通常、お客様へ各部材を納入するサプライヤーは自社の販売する製品に輸送費ものせ、配送(デリバリー)するところまで責任をもって行います。ミルクラン方式では逆に、顧客側が製品を回収にやってくるという大きな違いがあります。
多品種で大量の部品が行き来する業界では、物流網の効率運用というのは大きな課題となります。というのも運送代がかなりになる反面、トラックの巡回ルートを効率的に設定したり、積載効率を上げたり、1箱あたりの入り数を多くする荷姿改善をすることで製品1個あたりにのることになる輸送費が下がり、結果として原価を下げることができるためです。
自動車業界の場合、生産ラインで使う分だけ納入してもらうよう発注をかけますので、どうしても運送便の回数が増えます。逆に使う分だけを時間指定して発注しないと、部品の点数が他の工業製品に比べても多く、サイズも大きいものが多々あるため、置き場や倉庫があふれかえってしまいます。
こうしたことから自動車メーカーはミルクランを積極採用していますが、使っていないサプライヤーやメーカーも当然あり、これにはのちに述べるデメリットが関係してきますが、端的に言えば、サプライヤー側から見て必ずしもメリットばかりではなくコスト増になってしまうケースもあるためです。
自動車メーカー側からは、「仕入先からの部材納入に自社でミルクランを設定したほうがコストが下がるか」という視点で検討を行いますが、サプライヤー側でも以下二つの検証を行っています。
- 客先側のミルクランに乗っかったほうがコストが下がるか
- 自分たちで契約した運送便で納入したことがコストが下がるか
ミルクランにおけるメリットとデメリットのまとめ
ミルクランを使うか使わないかというのは、サプライヤーの立地、納入回数、物量、現在使用している運送便との兼ね合いといった問題を比較検討して判断していくことになります。以下にメリット、デメリットをまとめます。
ここでは主に自動車部品メーカー(サプライヤー)、自動車メーカーのそれぞれの視点で見た場合に、ミルクランのメリット、デメリット、課題がどこにあるのか見ていきます。
メリット | デメリット |
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