DP鋼とは
DP鋼とは高い引張強度を持つ「高張力鋼」、別名「ハイテン」材料の一形態です。DPはDual Phaseの略で、二つのフェーズの名が示すとおり、金属組織は軟らかい部分と硬い部分とが並存している二相タイプの鋼材になります。
ハイテン材のなかでは組織強化型といって、金属組織そのものに強度を付与したタイプの鋼材です。なかでもDP鋼のような鋼板は複合組織鋼板ともいわれます。
なぜこのような組織にしているかというと、鋼板は硬くすれば加工性が悪くなり、主力となる自動車用などのプレス加工や成形性に問題が出てくるため、硬さや強さとともに、加工のしやすさも重視されているからです。
高付加価値の鋼板の開発史、特にハイテン材は自動車用鋼板としての開発の歴史と言い換えても過言ではありません。現在のような高機能鋼板が自動車での使用を想定した機能を備えているのはこのためです。
DP鋼はなぜ加工硬化しにくいか
鋼板は硬くするほどに加工がしづらくなります。ただし使用部位によっては硬さがなくてはならない箇所があるのも事実です。
自動車の製造はプレスでの絞る加工や延ばしていく加工が主体となる為、曲げたり、切ったり、溶接するだけといった他の用途では求められない性質も必要になってきます。
それが軟らかさ、伸びやすさ、延びやすさといったパラメータです。
自動車用鋼板の開発は、硬さをもつつともに、加工に必要な軟らかさをあわせもつ鋼板の開発の歴史でもあります。
このDual phase鋼の場合、鋼板のなかに軟らかい組織と硬い組織が混在しています。結晶組織がそれぞれ分散して存在している複合組織をもつのがDP鋼で、やわらかい組織はフェライト、硬い組織はマルテンサイトの結晶構造を持っています。
熱処理の過程で金属組織の変態を調整している鋼板であり、高温での熱処理時にフェライトに変態しないままのオーステナイト組織を少しだけ残しておき、その後に急冷することでマルテンサイトに変態させるという技法が用いられています。結果、金属組織はマルテンサイトとフェライトがモザイク状にちりばめられたような構造をしています。金属組織の中にオーステナイト部分が多いと、力が加わった際、この組織がより硬い組織に変態して加工硬化をおこすため、DP鋼ではこれらの比率が少ないことからも加工硬化を起こしにくい鋼板となっています。
ハイテン材の種類
合金元素を添加して強化している(従来型) | さらに強度が必要になったため、組織強化型のハイテン材が実用化 |
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固溶体強化型、析出強化型 | TRIP鋼、DP鋼、IF鋼、BH鋼 |
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