SPFC鋼板(自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板)の板厚、成分、規格

2013年2月4日更新

SPFC鋼板は、熱延鋼板(高温下で圧力をかけてロールで延ばされた鋼板)を、さらに冷間圧延(常温で圧延)した材料です。自動車用の鋼板としては、最も強度に優れたものともいえます。もともとが引張強さに優れ、かつ衝撃にも強い熱間圧延の高張力鋼板を、圧延加工して薄くし、硬度をあげつつ、引張強さもさらに上げたタイプのハイテン材です。こうした冷間圧延を経ると、通常は伸びがかなり減少して加工性が悪化しますが、後工程での熱処理によって加工性と伸びを向上させているため、超薄型の高強度鋼板でありながら熱延鋼板のハイテンよりも加工性が高い鋼材となっています。自動車用の鋼板として高張力とともに加工性も優れ、高い寸法精度や薄型化も実現していることから、強度の要求される部位に採用されています。また汎用材に比べると、入手しづらい材料ではありますが、他の分野の部材としても活用されています。

自動車用で曲げやプレス加工といった塑性加工による加工性を重視したハイテン材では、熱間圧延されたSAPHやSPFHがありますが、加工性については冷延鋼板には及びません。SPFCで括られている鋼板は、同カテゴリーの冷間圧延のハイテン材唯一の規格でもあります。板厚が0.6mmから2.3mmという範囲で、2.0mm以下の薄板でありながら引張強さ980N/mm2以上の高張力鋼板も存在します。ただし、近年はこの980クラスからさらに1480N/mm2以上というレベルの鋼板が補強部材に使われることもあります。

従来、高張力鋼板のなかでも、超高強度材とされ、超ハイテンとも呼ばれるベイナイト組織や焼戻しマルテンサイト組織をもつ鋼板は、自動車の部位としてはバンパリインフォースやドアインパクトビームなどに採用されてきました。これらは固溶体強化型や析出強化型にカテゴライズされるハイテン材でもあります。

鋼板としてのハイテン材には、各種合金成分を添加したこうした固溶体強化型や析出強化型といった調質や時効による強度アップをはかったタイプが強度要求の高い部分には使われていますが、近年は組織強化型と呼ばれるDP鋼やTRIP鋼をもとにしたハイテン材も使われるようになりました。これらは鋼板の金属組織の有り様に工夫が凝らされており、衝撃を受けると硬化する性能を持っていたり、硬い部分とやわらかい部分を併せ持ち加工性を損なわない特殊な組織構造になっていたり、「加工性」「耐衝撃」「高張力(高い引張強さ)」といった従来は相反するパラメータを両立させうる可能性を持っています。

自動車用の鋼板には、引張強さや耐衝撃性のほか、加工性が求められますが、ハイテン材として強い材料であればあるほど、スプリングバックなどにより加工の難易度はあがるため、これらをバランスよく両立させることがハイエンドの鋼板には求められています。

SPFC鋼板の板厚

SPFC鋼板は、設定されている最低引張強さによって板厚の範囲が異なりますが、標準の板厚としては下表のものになります。冷延鋼板のため、高精度かつ薄く仕上げられています。

SPFCの板厚の種類(0.6mm以上2.3mm以下)
板厚(単位:mm)
0.6
0.65※
0.7
0.75※
0.8
0.9
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
2.3

SPFC鋼板の材料記号の新旧対照表

自動車用加工性冷間圧延高張力鋼の新旧対照表
1991年から 1990年まで
SPFC340 SPFC35
SPFC370 SPFC38
SPFC390 SPFC40
SPFC440 SPFC45
SPFC490 SPFC50
SPFC540 SPFC55
SPFC590 SPFC60
SPFC490Y SPFC50Y
SPFC540Y SPFC55Y
SPFC590Y SPFC60Y
SPFC780Y SPFC80Y
SPFC980Y SPFC100
SPFC340H SPFC35H

「JIS G 3135 自動車用加工性冷間圧延高張力鋼板及び鋼帯」に規定のある材料記号

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