鉄鋼、炭素鋼、合金鋼の焼入れ深さ

2013年1月5日更新

鉄鋼材料には用途に応じて数々の鋼種が存在しますが、焼入れした際に、どれくらい深くまでその効果が及ぶのかは個々に異なってきます。

鉄鋼においては、完全に焼入れがはいったか否かで、材料の強度をはじめ、機械的性質に大きな違いが出ます。また、焼入れによっては表面の硬度だけを上げておき、中身の部分に粘り強さを持たせておくことで、本来、硬さと衝撃に強いという相反するパラメータの双方のバランスをとることもできます。

下表は、鋼種によっての焼入れ性の二つの指標(焼入れ深さ、焼入れ硬さ)のうち、どのくらいの深さまで焼入れが入るのかを計算したものです。焼入れが深く入ることを、焼入れ性がよいとも表現しますが、これには金属組織を構成する粒子の大きさや、合金を作るために添加されている合金元素などが影響します。

焼入れ性のよい鋼材であれば、硬度や強度をかなり調整可能になるため、焼入れ性のよさで材料を選ぶという考え方もあります。より焼入れがしにくくなるサイズの大きな部材の場合は、この影響はさらに重要になってきます。なお、浸炭用のハダ焼鋼は、表面のみを硬化して中身の靱性を活かして使うタイプの鋼材です。

炭素鋼と合金鋼の焼入れ性の違い
鉄鋼材料の種類 焼入れの深さ(インチ):焼入れ性
C9CK(浸炭はだ焼き専用鋼) 0.33
C15CK(浸炭はだ焼き専用鋼) 0.41
C20CK(浸炭はだ焼き専用鋼) 0.48
S30C(炭素鋼) 0.70
S45C(炭素鋼) 0.85
S50C(炭素鋼) 0.90
S55C(炭素鋼) 0.95
SCr430(クロム鋼) 2.3
SCr435(クロム鋼) 2.5
SCr440(クロム鋼) 2.6
SCr445(クロム鋼) 2.8
SCr415(クロム鋼) 1.6
SCr420(クロム鋼) 1.9
SCM432(クロムモリブデン鋼) 3.3
SCM430(クロムモリブデン鋼) 3.9
SCM435(クロムモリブデン鋼) 4.2
SCM440(クロムモリブデン鋼) 4.5
SCM445(クロムモリブデン鋼) 4.7
SCM415(クロムモリブデン鋼) 2.7
SCM420(クロムモリブデン鋼) 3.1
SCM421(クロムモリブデン鋼) 3.5
SCM822(クロムモリブデン鋼) 4.3
SNC236(ニッケルクロム鋼) 2.65
SNC631(ニッケルクロム鋼) 3.50
SNC836(ニッケルクロム鋼) 4.70
SNC415(ニッケルクロム鋼) 1.30
SNC815(ニッケルクロム鋼) 3.15
SNCM431(ニッケルクロムモリブデン鋼) 5.4
SNCM625(ニッケルクロムモリブデン鋼) 8.8
SNCM630(ニッケルクロムモリブデン鋼) 17超
SNCM240(ニッケルクロムモリブデン鋼) 3.85
SNCM439(ニッケルクロムモリブデン鋼) 6.3
SNCM447(ニッケルクロムモリブデン鋼) 6.8
SNCM420(ニッケルクロムモリブデン鋼) 2.85
SNCM616(ニッケルクロムモリブデン鋼) 18.6
SMn443(マンガン鋼) 1,56
SMnC443(マンガンクロム鋼) 3.35
SACM645(アルミニウムクロムモリブデン鋼) 5.6

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