SPFH(自動車用熱間圧延高張力鋼板)とSPFC(自動車用冷間圧延高張力鋼板)は何が違いますか

2013年2月5日更新

これらは原則として熱延鋼板と冷延鋼板の違いでもありますが、双方とも高張力鋼板(ハイテン)でもあることから、そこに起因する固有の違いもあります。冷延鋼板は、工数が多いため、熱延よりも価格が高くなります。端的に言えば、熱延鋼板を常温で圧延したものが冷延鋼板なので、工程が余計にかかっています。

同じ引張強度を持つグレードの場合、SPFH(熱延)よりSPFC(冷延)のほうが降伏点は低くなります。力を加えたとき、塑性変形して元に戻らなくなる負荷ポイントが降伏点で、引張強さが同じで、降伏点が低いということは、衝撃を受けた際に吸収できるエネルギーが多いということになります。

 

伸びについても、引張強度が同じレベルならば熱延鋼板であるSPFHより冷延鋼板であるSPFCのほうが少しパーセンテージは高くなります。絞り加工や深絞り加工に適したグレードもあり、より複雑な加工が必要な場合は、コストは上がりますが、冷延鋼板に軍配が上がります。

自動車用の薄板は、通常プレス加工されたあとに溶接で組みつけられます。形状によってはプレスの際、鋼板に成形性が十分にないと、鋼材が割れたり、皺が発生することもあります。こうした面では冷延鋼板に勝るものはありません。

一般に鋼板は、引張強さが強くなるほど成形性、加工性が悪くなっていきますが、伸びが大きなものほど成形性がよいため、この「伸び」という指標が重要となります。

自動車の車体用内板、外板は、成形性が重要となる難しい部分であり、加工性の高いものが優先して使われてきました。したがって、伸びがよく加工性のよい低炭素鋼や極低炭素鋼などの低強度材が使われることが多かったのですが、低降伏比高張力鋼や自動車用の冷間圧延高張力鋼板の出現により、強度と加工性の両立性も可能になってきました。

SPFCは価格のこともさることながら、厚みがかなり薄いため、使う場所を選びますが、同じ厚みならば強度、精度、加工性、硬度については熱延を上回る鋼板です。

 

 また、さきほど少し述べたとおり、熱延鋼板に比べて低降伏比であることから、降伏点を上回る衝撃や負荷を受けてから破壊されるまでの変形能力が高いという点を特徴とします。つまり、鋼材の弾性限界ゆえ、エネルギーを受けても吸収する能力に優れている鋼材です。

 SPFCの鋼材記号の末尾についているYはYield(降伏)の略です。同グレードの引張強度を持つハイテン材に比べて、低降伏比を持つことを示しています。

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