金属の引張強さの一覧|金属材料の引張強さを比較する
引張強度は、破断限界をみるためのパラメータで降伏点とあわせて使うことで材料の持つ「強度」をみる為の指標です。
引張強さとはごく簡略化していえば、両サイドから材料を引っ張り、千切れるまでの力がどれくらいか、を数字で示したものです。
実務上は引張強度にあわせて設計するというよりは、それ以上力を加えると変形して元に戻らなくなる「降伏点(耐力)」を基準にすることが多いですが、これは多くの部品や機械等において、変形して元に戻らなくなる「永久ひずみ」が生じてしまうと、意図した機能が損なわれてしまうからです。
ほとんどの材料については、引張強さと圧縮強さも類似していると言えますが、一部、コンクリートのように圧縮には非常に強いものの、引張強度は高くないという材料もある為、こうしたものについてはどういう力が加わるのかという点を検討する必要が出てきます。とくに、硬くて脆いとされる硬脆材料(こうぜいざいりょう)については、圧縮に比べて引張強度が弱い材料も散見されますので、どちらの方向に力が加わる設計となっているのか、様々な可能性を考慮する必要があります。
鉄筋コンクリートはコンクリートの中に鉄筋を入れた構造材料ですが、これは引張強度があまり強くないコンクリートの中に、引張強さに優れる鉄鋼材料を入れることでバランスをはかる意図があります。
また、材料によっては引張強さは硬度ともある程度比例していきます。
なお、鋼線、ピアノ線などの針金の径が細いほどに引張強度が高くなるのは、製造工程上、伸線により引き伸ばされて製造されているため、より強靭な金属組織を持つことが理由です。
金属の種類 | 材料記号・熱処理 | 主な組成 | 引張強さ(T/MPa) |
---|---|---|---|
純鉄(99.96%)焼鈍し | - | 99.96 Fe | 196 |
一般構造用圧延鋼材 | SS400(焼鈍し) | Fe -0.1C | 450 |
冷間圧延鋼板 | SPCC | Fe -0.15以下 C | 270以上 |
機械構造用炭素鋼 | S45C(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.45C-0.25 Si-0.8 Mn | 828(690以上) |
機械構造用炭素鋼 | S45C(焼ならし) | Fe-0.45C-0.25 Si-0.8 Mn | 570以上 |
機械構造用炭素鋼(軟鋼) | S12C(焼ならし) | Fe-0.12C-0.15〜0.35 Si-0.30〜0.60 Mn | 370 |
機械構造用炭素鋼(硬鋼) | S55C(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.55C-0.15〜0.35 Si-0.60〜0.90 Mn | 780以上 |
ピアノ線 | SWP-V | 線材規格による | 2010から2210(線径1mm) |
鉄筋コンクリート用棒鋼 | SD345 | Fe-0.27以下 C-0.55以下 Si-1.60以下 Mn | 490以上 |
鉄筋コンクリート用棒鋼 | SD490 | Fe-0.32以下 C-0.55以下 Si-1.80以下 Mn | 620以上 |
機械構造用炭素鋼鋼管 | STKM15C | Fe-0.25から0.35 C-0.35以下 Si-0.30から1.00 Mn | 580以上 |
建築構造用圧延鋼材(ガイドライン鋼材、SN材) | SN400C(16mmと想定) | Fe-0.20以下 C-0.35以下 Si-0.60から1.50 Mn | 400以上510以下 |
自動車構造用熱間圧延鋼板(ハイテン材) | SAPH400(6mmと想定) | NA | 400以上 |
熱間圧延軟鋼板 | SPHC | Fe-0.12以下 C-0.60以下 Mn | 270以上 |
高張力鋼 | HT80(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.12C-0.8Mn-1.0Ni-0.5Cr-0.4Mo | 865 |
クロム鋼 | SCr430(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.28から0.33C-0.15から0.35 Si-0.60から0.90 Mn-0.90から1.20Cr-0.25以下 Mo | 780以上 |
マンガン鋼 | SMn438(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.35から0.41C-0.15から0.35 Si-1.35から1.65 Mn-0.35以下 Cr-0.25以下 Ni | 740以上 |
マンガンクロム鋼 | SMnC420(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.17から0.23C-0.15から0.35 Si-1.20から1.50 Mn-0.35から0.70 Cr-0.25以下 Ni | 830以上 |
クロムモリブデン鋼 | SCM440(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.4C-0.7Mn-1.0Cr-0.25Mo | 980以上 |
ニッケルクロムモリブデン鋼 | SNCM439(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.40C-0.30Si-0.70Mn-1.85Ni-0.80Cr-0.25Mo | 1765(980以上) |
ニッケルクロム鋼(SNC815) | SNC815(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.12から0.18 C-0.15から0.35 Si-0.35から0.65Mn-3.00から3.50Ni-0.60から1.00Cr | 980以上 |
ダイス鋼(合金工具鋼) | SKD6(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.37C-1.0Si-5.0Cr-1.25Mo-0.4V | 1550 |
ばね鋼 | SUP7(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.6C-2.0Si-0.85Mn | 1230 |
低温圧力容器用ニッケル鋼鋼板 | SL9N590(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.05C-0.3Si-0.9Mn-9.0Ni | 760 |
マルエージング鋼 | 350級(焼鈍し、時効処理) | Fe-17.5Ni-12.5Co-3.75Mo-1.8Ti-0.15Al | 2403 |
析出硬化系ステンレス鋼 | SUS631(焼き戻し、時効処理) | Fe-0.06C-0.4Si-0.6Mn-7.0Ni-17.0Cr-1.2Al | 1225 |
マルテンサイト系ステンレス鋼 | SUS410(焼入れ焼き戻し) | Fe-0.15>C-1.0>Si-1.0>Mn-12.5Cr | 540 |
フェライト系ステンレス鋼 | SUS430(焼き鈍し)) | Fe-0.12>C-0.75>Si-1.0>Mn-17Cr | 450 |
オーステナイト系ステンレス鋼 | SUS304(固溶化処理) | Fe-0.08>C-1.0>Si-2.0>Mn-9 Ni-19 Cr | 520以上 |
析出硬化系ステンレス鋼 | SUS630(H900:固溶化処理後、470〜490℃で空冷) | Fe-0.07>C-1.0>Si-1.0>Mn-3.0から5.0 Ni-15.0から17.0 Cr-3.0から5.0 Cu-0.15から0.45 Nb | 1310以上 |
インコロイ800 | NCF800(焼き鈍し) | Fe-32.5 Ni-21 Cr-0.4 Al-0.4 Ti | 520 |
ねずみ鋳鉄 | FC材(鋳造したまま) | Fe-3.3 C-2 Si-0.5 Mn | 450 |
球状黒鉛鋳鉄 | FCD370(鋳造したまま) | Fe-2.5 C- 2 Si | 370 |
オーステンパ球状黒鉛鋳鉄 | FCD900A(オーステンパ処理) | Fe-3.5 C-3 Si-0.2 Mn | 900 |
黒心可鍛鋳鉄 | FCMB360(焼きならし) | Fe-2.5 C-1 Si-0.4 Mn | 360 |
ニッケル | Ni(焼き鈍し) | Ni 99.99 | 335 |
インコネル600 | NCF600(焼き鈍し) | 72 Ni-15.5 Cr-8 Fe | 550 |
ハステロイX | (焼き鈍し) | Ni-22 Cr-9 Mo-0.6 W- 18.5 Fe-1.5 Co-0.6 W | 775 |
モネルメタル | (焼き鈍し) | Ni-30 Cu-4 Si-2 Fe-1.0 Mn | 775 |
ニクロム | GNC108(製造したまま) | 80 Ni - 20 Cr | 690-930 |
無酸素銅 | C1020(完全焼き鈍し) | Cu > 99.96 | 195 |
7-3黄銅 | C2600(完全焼き鈍し) | 70 Cu-30 Zn | 280 |
6-4黄銅 | C2801(完全焼き鈍し) | 60 Cu-40 Zn | 330 |
ネーバル黄銅 | C4640 P(製造したまま) | Cu-40 Zn-0.8 Sn | 375 |
りん青銅 | C5212 P(完全硬化) | Cu-8 Sn-0.2 P | 600 |
洋白 | C7521 P(完全硬化) | 65 Cu-18 Ni-Zn | 540 |
ベリリウム銅 | C1720(完全硬化) | Cu-1.9 Be-0.2 Ni | 900 |
黄銅鋳物 | YBsC2 | 68 Cu-2 Pb- Zn(残り) | 195 |
青銅鋳物 | BC2C | Cu-8 Sn-4 Zn | 275 |
りん青銅鋳物 | PBC2C | Cu-11 Sn-0.3 P | 295 |
マンガニン | CMW | 84 Cu-12 Mn-4 Ni | 340から590 |
純アルミニウム | A1085 P(焼鈍し) | Al>99.85 | 55 |
アルミニウム合金(耐食アルミ) | A5083 P(焼鈍し) | Al-4.5 Mg-0.5 Mn | 345 |
ジュラルミン(アルミ合金) | A2017 P(T4, 常温時効) | Al-4 Cu-0.6 Mg-0.5 Si-0.6 Mn | 355 |
超ジュラルミン(アルミ合金) | A2024 P(T4, 常温時効) | Al-4.5 Cu-1.5 Mg-0.6 Mn | 430 |
超々ジュラルミン(アルミ合金) | A7075 P(T6, 焼入れ焼き戻し) | Al-5.6 Zn-2.5 Mg-1.6 Cu | 573 |
シルミン | AC3A(鋳造したまま) | Al-12 SI | 140 |
マグネシウム合金 | MP5(製造したまま、板材) | Mg-3.5 Zn-0.6 Zr | 250 |
マグネシウム合金 | MB1(製造したまま、棒材) | Mg-3 Al-1 Zn | 230 |
マグネシウム合金鋳物 | MC1(T4, 常温時効) | Mg-6 Al-3 Zn-0.3 Mn | 240 |
純チタン | C.P.Ti(焼鈍し) | H<0.013-O<0.20-N<0.05-Fe<0.20 | 320 |
チタン合金 | 60種、6Al-4V | Ti-6 Al-4 V(焼鈍し) | 980 |
亜鉛ダイカスト合金 | ZDC1 | Zn-4.0 Al-1.0 Cu-0.04 Mg | 325 |
種類 | 引張強さ(T/MPa) |
---|---|
絹糸 | 260 |
クモ糸 | 180 |
革ベルト | 30から50 |
石英糸 | 1000 |
テグス(腸線) | 420 |
ナイロン(PA66) | 62から83 |
ポリエステル | 44前後 |
ポリエチレン | 21から35 |
ポリスチレン | 34から52 |
メチルメタクリレート | 50から76 |
木材(普通、木目に平行) | 20から70 |
木材(堅木) | 60から110 |
超硬合金 | 900から2500前後(種類による) |
ダイヤモンド | 正確には不明。60,000まで観測されており、225,000近くになるとされる |
ガラス | 50前後 |
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