引張強さと降伏点の関係

2015年4月27日更新

引張強さは、材料の破壊限界を示す強さです。引張強度として指定された以上の力が加わると、材料は破断することになります。

降伏点は、力を加えた時に材料が変形して元に戻らなくなる強さを示しています。降伏点より小さい力であれば、力を離せばもとの形に戻ることができるため、弾性の上限とも言われます。この降伏点として設定された力までであれば、材料はもとの形状に戻りますので、機械や構造物、部品等、設計においてはこの降伏点をベースにさらに安全率等が加味されて検討が行われます。引張強さよりも設計者にとっては重要とされる所以です。

引張強さと降伏点は、ともに耐えられる力の大きさを示しており、鋼材をはじめとする材料の「強度」を見るための指標です。

ある鉄鋼材料に、力をだんだんと加えていった場合、ある力までであれば力を除けることで元の形に戻ります。その上限が「降伏点」となります。さらに降伏点を超える力を徐々に加えていくと、材料は変形していき、この状態で力を加えるのをやめても形はもう元には戻りません。降伏点を超える力をさらに強くしていくと、ある時点で材料は破壊されてしまいます。この時点での力を、引張強さと呼んでいます。

力をだんだんと加えていくことで、弾性範囲(元に戻る範囲)、塑性範囲(ひずみが残り元には戻らない)を経て、破断(破壊)に至ります。

このため、降伏点のほうが引張強さよりも小さくなりますが、容易に破壊されてしまっては困るような用途では、材料をあえて変形させて破壊を防ぐという考え方もあります。降伏点と引張強さの差や比が重要となる用途です。

引張強さと降伏点の比率の関係を「降伏比」もしくは「YR」(Yield Ratio)と呼びます。降伏比(YR)=(降伏点/引張強さ)×100の式で表されます。

例えば、降伏点が200MPaで、引張強さが400MPaとした場合、降伏比は50%となります。降伏点が100MPaで、引張強さが400MPaとした場合、降伏比は25%となります。この場合、25%のほうが低降伏比となります。破壊されるまでの衝撃吸収能力を見る上では一つの指標となっています。

降伏点と引張強さがどの時点で表れるか一目でわかるようにした図として、応力ひずみ線図があります。

なお、鉄鋼材料に限った話となりますが、降伏点は引張強さの約50%前後(熱処理していない生材の場合)、熱処理した鉄鋼材の場合は引張強さの約80%前後(焼きのよく入るものであれば約90%)となります。引張強さと降伏点にはこのように材料によって一定の関係があります。

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