SCS(ステンレス鋳鋼品)の種類と材質、成分、規格について
SCSとは−特徴とメリット
SCSは英文表記のSteel Casting Stainlessの頭文字からきたもので、そのままステンレス鋳鋼品を意味します。鋳鋼は鋳造というハガネの製法で作られたもので、一言でいうなら「ハガネを溶かして固めたもの」です。SCSはステンレスの一種で、製法が鋳造によるもの、ということが言えます。したがってステンレス鋼であるSUSとも一部のSCSは対応関係にあります。SCSはJIS規格の上では、成分と引張強さ、耐力、伸び、絞り、硬さ、熱処理条件が規定されています。SCSの特長は、鋳鋼品の全般的特長とも一部被りますが、機械加工が困難であったり、コスト的に難しい部位に適用可能な点、材質が選びやすく、大量生産が可能な点等を大きな強みとしています。複雑形状のため削りだしや鍛造では加工が難しい製品や部位で特に重宝されている鋼材です。
SCSの材質−ステンレス鋼
こうした鋳鋼品特有の長所の他、SCSはSUSつまりステンレスの鋳鋼品であるため、耐食性や耐熱性も健在で、SUSと成分も似通ったものがあり、SCSにもオーステナイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系(二相系)、マルテンサイト系、析出硬化系のそれぞれの系統が存在します。用途にあわせてSCSの種類もステンレス同様に多様なものが存在します。
SCSのデメリット、弱み
デメリットとしては、溶解や鋳込みに高温環境が必要である点や、鍛鋼品に比べるとじん性などの強度面では劣る点、寸法精度に限界がある点など上げられます。また溶かした鋼を型に入れて固める原理に基づいていることから引け巣などをはじめとする鋳巣(いす)が内部にできることがあります。ただし、近年の鋳造技術ではこの巣の問題は改善され、強度的に劣るというわけではなく、むしろ鋳物が採用されないケースは、寸法精度や大量生産を行わないケースなどで、量産ベースの製品での適用例は多いといえます。ただ、SCSはステンレス鋳鋼品であるため、耐熱鋼の性質を持ち、通常の鋳鋼品よりもさらに鋳込み温度が高く、この高温に起因する鋳型との反応によって焼き付きが起きやすいとされます。
SCSの用途
SCSの用途としては、圧延や鍛造では製造が困難な複雑な形状のものが多く、船舶用、産業機械用などの各種ケーシング、自動車用のクランクケース、マニホールドのほか、耐熱鋼あるいは耐食鋼として、通電ロールなどの各種製造用のロールや油井管、ケミカル用設備、タンカー、化学プラントの部材、染色設備材料、調節弁、ポンプ、ポンプ部品、バルブ、リテーナー、化学装置、排煙脱硫装置などとして使われます。特に各種液体用のポンプのケーシングやインペラーには多用されており、これはステンレスの持つ耐熱、耐食、耐酸性が鋳物でも発揮されるからに他なりません。
SCSの成分
他の鋼材と同様、SCSも成分は通常とりべ分析値であり、鋳鋼品と圧延品とでは似た成分でも機械的強度や特性が変わる可能性があります。JIS規格と、ASTM規格でのステンレス鋳鋼品についての対応関係は、厳密に対応しているというよりは、類似の鋼種となります。
SCSの磁性
なお、SCSの磁性の有無もSUS系統のオーステナイト、フェライト等に準じたものになります。すなわち、オーステナイト系のSCSは磁石につかず、他の系統のSCSは磁石につくといった法則が当てはまりますが、加工硬化などによってオーステナイト系のものでも磁性を持つことがある現象も同様です。
SCSとISO、ASTMのステンレス鋼との対応表
SCSやSUSといったステンレスの規格は日本のJIS規格によるものです。海外の鋼材でこれに相当するものを使う必要があるときは、おおむね下記の鋼種がこれに該当します。
JISにおけるSCSの種類 | ISOにおける鋼種 | ASTMでの類似鋼種 |
---|---|---|
SCS1 | - | CA15 |
SCS1X | GX12Cr12 | CA15 |
SCS2 | - | CA40 |
SCS2A | - | CA40 |
SCS3 | - | CA15M |
SCS3X | GX8CrNiMo121 | CA15M |
SCS4 | - | - |
SCS5 | - | - |
SCS6 | - | CA6NM |
SCS6X | GX4CrNi124 (QT1)(QT2) | CA6NM |
SCS10 | - | - |
SCS11 | - | - |
SCS12 | - | CF20 |
SCS13 | - | - |
SCS13A | - | CF8 |
SCS13X | GX5CrNi199 | - |
SCS14 | - | - |
SCS14A | - | CF8M |
SCS14X | GX5CrNiMo19112 | - |
SCS14XNb | GX6CrNiMoNb19112 | - |
SCS15 | - | - |
SCS16 | - | - |
SCS16A | - | CF3M |
SCS16AX | GX2CrNiMo19112 | CF3M |
SCS16AXN | GX2CrNiMoN19112 | CF3MN |
SCS17 | - | CH10, CH20 |
SCS18 | - | CK20 |
SCS19 | - | - |
SCS19A | - | CF3 |
SCS20 | - | - |
SCS21 | - | CF8C |
SCS21X | GX6CrNiNb1910 | CF8C |
SCS22 | - | - |
SCS23 | - | CN7M |
SCS24 | - | CB7Cu-1 |
SCS31 | GX4CrNiMo1651 | - |
SCS32 | GX2CrNiCuMoN26533 | A890M1B |
SCS33 | GX2CrNiMoN2653 | - |
SCS34 | GX5CrNiMo19113 | CG8M |
SCS35 | GX2CrNiMo19113 | CG3M |
SCS35N | GX2CrNiMoN19113 | - |
SCS36 | GX2CrNi1810 | - |
SCS36N | GX2CrNiN1810 | - |
SCS(ステンレス鋳鋼品)の材料記号の一覧
SCSはステンレスと同様に、金属組織のタイプが「オーステナイト系」「オーステナイト・フェライト系(二相系)」「マルテンサイト系」「析出硬化系」のものがあります。記号はSCSのあとに1桁〜2桁の数字と場合によっては熱処理記号が末尾につきます。
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