SWCH(冷間圧造用炭素鋼線)の材質、機械的性質、成分について
SWCHの規格の成り立ちと用途
SWCHは冷間圧造用炭素鋼として規定された鋼材で、JIS G 3507の第2部(JIS G 3507-2)に規定されています。この材料となる鋼であるSWRCHは線材として同じ規格の第1部(JIS G 3507-1)に規定されている。文言は「線」となっているが、細いワイヤー状のものだけでなく、径の比較的大きな鋼材もあります。SWCHについては機械的性質が、SWRCHについては成分、組成が規定されています。
SWCHはSWRCHから作られる鋼材で、ネジやボルト、ナット、リベットなどの材料としてよく知られています。ねじやボルトで使われる場合、条件にもよりますが、強度区分8.8までの製品として使われます
詳しく言えば、SWRCH材そのものは、鋼の塊を熱間圧延することによって得られますが、この際、鍛錬成形比は4S以上の圧延をかける規定になっています。この出来上がったSWRCH線材を、そのまま冷間加工か(D工程)、焼き鈍し後に冷間加工するか(DA工程)によって得られた鋼種が、SWCH材になります。
寸法と製法によって機械的性質について細かい規定があること、出発材料となるSWRCHに成分規定もあり、検査項目も多岐にわたることから、ネジ・ボルト以外の用途にも、比較的グレードの高い鋼種として使われることがあります。
SWCH材の記号の意味
SWCH10Rと書いてある場合、SWCHが冷間圧造用炭素鋼線であることを示します。英語で書くと、Steel Wire Cold Headingとなり、この頭文字からきています。SWCHの後に続く10という数字は、鋼材に含まれている炭素含有量のパーセンテージの中間値となります。例えばSWCH10Rならば、炭素の範囲は0.08〜0.13と規定されていますので、この間をとって10の数字がつけられています。
炭素は硬さや引張強さに直接影響する要素なので、多くの鋼材のJIS規格では記号の中に数字として織り込んでいるものが多く見受けられます。
最後に、SWCH10RのRはこの鋼材が作られている原料の鋼の製法を意味しています。多様なSWCH材の違いは、成分による違いであり、出発材料となる鋼種の違いでもあります。リムド鋼(もしくはリムド相当鋼)、アルミキルド鋼、キルド鋼から作られたものかはSWCH材の種類によって決められています。SWCHの記号の末尾についているR、A、Kがそれぞれどの鋼材から製造されているものかを意味しています。
記号 | 鋼の種類 |
---|---|
末尾がR | リムド鋼 |
末尾がA | アルミキルド鋼 |
末尾がK | キルド鋼 |
SWCHの機械的性質
SWCHの機械的性質は、記号に続く数字が異なっても、すべて違うわけではなく、ある程度のまとまりがあります。対象となる鋼材のサイズが小さいことも関係しています。
SWCHに続く「番号」、例えばSWCH10Rは規定上、材料となる鋼材であるSWRCH10Rについては他と成分が異なりますが、機械的性質についての規定はSWCH6RやSWCH8R、SWCH6A、SWCH8A、SWCH10Aと共通になっています。ただし、線径が変われば、寸法効果によって当然強度にも違いが出てくるため、実際の値については使うサイズによって機械的性質が異なる点を念頭に置く必要があります。
加えて、SWCH材は規格材となるに至った加工方法によって機械的性質がかなり変わります。この辺は他の鉄鋼材料と同じです。規格では、D工程と呼ばれる冷間加工による仕上げと、DA工程と呼ばれる冷間加工後に、焼き鈍し(焼きなまし)を行った上で、さらに冷間加工で仕上げたもの(場合によっては冷間加工は一度で、加工前に熱処理によって焼きなます)の二種類があります。両者の機械的性質、強度も異なりますので、用途によって使い分ける必要があります。
SWCH材の比重
他の鉄鋼材料と同様に、7.87前後となりますが、詳しくは炭素含有量をはじめ、各SWCH材の成分、組成、添加元素、加工の内容によって微妙に異なってきます。
SWCH材の寸法、サイズ
標準寸法・サイズとしては、SWCHの材料(SWRCH)には以下の通り規定がありますが、これ以外のサイズも存在します。
直径(単位:mm) | 5.5 |
---|---|
6 | |
6.4 | |
7 | |
8 | |
9 | |
9.5 | |
10 | |
11 | |
12 | |
13 | |
14 | |
15 | |
16 | |
17 | |
18 | |
19 | |
20 | |
22 | |
24 | |
25 | |
26 | |
28 | |
30 | |
32 | |
34 | |
36 | |
38 | |
40 | |
42 | |
44 | |
46 | |
48 | |
50 |
径 | 許容差(公差) | 偏径差 |
---|---|---|
15mm以下 | ±0.3mm | 0.4mm以下 |
15mm超、25mm以下 | ±0.4mm | 0.5mm以下 |
25mm超、32mm以下 | ±0.5mm | 0.6mm以下 |
32mm超、50mm以下 | ±0.6mm | 0.7mm以下 |
SWCH材(冷間圧造用炭素鋼線)の材料記号の一覧
SWCH24KとSWCH27KからSWCH50Kまでは焼きなまし後の冷間加工についての規定のみとなります。その他の冷間圧造用炭素鋼については、冷間加工のみと、焼きなまし後冷間加工の2パターンについての機械的性質が規定されています。
スポンサーリンク