廃番のお知らせ例文
廃番のお知らせは、通常メーカーや商社等の販売元から客先に対して発行されるもので、以下例文にある通り、記載すべき事項には定まった型があります。製造廃止のお知らせ、製造終了のお知らせ、事業廃止のお知らせ、生産中止のお知らせ、販売終了のお知らせも記載すべき事項には違いはなく、タイトルを変更することで使用できます。ここではメーカー、製造元が発行する廃番通知を例に紹介していきます。
なお、業界によっては廃番通知、製造廃止、ビルドアウトレター(英語:Build out letter、自動車業界)といった言い方もなされます。
- 廃番のお知らせ例文|目次
廃番の定義
まず、廃番(読み方:はいばん)とは特定の製品を完全になくすことで、製造廃止ともいい、発行するメーカーや商社、販売店から今後供給できなくなることを意味します。
メーカーにおいて製造しているすべての物品は、品番や製番(製品番号)、型番(型式番号)といった固有で一意の番号が付けられています。微妙な仕様・スペックの違いがあっても、この番号が違えば別の種類の品物、ということになります。裏返すと、この番号は製品の種類を特定するための番号ということになります。
廃番はこの番号をなくすということなので、その種類の製品は製造せず、管理もしない、ということになります。
何らかの事情で製造を廃止するときに発行
メーカーにお勤めの方においては言わずもがなですが、採算が合わなくなったり、製造コストが上がってしまったり、あるいは陳腐化してしまって思うように売れなくなってしまった製品をいつまでも供給可能な状態を維持するというのは予想外にコストがかかります。
ほとんど使わないとしても金型や設備の保管場所確保やその管理費用、メンテナンスコスト、これら製造設備・ジグ・道具等が専用品であればそれらの交換部品の調達管理、製造指示書や検査指示書といった指示書類の維持管理、人員の確保、受注できる状態にしておくための各種マスタの管理等、売れないものや採算のあわないものを残しておくだけでかなりのコストがかかってきます。
したがって、量産で定期的に製造・出荷していた段階が終わると、なるべく早く廃番にしていくことが製造コストの面では重要となりますが、一方で客先となるユーザーのニーズもありますので、自動車部品のように量産終了後に10数年〜30年近く供給が必要となるものや、法令で一定期間供給が義務付けられているものもあります。こうした規制や商慣習に抵触しないのであれば、採算の合わなくなったものは可能な限り廃番にしていく必要があります。
また、採算のほか、使用している特定の部品や材料が入ってこなくなって物理的に作れなくなってしまう、あるいは作れる工場が閉鎖、特定の技能を持った職人がいなくなる、といった理由での廃番もあります。
発行前の確認事項
廃番を社外へ連絡する際は社内で以下を検討のうえ実施するとよいでしょう。
- 代替方法はないか。値上げ等により廃番にしないで欲しいという要望があった場合はどうするか。
- 廃番により取引契約上の問題や法令上の問題は発生しないか。
- 取引先から「困る、廃番時期を延長してほしい」と言われた場合、どこまで対応の余地があるか。
- 廃番を通知する先との取引関係にどのように影響するか。今までの商習慣上、可能なことか。他の商材との売買にも影響するか。
- 連絡方法はどうするか。取引先との関係によっては書面送付で終わり、ではなく営業担当が書面を直接持参して、説明すべきか。
- いつから廃番にするか。取引先が複数ある場合、在庫の振り分けはどのようにするか。営業担当ごとに得意先を訪問し、廃番の期日を個別調整するか。
廃番のお知らせに記載すべき事項
廃番の連絡にあたっては、正式なお知らせ、レターを取引先宛に発行することになります。発行文書には責任者や社印の押印があったほうがよいでしょう。
廃番製品の詳細
廃番される製品の正確な名称、製番、品番、型番を記載します。
廃番の理由
製品が廃番になる理由を説明します。これには、技術的な問題、原材料の入手困難、市場需要の変化、採算の悪化、製造が困難になる理由等を記載します。廃番がもはや自社努力で避けられず、不可避になったことを明確に記載します。お知らせにはあまり細かく記載せず、実際の面談の際に詳細を話す形がよいでしょう。
実際にありのままを記載するかどうかはさておき、廃番となる理由は一般的には下表のようなケースがあります。
理由 | 内容 |
---|---|
技術の陳腐化 | 製品の技術が古くなり、市場での需要が低下した場合 |
部品や原材料の入手困難 | 製品の製造に必要な部品や原材料が入手困難になった場合。部品や原材料の価格の上昇や供給の不安定性がこの問題を引き起こすこともあります。 |
製造上、品質上の欠陥問題 | 製品の製造上の問題や品質上の欠陥が発見された場合、製品を廃番することがあります。通常は改良によりしのぎますが、新たに製品を作ったほうが良い場合は特定の型番や品番を廃番にすることがあります。 |
製造困難な問題 | 職人技に頼る、特殊な設備に頼る等の場合、それらの目途がつかなくなると製造ができなくなります。慢性的な人員不足といった経営問題も含まれます。 |
取引上の問題 | 重要な取引先からの断れない仕事が入り、現行の型番をやめないと製造が困難となるような場合に検討されることがあります。 |
市場需要の変化 | 市場の需要が変化し、製品の需要が減少した場合で、一定の生産数を確保しないと採算が合わない場合、製品を廃番にすることがあります。競合他社の製品や新しい技術の登場によって、市場需要が変化することもあります。 |
経営上の問題 | 経営判断から当該製品の供給から事業撤退する場合も廃番となります。 |
法的な問題 | 対象となる製品が特許侵害や規制違反などの法的な問題を引き起こす場合、製品を廃番にすることがあります。法的な問題が解決不能な場合、製品を継続供給することが困難になるためです |
経済的な要因 | 製品の製造や販売が経済的に非効率である場合、製品を廃番することがあります。製品の製造コストが極端に上がって採算が取れなくなる、合理的な値上げが不可能な場合や販売価格が市場で競争力がなくなる場合などが該当します。 |
廃番日
製品の廃番が発効する日付を明確に示します。記載方法にはいくつかパターンがあり、最終注文日を記載する方法、最終納期で記載する方法、在庫無くなり次第と記載する方法等があります。製品によっては廃番前に客先からの駆け込み購入により需要増となることがありますが、そうした注文にも応えられるか事前確認が必要です。発注数に上限を設定したり、顧客ごとに調整することもあります。
いつから供給できなくなるかを明記しますが、取引先や製品によってはその期日で終わることができない場合もあり、個別に取引先と調整します。ただ、通知では一律に、まずは供給が終了する年月日を記載します。
代替品や類似品、製品のアップグレード情報: 顧客が代替品を検討できるように、可能な場合、廃番製品の代替品やアップグレードオプションに関する情報を提供します。ない場合は記載しません。また影響があまりに大きい場合は、取引先を通じて、事前に競合他社からの供給調整を行うことがあります。
在庫情報
供給品が単独の取引先向けの場合等では在庫情報を記載する場合もありますが、廃番のお知らせでは記載せず、面談で個別調整時にやり取りすることが多い内容です。
連絡先情報
客先からの問い合わせを受ける連絡先を記載します。通常、営業担当者の連絡先となります。
廃番のお知らせの例文
下記にテンプレート、例文をご紹介します。
2024年3月24日
取引先各位
といし製造株式会社
東京都○○区〇〇〇 〇−〇〇
営業本部長 山田一郎
廃番のお知らせ
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、このたび弊社の下記製品が部材調達難により製造困難となり、誠に勝手ながら廃番とさせていただきたくご連絡申し上げました。部材については複数の代替メーカーと交渉を継続してまいりましたが、価格・仕様ともに現行品の品質を維持できず、お客様には大変ご迷惑をお掛けしますが、何卒ご理解賜りたくお願い申し上げます。代替製品および後継品につきましては当社営業担当より個別にご案内させていただきます。
敬具
記
廃番対象品:ダイヤモンドドレッサー AGH300
廃番日:2024年7月1日以降の御注文から在庫無くなり次第
連絡先:
営業本部 酒井太一 電話:〇〇〇−〇〇〇−〇〇〇〇 e-mail: 〇〇@〇〇.co.jp
以上
廃番連絡後の動き
多くの製品、特に生産や製造に使用するものの場合、廃番を行うと後工程の客先が製品を作れなくなりますので、取引契約上の問題がなくとも、すんなり廃番を受け入れられないケースが多々あり、特に廃番期日については交渉が発生することが多いです。
営業担当が廃番が不可避であることを説明し、誠意を尽くして交渉することが重要ですが、今後も継続取引を前提とした客先へ損害を与えることは本意ではないはずなので、在庫を作りだめて、客先が代替材を確保できるだけの日数を稼ぐ等の措置を講じることが必要です。
特に、短納期での廃番のお知らせはトラブルになりますので、客先の需要動向や客先側の業界の商慣習(材料や部品を変更するのに製品評価を行い、その先の客先の承認や認証試験合格が必要となる業界もあります)をよく調べたうえで廃番の期日を設定する必要があります。
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