自動車部品における通い箱|通い箱の規格、サイズ、種類など
通い箱の意味は、製品の納入などに際し繰り返し使うことのできる箱といったもので、自社と客先との間を行ったりきたりするため「通い箱」と称されています。ちなみに英語で通い箱は、returnable boxともいいますが、単にplastic boxなどと材質を示す用語で呼ばれることもあります。通い箱の価格はひとつ数百円程度ですが(大きさにもよります)、とにかく使われる量が多いため、使い終わった空箱を必要とされる場所へすみやかに返却されていく仕組みを作っておかないと膨大なコストとなり、実際問題、自動車部品メーカー各社の物流担当者が頭を悩まされているのがこの通い箱が不足する問題です。不足するたびに購入していたのでは、資金がいくらあっても足りません。
自動車業界や自動車部品業界では、部品・製品の納入に通い箱が使われることが一般的です。これは大量の部品を日々納入することから、こうした毎日の大量納入品をダンボール梱包で行った場合、廃棄コストやダンボール梱包と開梱の手間がかかることから、ほとんどの部品でプラスチック製の通い箱を中心とした梱包がなされています。なかなか他業界では想像がつかないかもしれませんが、自動車部品の世界はとにかく「量」が多く、品種も非常に多いです。納入を一度にまとめて、というよりは毎日、あるいは一日のうちに何度も分けて、そのときに使う分だけ納入するというのがトヨタ殿の基本スタンスでもあるため、とかく多くの通い箱が流通しています。
通い箱は、客先によって使う種類、色やサイズが指定されているケースもあります。一般には、通い箱の側面部には自社の社名を入れ、自動車業界固有の「カンバン」と呼ばれる札をさしこめる「カード差し」が通い箱の側面部にはつけられています。カンバンは、中身の取り違えや個数間違えなどを防ぐために必須のもので、工場の中で部品を移動させるときにも、工場内での専用カンバンがよく使われます。出荷されるときには、出荷用のカンバンにまた差し替えられ、バーコードや目視照合などで中身の確認も行われます。破損のしやすい部品に対しては、通い箱の中にさらに中敷や仕切りなどを入れて輸送中の部品の揺れを抑える工夫もなされます。
自動車業界でも最もよく見られる通い箱は、サンコー(三甲株式会社)のTP規格の箱です。プラスチック製の箱が一般的で、段積みが可能です。使わないときは方向を変えると入れ子状態にして収納が容易になるものもあります。金属製の部品等には、鉄箱や鉄缶と呼ばれるようなスチール製の大型の入れ物が使われることもあります。
通い箱の種類 | サイズ |
---|---|
TP332 | 335mmx335mmx195mm |
TP332.5 | 335mmx335mmx241mm |
TP331 | 335mmx335mmx103mm |
多くの自動車部品は工場を出る段階で、通い箱につめられており、通い箱をパレット状態に積み上げたものをリーチリフトで所定の場所まで運び、カウンターリフトでトラックの荷台まで運び入れて客先へ搬送されます。ただし、客先へ直接納入しているような場合でも、大量の部品を毎日指定された時間に複数回納入することが求められるため、デポを使うことも一般的です。中継地点に、専用の倉庫を設け、大量の部品をいったんそこに集めて各客先へタイムリーに配送する仕組みです(中継多回納入と呼ばれることもあります)。
「使う分だけを指定された時間に納入する」というのがトヨタ殿の基本方針ですが、これに効率的かつ確実に対応するためには中継地点や在庫について各工程ごとに適正な管理を行う必要があります。自社で製造している部品の部材すべてにおいて同じように使う分だけを納入してもらうということが可能であれば、輸送リードタイム分程度の在庫でも何とかなることもありますが、トラックの便数とルートも考えると、こうした納入にはどうしてもデポを効率的に用いる必要があります。
通い箱は段積みできるように設計されており、製品を入れて、通い箱をパレット上に並べて段積みしていくと綺麗な積みあがるようにできています。ただし、最上部にはフタがないため、輸送時に部品が飛び出したり、他の部品、たとえばほかの部品が入ってしまったりという問題もあるため、独自のフタをつけて運搬されることもあります。雨天時にも、雨除けがないため、ビニールなどで覆うなどの工夫が必要です。雨で濡れたものをそのまま納入することは基本NGです。通い箱は隙間からの雨濡れには弱く、個別にフタなどをして各社工夫していますが、雨濡れを防ぐには屋根のある場所で荷卸しをはじめとする一連の作業を行い、積み重ねた通箱のパレット全体にビニールカバーをかけたり、といった対策が必要となります。
何度も使えるメリットがある反面、物流上は空箱の取り回しをうまく行わないと箱がどこかのデポや工場に滞留して必要な時に使うことが出来ずに不足する、余分な通箱を購入しなくてはならないといった問題も発生します。ともかく、自動車分野では量産供給を前提とした納入方法を検討する必要があり、荷姿の設定如何ではその後の取り回しやコストにも大きく跳ね返ってくることになります。
また、通い箱には中敷が入れられることもあると述べましたが、基本は油や液剤、薬剤などが塗布されている部品がそのまま箱に入れられるため、箱にこうしたものが残っている場合、洗浄が必要となります。これらを行う場合、空箱を選別する場所をどこかのデポに設けて、そこで洗浄までして空箱が返却される仕組みを作る必要もあります。
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