一個流しのメリットと反対の生産方式

2023年7月23日更新

一個流しとはトヨタ生産方式において工程間の部品の受け渡しをロットではなく、1個ずつにすることを意味しています。英語では一個流しの生産をone-piece-flow manufacturingといいます。その目的は在庫の滞留を抑制して、工程の流れ化(製品・材料の停滞をなくしてスムーズな流れを作る)を実現することにあります。これには一体どういうメリットがあるのかといえば、一個流しができるということは後工程が必要とする物だけを前工程が流すことができるようになるので、仕掛品をまとめて作って工程内の在庫として停滞することが無くなります。また、まとめ生産にかかる余分な工数を削減できるので、生産にかかるリードタイムが短縮できます。

一個流しの反対をやるとどうなるか

一個流しが手放しですべての製造現場に適用できるかというとそうでもありません。作るものによってはこの方式はそぐわないこともあるので、あえて採用しなかったり、部分的に採用したり、使える部分だけを使ってみたりといった検討も場合によっては必要となります。

平準化生産を行うためには、この一個流しに近いことができないと実現が難しくなります。

一般に製造工程は多数ありますので、一個流しの反対ともいえるロット流しやバッチ方式での生産をすれば、工程間で作れる量が違うのでそれぞれの工程で材料在庫を抱えることになります。

多くの製造現場では工程ごとにある程度の生産ロットが決まっています。例えば、最低でも1時間作業しないと段取り替えして次の製品の生産には取り掛かれないという製品があった場合、その1時間で作れる個数がロットになります。

あるいはもっと直接的に、設備へ材料を投入できる最小の量が決まっているという場合や、それ以上量を減らして作ると、製造原価が上がりすぎてまともに利益が出なくなる、といような場合もあるかと思います。

仮に、ロットでのまとめての生産を毎日行うとしても、一定の在庫が各工程に常時残ってしまうと、これらは余分な仕掛在庫として停滞することになります。無理に後工程に作らせると、最終的には完成品置き場もロットで作ったものが注文を受けて出荷されるまで滞留しますので倉庫があふれかえってしまいます。

工程内に在庫ができてしまうと、場所を食うので、工場内の生産に使える設備が置ける場所は減り、単位面積当たりで見た場合、工場が稼げるエリアが減ってしまいます。この余剰在庫はすぐにはお金にならず、工場としてはいいことはありません。とはいえ、前述した通り、生産できる最小ロットが設備やコストの関係で決まっている場合、容易に崩せないという問題があります。

一個流し生産のメリットとデメリット

以下に、一個流し生産におけるメリットとデメリットを箇条書きで列挙していきます。

メリット

  • 工程内在庫が停滞しない。最小の在庫で運用ができるため、材料の仕入れから生産のムダ、在庫のムダ等を無くせる
  • 生産のリードタイムが短くなる。生産コストが下がる。
  • 市場の変化への即応性に優れ、多品種少量生産に適している。

デメリット

  • 解決能力が低いと設備停止等が起きるたびに生産がすぐに止まる
  • 後工程の情報の精度が悪いと生産に対応できない
  • 1個ずつ生産すると生産コストが極端に上がってしまうものがある
  • 後工程に1個を流すのはよくても、ロットでしか作れない工程には必ず在庫が残って滞留する
  • 後工程から1個の注文をもらうということは、前工程に対しても1個の注文ができるという前提が要る。発注先に対して力関係からロットでしか売ってもらえない場合は自社のどこかの工程で在庫をもつしかない

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