多回納入の意味とは
多回納入とは、納品の頻度が1日に複数回あることを意味し、自動車メーカーの場合、多い場合であれば1日24回、1時間ごとに納入日(納入時間)が設定されていることもあります。自動車メーカーだけでなく、部品メーカーの製造工程でも広く取り入れられている納入方式です。
これは納期(指定の期日までに納入すればよい)という契約ではなく、納入日・納入時間(指定された日の決められた時間帯に納入すればよい)での契約を前提とした慣習です。
多回納入は在庫を圧縮させるため
一体なぜここまでシビアな納入時間をコントロールをしているかといえば、在庫を圧縮させるためです。在庫を多く持つと、在庫を購入する資金がより多く必要になるだけでなく、それだけ巨大な倉庫が必要となり、在庫を取り出して生産ラインへ供給する手間もかかります。
自動車の場合、細かいところまで分解すると約3万点前後の部品から成り立っていますが、車両を組み立てる自動車メーカーの主力工場は、ある程度のユニットやかたまりで発注を掛けるので、自動車の組み立てに使用する「部品」という意味ではもう少し数が減りますが、それでも膨大な部品を取り扱うことになります。
自動車部品の場合、1日1回の納入や前倒しの納入も認めてしまうと、補充されるまでの期間を含めた在庫を持つことになりますが、その量や種類がきわめて多いのが難点です。小さな部品ばかりではないので、場所をあらたに確保しそこからの輸送も検討しなければならなくなります。
そこで、生産計画上、ある車種の組み立てに使う時間ジャストに部品が入ってくれば、在庫は極力持たず、部品を置いておくスペースも最小限ですませることができます。これを実現するために工夫されてきたのは多回納入であり、かんばん方式の納入です。
これら部品を例えば1日分すべて持つだけでも多くの敷地面積と倉庫が必要になります。
工場は生産する設備を置き、その稼働率をあげることで単位面積あたりで生み出せる利益を上げることができるので、在庫を置いておく場所を増やせば、それだけ利益を生み出す「場所」を減らすことになります。一方で外部に倉庫を借りれば、その費用と倉庫から工場への輸送費(いわゆる横持ち費用)もかかります。
多回納入にも難点があり、容易に想像がつく通り、納入する側にとっては一定数の在庫を客先の納入場所からそう遠くないところで保有しながら注文を受ける必要があります。注文を受けてから作ったのでは当然間に合わず、デポに回転在庫を持ち、在庫が減ったら補充する形の運用が必要になることが多いといえます。
また、時間で細かく指定されていても、受け入れ側の設備トラブル等が発生すれば、前の時間に入荷した部品が使われずに滞留している中、次から次への部品が時間置きに入ってくるので、受入れ場所がパンクしてしまいます。
この辺りは納入される側としてはスライド納入の指示を出すことで受入場所があふれてしまうリスクを回避しますが、今度はいざ元に戻す際に、指示がうまく受け取られないと納入遅延を引き起こすことがあります。
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