トヨタにおけるVLTの意味とは

2021年8月22日更新

VLTはトヨタで使用される略語で、英語でいうVehicle Integrated Control Linkage Tapeのうち、「Vehicle Linkage Tape」のアルファベットをとったもので、自動車の製造日程情報を意味しています。どの製造ラインでどの車種をどの直で何台作る予定か、ということがわかります。VLTが出れば、それに連動して必要な部品がいつ何個必要かもわかります。計画段階のものと区別して実際に生産する台数が決まったものは「確定VLT」と呼んだりもします。

サプライヤーに対しては、VLT情報は内示変動に対応するために用いられる情報で、通常トヨタの場合、月末から6稼働日前に月間内示情報が展開されるものの、小刻みな計画変更もあるため、計画変更処理が実施され、計変情報(計画変更情報)として各サプライヤーに情報が伝達されます。この計画変更処理が何らかの事情で実施されない場合は、VLT情報がトヨタから発信され、各サプライヤーで計変情報の情報源として活用されることがあります。

月間の内示が出た場合、サプライヤーは通常それを稼働日で割ってパー割にして日々発注(かんばん)が飛んでくると想定して準備を行っていますが、昨今の自動車を取り巻く市場の需要変動やサプライチェーンの複雑化等各種の要因で1か月分の生産台数を完全にフィックスできるわけでもないため、適宜修正が行われます。この際、サプライヤーに対してVLT情報が展開されると、部品供給計画の軌道修正も行うことができるという寸法です。

自動車部品のサプライヤーに対しては、トヨタはかんばん方式での発注を行いますので、原則、実際に生産した分の発注をかんばんを通して行います。ごく簡略化して言えば、部品が入っている箱にはかんばんが付けられており、生産で使って箱が空になるとかんばんも外されて、その外れたかんばんが製造元へ発注情報として飛んでいく、ということになります。生産数が一定していれば、一定の発注が飛んできますが、作る量が急遽変更になると、発注量も急に変わります。例えば月に4000個、20稼働日であった場合、毎日200個供給する計画を立てることになりますが、これは毎日200個生産ラインで使用されることで実際に発注されることになるため、ある日の使用量が300個に増えると発注数も変わってきます。

かんばんは前日や当日にくるものもあるため、サプライヤーや内示情報をもとにあらかじめ材料・製品を準備しておく必要があります。トヨタとの取引の多いサプライヤーは、平準化生産を取り入れていることが多いため、VLT情報をもとに適宜生産計画を修正しないと、供給までのリードタイムがきわめて短いので納入に支障をきたす恐れがあります。VLT情報の展開は、部品供給を安定させるための仕組みの一つとも言えます。

とはいえ、トヨタ生産における内示と実際の確定のブレや変動というのは、カーメーカーのなかでは断トツに少なく安定したものとなります。トヨタ系列との取引に慣れた自動車部品メーカーが他メーカーと取引開始すると内示変動が大きすぎてついていけないといったトラブルになることがあるほどです。

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