プリンシパルとはどのような役職か

2022年5月23日更新

ビジネスにおいてプリンシパルという役職を名刺等でも見ることがありますが、これに相当する日本語の役職としては何を意味しているのでしょうか。実はこの役職は会社によって職位の定義・意味や位置づけが少々異なっています。英語のprincipalというのは、一般には校長(その学校の責任者)のことを意味しているのですが、相手が教育関係でなければ、この日本語訳は当てはまりません。また昨今ではビジネスにおける役職と学校責任者を区別するために、school principalと表現することもあります。

プリンシパルの意味

二大英英辞典のひとつであるミリアムウェブスターでは、プリンシパルの意味のうち、人のポジション・立場や役職を指定する用法として以下のような用法を例示しています。

管理権限や指導的地位にあるトップや首位者のこと。例えば、教育機関のCEO(最高責任者)、最終的に法的義務を負う人、犯罪における主犯、エージェントに管理・指示を依頼する人(仕事を委託する依頼人のこと)、一流のパフォーマー(スターパフォーマー)。

例えばバレエではバレエ団の最高位としてprincipalの称号が使われており、上記の用法にも適合します。

また、agent(エージェント)へ仕事を依頼する人のことをprincipal(プリンシパル)と呼ぶ使い方があります。株主(プリンシパル)と経営者(エージェント)、経営者(プリンシパル)と労働者(エージェント)といった具合で、経済学におけるプリンシパル=エージェント理論として研究対象になっています。

ここでは「管理権限や指導的地位にある役職」としての用法になります。以下に実例を踏まえて考察してみます。

経営層、部長級、課長級、上席等意味の幅は広い

役職としてプリンシパルのカテゴリーを設けているのはほとんど外資系やそれに類する企業で、特にコンサルティングファーム等のファーム系が多いです。こうしたファームではトップのことをパートナーといい、これはいわゆる共同経営者に相当するものです。

日本でも弁護事務所で、パートナー弁護士という言い方はだいぶ定着していますが、それと同じ用法で「雇われ」ではなく、経営者の構成員ということになります。このパートナーの用法については多くのファーム系の企業でも意味が同じで、ほぼぶれることがありません。一方、プリンシパルとなると途端に違いが出てきます。

プリンシパルをこのパートナーと同種の役職として設定している会社と、パートナーのひとつ下の階級に設定している場合、ディレクター(部長)クラスとして設定している場合、課長級として設定している場合、それぞれの職位カテゴリの中での上位や首位であることを示す場合、シニア〜、上級〜という言葉の代わりに使われていることもあります。最後の用法はいわゆるプリンシパルディレクター、プリンシパルエンジニア、プリンシパルコンサルタントといった用法で、職位内の上位であることを示す用法です。

以下に、経営陣を頂点としたプラミッド型の組織図のパターンを簡易的に表記した場合、プリンシパルの位置づけは下図の例では、黄、緑、オレンジのそれぞれで全く異なるものを意味しています。

プリンシパルの役職の位置づけと意味

この例では、最左ではプリンシパルを経営層の役職と定義しています。真ん中はパートナーの直下にいる部長級を意味しており、この場合でもディレクターとプリンシパルディレクターで分けるケースもあります。いわゆる上席執行役員と執行役員の違いのようなものです。最も右側の例では、課長級の中のポジションとして意味付けしています。さらにいえば、この図にはありませんが、係長級に相当するシニア〜という職位のかわりに、プリンシパル〜という役職名にすることもあります。

本当の序列を分かりにくくする意図があることも

役職名において序列を設定するのは、組織のありようのひとつの形でもある組織内序列の独自文化を作りたいということもありますが、階級を細かく設けることで人をうまく活用したいというのが本音のところかと思います。

もちろん、階層構造を設けて管理やガバナンスをしやすくする、モチベーションを維持する、給与体系を組み立てやすくするという実利上の理由もありますが、昨今は細分化しすぎた役職やどちらが上なのか、端的に言って権限の上ではどちらがえらいのか良く分からない役職が多数生まれており、こうした分かりにくい用語や独自名称、独自定義を入れるとさらに細かい役職設定を行うことも可能です。

役職名をどうするかについては法令上設定が必要な部分を除き、各企業の自由であるため、諸外国やコンサルティングファーム流の名称にすることも可能です。

なかには特定の階層に人が多すぎてしまい、序列をつけざるを得ないが明確にしてしまうと角が立つというようなケースで組織内の軋轢を最小にしつつ、その人にふさわしいポジションを準備するという観点から無理やり設定されているケースもあります。

日本語でも、部長、副部長、部長代理、部長補佐、担当部長といった階層や、上席、上級、主席等の用法を付けて差別化をはかっている例は多々あるかと思います。

対外的に少し序列をぼかしたいような場合にも便利な用法といえますが、受け取ったほうはなかなか解釈が難しく頭を悩ませることになります。

もっとも明確に序列がある場合でも、例えば以下の役職の上位下位はどの会社でもどの組織でも同じなのかという問題もあります。どれも日本語ではポピュラーな役職名です。

  • 支社長
  • 所長
  • 部長
  • 統括部長
  • 事業部長
  • 支部長
  • 工場長
  • 事務局長

いずれも所管する組織の長であることに違いはありませんが、序列については一般論としては言えても、実情は組織ごとに異なる、というのが正解ではないでしょうか。

プリンシパルについても同様のことが言え、事例の面では幹部級であることを示すことが多い役職ですが、その中での権限については組織図が公開されていない限り厳密には分かりませんので、打ち合わせや接待、歓談等の席で情報収集しつつ推し量っていくしかないと思います。

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