黒皮とミガキの違い|s45cやSS400における黒皮材とミガキ材

2015年10月13日更新

主要な用途で使われる鉄鋼材料としては、s45cやSS400、SPCCなどがあり、これらの名称は鋼材を発注する際にも使われます。ただ、鋼材を購入する段階では「黒皮材」か「ミガキ材」かを指定しないと、黒皮材が届いてしまい、そのままでは加工に使うことができなかったり、余分なブラストや研磨、研削などのコストがかかってしまうことがあります。

黒皮材とは、鋼材の表面に黒色の酸化鉄を残した状態のままの鋼材のことです。鉄鋼材料は、通常、その出自が「熱間圧延」と「冷間圧延」のものに分かれています。熱間圧延のものは、鋼板などを製造する際に、900℃以上の高温化で鉄を加工していくもので、残留応力が残りにくかったり、鉄がやわらかい状態で加工する為、加工性がよかったりといったメリットがある反面、鋼材の表面が酸化して黒くゴツゴツした凹凸のある面に仕上がってしまいます。またボロボロと表面がはがれてくることもある為、錆から防ぐ酸化膜があるといっても、防錆の目的でこのまま使われるということもありません。防蝕が必要な場合、ブラストなどで黒皮を落としたうえで塗装がしっかりなされることが一般的です。こうした事情のため、寸法精度が必要な用途や、見た目が重要視されるような用途には不向きで、薄い加工にも向いていません。

建材をはじめ、他の鋼材と溶接させる必要がない場合や、塗装の必要がない場合などにはそのまま使われることもありますが、基本的にはブラスト処理などで黒皮を剥がして使います。コストが安く、ある程度の黒皮は通常の環境下では防錆の効果も若干あるため、表面処理なしで使われることもあります。

一方、ミガキ材は冷間圧延加工されたものとなります。その名の通り、磨かれたかのようなきれいな表面をしており、精度もある程度出ています。一旦、熱間圧延加工されて作られた鋼板や棒材を、冷間圧延加工によって再度加工していくため、表面に黒皮(黒錆)がありません。多くは引き抜き加工されたもので、みがき棒鋼などの規格品については、研磨品や切削(バイト等)品もありますが、コスト高となるため少数です。板材のミガキといった場合は、通常、研磨処理はなされていません。s45cやSS400にはミガキ材と、黒皮材の別がありますが、SPCCは冷間圧延鋼板の規格材であるため、基本、ミガキ材しかありません。コストが黒皮材よりも高くはなりますが、黒皮材を使えるように加工するコストと時間を考えると必ずしもミガキ材のほうが割高というわけではないこともあります。

黒皮材とミガキ材の双方のグレードが存在する鋼材を選ぶ場合は、加工用途や、コストなどを検討の上、選択することになります。

黒皮とミガキの違い
ミガキ材 黒皮材
冷間圧延加工。きれいな表面で、凹凸もなめらかで寸法精度の高い加工に向いている。コストは黒皮材よりも高い。冷間加工品全般に言えるが、金属に力を加えると起きる加工硬化や、加工時に内部に残ってしまった力である残留応力の影響などを加味しなければならないこともある。SPCCは冷間圧延品なので、ミガキ材。 熱間圧延加工。表面がミルスケールとも呼ばれる黒錆で覆われている。ブラストなどで表面の黒皮(黒錆)を落として使う。表面の凹凸があり、ボロボロしているため、精度のよい加工には向かない。I形鋼やH形鋼などの建材用途の物は、黒皮材しかない。s45cやSS400などは黒皮材とミガキ材の双方が流通している。

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