特殊用途合金鋼ボルト用棒鋼|JISによるSNB21、SNB22、SNB23、SNB24の規格
ボルト用に規格化されている合金鋼として、JISではSNB21、SNB22、SNB23、SNB24の4種類があり、それぞれについて機械的性質ごとにSNB21-1やSNB23-1、SNB23-3、SNB24-3、SNB24-5といった細分ごとに材料記号が分かれています。1種あたりに対して、1号から5号の細分があるので、細かく言えば、合計20種類あることになります。
もともとは原子炉、原子力発電設備等に用いる特殊用途のボルトを想定したものであり、汎用的に目にする材料とは異なる鋼材です。強度区分が12.9のボルトでもこの材料を素材にしているものを見ることは稀です。
鋼材そのものがクロムモリブデン鋼、クロムモリブデンバナジウム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼といった高価な材料でもあり、ボルトとして使うには用途を選ぶ鉄鋼材料といえます。ほとんどの用途ではオーバースペックとなるほどの性能を持ちます。他に、ボルト用の合金鋼材としては、高温用を想定したSNB7、SNB16、SNB5などの鋼材がJIS規格にはありますが、こちらはボイラーなどの高温環境における用途があるため、本規格のSNB材よりは目にする部類かと思います。
ボルトとして使われる鋼材はSS400、S20C、S45C、SWCHなどの炭素鋼系の汎用材料からSCM435、SCM440といったクロモリ鋼、SNB7などの高温用高強度合金鋼などがありますが、その中でも本規格が対象とする材料は、最低の引張強度が1000MPaを超えるものが少なくなく、加えて鋼材成分の特殊性から一般的なボルト材ではありません。
用途が原子力設備を想定していただけに、成分や機械的性質の規定だけでなく、衝撃に対する強さをみるためのシャルピー衝撃試験も−12℃という厳しい条件で行うことになっています。さらに、通常の鉄鋼材料の規格であれば寸法や許容公差だけでの規定となりますが、このボルト用合金鋼では、表面のキズの深さについても許容限度がmm単位で設定されています。外観について問題ないこと、とする材料規格は多いですが、傷の深さやその最大値についてまで規定するものはあまり多くありません。
ここまでの性能や強度を求められるものは限られてきますが、逆に他の鋼材ではスペックが足りないと言うような状況では威力を発揮する鋼種といえます。
ボルト用合金鋼の傷深さ
高強度用のボルトとしての棒材であり、表面のキズ深さについては下表のように取り決められています。
合金鋼の径(mm) | 呼称寸法からの傷深さの許容限度 |
---|---|
16mm未満 | 呼称寸法の4%以下、但し、最大でも0.5mmまで |
16mm以上50mm未満 | 呼称寸法の3%以下、但し、最大でも1.0mmまで |
50mm以上100mm未満 | 呼称寸法の2%以下、但し、最大でも1.5mmまで |
100mm以上 | 呼称寸法の1.5%以下、但し、最大でも3.0mmまで |
ボルト用合金鋼の長さや径などの寸法の許容差
SNB21、SNB22、SNB23、SNB24について、いずれも長さや直径の許容公差としては以下の基準が用いられます。
径(直径)の許容差 | ±1.5%、ただし、最小値は0.4mm。 |
---|---|
偏径差 | 径の許容差範囲の70%以下 |
長さの許容差(7メートル以下) | +40mm, 0mm |
長さの許容差(7メートルを超えるもの) | 長さ1メートル(あるいはその端数)を増すごとに+40mmに5mmを加算。ただし、マイナス側の許容差は常に0mm。 |
曲がり | 1メートルについて3mm以下。全長に対しては、「3mm x 長さ/1m」以下 |
「JIS G 4108 特殊用途合金鋼ボルト用棒鋼」に規定のある材料記号
スポンサーリンク
>このページ「特殊用途合金鋼ボルト用棒鋼|JISによるSNB21、SNB22、SNB23、SNB24の規格」の先頭へ
- 加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る
- ボルトの強度区分について
- 強度区分ごとの材質|3.6、4.6、4.8、5.6、5.8、6.8、8.8、9.8、10.9、12.9に使われるボルト鋼材の種類
- 高温用合金鋼ボルト材の規格|ボルト用SNB鋼材の材質、機械的性質、成分、寸法公差
- SNR鋼材、建築構造用圧延棒鋼の規格|アンカーボルトに使われるSNR
- クロムモリブデン鋼鋼材(SCM材)の用途、機械的性質、成分の一覧
- ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材(SNCM材)の用途、機械的性質、成分の一覧
- 一般構造用圧延鋼材(SS材)
- 鉄線と鋼線の規格|鉄線と鋼線の違い
- SWCH(冷間圧造用炭素鋼線)の材質、機械的性質、成分について
- 炭素鋼と合金鋼の違いと使い分け
- 軟鋼
- 金属の疲労強度、耐疲労性
- 金属の靱性、ねばり強さ(靭り強さ、粘り強さ)
- 冷間加工と熱間加工の違い
- 鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、鋳鉄、超硬の熱膨張係数
- 金属の熱伝導率の一覧表
- 鉄鋼材料、鉄、炭素鋼、工具鋼の比重
- 鉄鋼、炭素鋼、鋳鉄、純鉄、ステンレスの熱伝導率
- 鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、ハイスの比熱
- 鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレスの電気抵抗
- 金属単体の比重、密度の一覧表
- 金属の融点、沸点の一覧表
- 金属の熱伝導率の一覧表
- 金属材料の硬度の一覧と比較
- 合金元素の果たす役割