ボイラ・熱交換器用合金鋼鋼管|STBA鋼管の特徴と種類
鋼管に合金鋼が用いられるケースは、炭素鋼に比べて特殊な場合が多く、ほとんどは炭素鋼の代替としてではなく、固有の合金鋼でしか仕様を満たすことができない環境での利用というケースになります。一般的には、炭素鋼鋼管では要求を満たせない高温圧力が想定されるような場合です。あまり市場に出回っている鋼管ではなく、合金鋼の価格のこともあり、汎用的な鋼管ではありません。
熱伝達用の合金鋼鋼管としてJISで規格化されているのは、モリブデン鋼とクロムモリブデン鋼の二種となり、規格材料としては、8種類が存在します。
いずれもボイラーや化学工業、その関連設備・類似設備での利用が想定されたもので、用途としては、水管、煙管、過熱器管、空気予熱器管、コンデンサ管、触媒管、コンデンサ管等です。熱の伝達を担う部分であり、管の内側、外側ともに高温になることが多い用途です。
この合金鋼鋼管で使われているモリブデン鋼、クロムモリブデン鋼ともに高温強度が高く(高温環境でも強度が低下しにくい)、靭性や機械的性質にも優れています。
また、合金鋼は炭素鋼に比べて、寸法効果が小さくすむ為、大型の部材などでマスエフェクトの影響を最小限に抑える必要がある場合にも検討されることがあります。
熱伝達用自体がボイラー等に使われることもあり、仕様の厳しいものとなりますが、規格にて規定されている内容としては、鋼種ごとの熱処理や製管方法、成分、機械的強度(引張強さ、伸び、耐力、降伏点)、扁平性、押し広げ性、展開性、水圧試験特性、非破壊試験特性、寸法、質量、許容公差、外観、分析方法、硬度、高温引張試験における降伏点、超音波探傷試験、渦流探傷試験など多岐にわたります。
汎用的な構造用鋼管にはないスペックが要求されますので、こうした部分は自ずとコストにも跳ね返ってきます。性能を見極め、効果的に活用したい材料です。
「JIS G 3462 ボイラ・熱交換器用合金鋼鋼管」に規定のある材料記号
スポンサーリンク
>このページ「ボイラ・熱交換器用合金鋼鋼管|STBA鋼管の特徴と種類」の先頭へ
- 加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る
- STB鋼管|ボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管の種類と特徴
- STB鋼管(ボイラー・熱交換器用炭素鋼鋼管)の重量
- ボイラ及び圧力容器用炭素鋼及びモリブデン鋼鋼板(SB材、SB-M材)
- クロムモリブデン鋼鋼材(SCM材)の用途、機械的性質、成分の一覧
- 機械構造用炭素鋼鋼管(STKM材)の規格と寸法公差、種類と比重について
- 自動車構造用電気抵抗溶接炭素鋼鋼管、STAM鋼管の種類と用途、特徴、規格
- 一般構造用炭素鋼鋼管(STK鋼管)の種類|規格、材質、寸法表
- 炭素鋼と合金鋼の違いと使い分け
- 軟鋼
- 金属の疲労強度、耐疲労性
- 金属の靱性、ねばり強さ(靭り強さ、粘り強さ)
- 冷間加工と熱間加工の違い
- 鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、鋳鉄、超硬の熱膨張係数
- 金属の熱伝導率の一覧表
- 鉄鋼材料、鉄、炭素鋼、工具鋼の比重
- 鉄鋼、炭素鋼、鋳鉄、純鉄、ステンレスの熱伝導率
- 鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、ハイスの比熱
- 鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレスの電気抵抗
- 金属単体の比重、密度の一覧表
- 金属の融点、沸点の一覧表
- 金属の熱伝導率の一覧表
- 金属材料の硬度の一覧と比較
- 合金元素の果たす役割