EMSで書類を送る場合インボイスは不要か
EMSで書類を送る場合、インボイスは不要です。他のサービスでも同様で、差出人と宛先、内容物の記載、保険をかけるかどうか等の情報は依頼時にいりますが、インボイスを作成する必要はありません。
ただし、EMSは書類だけでなく物品も送れるサービスであるため、それら物品を送る場合はインボイス必要となります。区別する為、書類を送る際はBusiness documentsやDocumentsといった内容物を記載することは必要です。
郵便を海外へ送る場合も、エアーメールかどうかという記載を封筒にしつつ、所定の切手を貼れば、海外に届きます。この郵便物にいちいちインボイスがついているかといえば、ついていません。ただし物品を送る場合はインボイスなしでは通関できませんし、送ることができません。
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EMSは通関が簡素化、優先取引対象
EMSは国際スピード郵便という日本郵便のサービスで、手紙などの信書に該当する郵便物だけでなく、物品も送ることができます。日本の場合、「郵便物」であると通関時に手続きが簡素化されたり、荷下ろし時に優先取引(先におろしてもらえるので早く届く)という優遇措置が取られていますが、EMSの場合、物品を送ったとしてもこの措置がそのまま適用されます。
昨今は便利なクーリエがいくつもあるので、多くの会社では書類を送る際にクーリエ一本という運用がなされていることもありますが、実は「信書」を送ることができるのはEMSだけです。この点については、「信書に該当する文書に関する指針(案)」パブリックコメント時の御意見と総務省の考え方という公開文書を見ると良く分かるのですが、民間事業者の感覚と、総務省の見解が大きく異なっていることが分かります。
信書を送ることができるのがEMSだけ、というなら海外取引先から信書が他のクーリエ(フェデックスやDHL、UPS、OCSなど)で届いた場合どうなるのかという点が気になります。信書のやり取りというのは、受発信の双方を伴うものになるためです。
これについては、「海外で受託する海外発日本向け文書等は、対象としない」という社団法人航空貨物運送協会国際宅配便部会の意見に対し、総務省は「海外から発送された信書であっても、日本国内において送達する場合は、郵便法等日本国の法令が適用されます」との答弁を行っています。
これを遵守するならすべての海外取引先や今後取引を開始しようとしている先とビジネス文書のやり取りを行う必要があるときに、相手方に「文書を送る際にはすべてEMSを使って」と伝えるということになります。これは事実上不可能に近く、実際に行っている企業もほぼないといえます。
信書の定義についての論争
信書というのは平たく言えば、受取人を指定した文書で、差出人が何かを伝えたい場合の書面です。したがってデータは対象外で、データを記録したCD-R、DVDやマイクロSD等も対象外です。ただしこれらは書類ではないのでインボイスが必要になります。
法令では信書とは「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」と書かれています。
実際のところ、受取人を指定している時点でほとんどの書面、ビジネス文書、帳票類が該当してきます。一部例示すると下表の通りです。以下の6類型に分類されています。
書状
手紙やハガキなど。
請求書の類
請求書、残高確認書、照会書、納品書、領収書、受領書、見積書、願書、申込書、申請書、申告書、依頼書、契約書、照会書、回答書、承諾書、レセプト(診療報酬明細書等)、推薦書、注文書、年金に関する通知書・申告書、確定申告書、給与支払報告書
会議招集通知の類
会議招集通知、結婚式等の招待状、業務を報告する文書
許可書の類
免許証、認定書、表彰状。カード形状の資格の認定書など。
証明書の類
印鑑証明書、納税証明書、戸籍謄本、住民票の写し、健康保険証、登記簿謄本、車検証、履歴書、給与支払明細書、産業廃棄物管理票、保険証券、振込証明書、輸出証明書、健康診断結果通知書・消防設備点検表・調査報告書・検査成績票・商品の品質証明書その他の点検・調査・検査などの結果を通知する文書
ダイレクトメール(文書自体に受取人が記載されている文書)
商品の購入等利用関係、契約関係等特定の受取人に差し出す趣旨が明らかな文言が記載されている文書
無封の送り状や添え状については、信書ではありますが、貨物に添えて送付することができる法令になっています(郵便法第4条3項)。トヨタのかんばん方式などで大量の「かんばん」が物品を納入する箱につけられていますが、これはこの添え状に該当します。
履歴書は、応募者が会社へ送るときは信書、会社が応募者へ返却するときは信書ではないという見解になっています。
同じ会社の部署間や支社間のやり取りも対象となります。差出人からの意思を表示し、又は事実を通知するという場合はすべて信書なので、会議招集や社内連絡も該当するということになります。
相手を指定した時点でほとんどの紙の文書が該当するということになることが分かります。
特定信書便事業者は限定的な利用
ただし、信書を扱えるのは日本郵便だけとはいっても、実はこれはすべての信書を全国で扱うことができる一般信書便事業ができるのは同社だけということになり、特定信書便事業の扱いであれば民間参入も可能で、現在586社(者)が登録されています。
特定信書便事業者が扱えるのは以下の3つのいずれかを満たす場合です。
- 長さ、幅及び厚さの合計が73cmを超え、又は重量が4kgを超える信書便物
- 信書便物が差し出された時から3時間以内に当該信書便物を送達する役務
- 料金の額が800円を超える信書便の役務
実態としては社内文書の支社・支店も含めた配送を子会社が行う、輸送業者が貨物と一緒に運ぶ納品書、受領書などのビジネス文書を行うといった限定的なものです。
一方、既存のクーリエ、たとえばフェデックス社などは30キロ以下の貨物は日本郵便が輸入配送を行うなどの提携を行っており、こうした場合は信書であっても日本国内は日本郵便が運んでいることになるので上記の総務省の見解には抵触しないということになります。
ビジネス実務ではこの「信書」を海外へどうやって送付するか、どうやって受け取るかについては実務現場でも困惑することの多い内容ですが、信書をすべてEMSと社内ルール上は明記していても、すべて守っている会社がはたしてあるのかという疑問です。
というのもEMSで送れない地域や、現地から発送できない地域も多くあります。自社の海外工場が都合よく、EMSで送れるという環境にあるところのほうが少ないのではないのでしょうか。諸外国では、巨大なクーリエサービスを展開している多国籍企業のほうが圧倒的に利便性が高いので、それらを使って日本に書類を送ってくるということが多いかと思います。
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