通関用インボイスと請求用インボイスの違い
貿易を実施している企業においては、通関インボイスと請求インボイスを分けて運用していることがあります。英語ではこれらインボイスの名称に本来差異がないため区別が困難なのですが、しいていえば、tax invoiceが請求用、commercial invoiceが通関用ということになります。正規の用法ではcommercial invoiceを請求に使うので、この分類方法は相手方がどのような形で請求事務を行うかにも依存します。
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支払うをまとめて行うために使われる請求インボイス
通常、インボイスは貿易取引のたびにつく送り状と請求書を兼ねた書類なので、通関に使用するもの=請求に使うものとなり、1通しかありません。ただし、これを貿易の都度、つまり通関を行うたびに支払い処理していると事務工数が増えてしまうため、国内取引と同様に月末締めや週単位で締めて、ある一定期間内の支払いをまとめて行ってしまう、という方法がとられることがあります。このときに使われるものが請求インボイスと呼称されるものです。
この形態はグループ会社間の貿易取引で特によく見られます。資本関係のある会社同士ではどちらかの事務工数が増えると、結局グループ全体にとって損失になることから、指定期間で締めて、まとめて支払う方法が使われることがあります。送金手数料も頻回で行うより、一括のほうが安くなるというメリットもあります。
結局、貿易に使用するインボイスというのは通関に使用したもののみが正となるのですが、このように支払いをまとめて行う等の都合で、請求インボイスを発行する場合、特定の期日で締め、その期間内に発行されたすべての通関インボイスでの請求内容が含まれたものが発行されます。支払う側は、これに基づいて期日までに支払すればよいということになります。
問題となる通関時と請求時のインボイスの差異
こうした運用を行う場合、通関インボイスと請求インボイスの内容は常に一致させておく必要があります。例えば、通関時には仮単価で設定したインボイスを使用して、請求時に正規の単価を記載してやり取りするというようなことを行うと、通関時の税額に差異が出ます。多めに払ってしまう場合は、輸入側の損失となりますが、少なめに払うと今度は税金(関税、消費税)の不足ということになり、追徴課税の対象となります。
一致させることは容易に思われるかもしれませんが、大量の貿易取引を行っており、請求・支払い部門と依頼部門が分離しているようなケースだと、その管理も一定のルールを設けないと容易ではありません。また貿易取引の知識のある部署や担当者ばかりではない為、前述した通関時の単価と、請求時の単価に違いが出てしまうというケースや、通関時に使用したトレードタームと請求時のトレードタームが違うというような場合でも支払税額の不足につながり、事後調査等で税関から追徴課税の指摘を受けることがあります。
支払いを行う部門、あるいはその部門へ依頼を行う担当部署は、通関インボイスと請求インボイスの内容を照合させる仕組みが必要、ということになります。一般に、検収時には現物と通関インボイス、パッキングリストの照合を行うことで売り手の認識と買い手の認識を一致させることができますが、インボイスを通関用と請求用に分けて運用する場合はさらにこれら二種のものを一致させる必要が出てきます。
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