コイル材の梱包方法
コイル材はロール状に巻かれた鋼板であり、重量もトンレベルのものが大半のため、固有の梱包方法がとられています。荷崩れを起こすと大惨事となるため、細心の注意が必要です。
鋼板コイル材そのものの梱包材と方法
まず製品そのものはロール状の各所に下図のようなフープでしっかり縛られ、製品によっては外周を包装紙や包装材料で包まれた状態で梱包されています。またロール状となった場合の端面と、その角(外周・内周)についても補強材などでの梱包により傷やゆがみ、凹みを防ぐことができます。
日本製鉄カタログより
コイル材の梱包において、他の製品と違い特に留意しなければならないのは下記点となります。輸送事故につながりやすい貨物であることは以前から指摘されていますが、梱包や積み付けをしっかり行うことでこれらは軽減することができます。
- 重量が重く通常のカウンターリフトでは移動できないものが多い
- 転がる
- 傷がつきやすい
- 錆びやすい
- 重量が一点に集中しやすい
コイル材輸送用の梱包方法
コイル材そのものに施されている梱包は上述の通りですが、ここから輸送時にさらに梱包方法を工夫する必要があります。
積み付け方式|荷重を分散して、完全固定する
まず、積みつける際の載せ方ですが、アイサイド(eye side)つまり内径の穴があいている面が上を向いているか、それとも寝ているかによって、下図のように2つのパターンがあります。
英語でeye to skyあるいはeye up、日本語では穴縦とも言います。
英語でeye to wallあるいはeye horizontalとも言います。
使用される荷材・梱包材の上から、コイルの巻いてある方向と、天地を示す矢印が表記されている場合もあります。
輸送条件がより厳しくなる海上コンテナを使った国際輸送を例に見ると、原則、コンテナの中へはeye to wallの方式で積み付けを行います。ただし、このときにコイル材の外周が直接コンテナの床に接してしまうと、荷重が集中してコンテナが凹んでしまうことがあります。このため、下図のように必ず木の角材などでコイルが直に床へ接しないようにするとともに、転がらないよう固定しておく必要があります。貨物をコンテナの中でワイヤー等を用いて固定する行為をラッシングと言いますが、木の角材を用いて固定することを意味するショアリングも必須となる貨物となります。
OOCLのコイル積み付けガイド資料より
こうした方法により、荷重分散を行って重量が集中しないようにするとともに、荷崩れの原因となるコンテナ内部でのコイルの移動を防ぎます。通常の段ボール箱などでパレタイズされた貨物は例えば20ftコンテナで20パレット積みつければ、多少の差異はあっても、ある程度の荷重分散を行うことは難しくありません。
ところがこうした大物だと、見ての通り、コンテナにコイル1本か2本程度しか入らない場合もあります。これをバランスよく積みつけつつ、コイルそのものが床や壁に接して重量が集中しないようにも工夫が必要となります。
貿易でのコンテナは様々な揺れの悪条件を通過します。陸上の輸送時の振動、コンテナの積み下ろしの際の振動、海上のコンテナ船の中での揺れといった各種の揺れの中を移動しますので、万が一荷物が動いてしまうと、コンテナの扉を突き破って中身が飛び出る、コンテナが崩れるといった大事故になってしまいます。製品も重量がありますので、あらぬ方向に力がかかってしまうと、下記の写真のように簡単にひしゃげてしまいます。
こうしたことから、コンテナの輸送における梱包は事前の荷重分散と固定が非常に重要となります。
防錆対策
コイル材はつまるところ鉄の板を丸めたものであるため、極めて錆びやすく、通常は油等が薄く塗ってあります。コイル材の種類やメーカーによっては、HDPEと防水加工仕様のVCI(防錆紙)をラミネートした包装材で包まれ、その上からシートカバーで覆われたものもあります。
シートカバーの材質もいくつか種類があり、ガルバニック鋼板を薄くしたもの、防錆対策の施されたもの、防湿包装紙、厚紙など種々のものがあり、輸送環境に応じて使い分けられています。外装部は、鋼板に傷や凹みなどがつかないようにする目的もあります。
海上輸送の場合は、日数がかかるだけでなく、コンテナの隙間から潮風が入り、鉄鋼材料の嫌う塩の雰囲気という悪条件でもあります。このため、最新の防錆梱包と密閉が必要となります。
コイル材のラベル表記
また重要となるのが製品の現物につけられるラベル表記です。梱包ラベルと呼ばれるもので、輸出や輸入品であればシッピングマークで代用されていることもあります。ここにはこのコイル材の材質や厚み、幅、重量、製造番号といった製品を特定するための情報が記載されており、これが読み取れないとコイル材は一体何なのか判別不能になってしまいます。
在庫管理がまずいとこうした情報が現物と紐づかなくなってしまい、本来製品につくミルシートととも紐づかなくなってしまいます。結果、品質の保証もできないため、ムキ材として流通するしかなくなってしまいます。
日本製鉄カタログより
コイル材はその製法や使い方から、長さについては表記しない決まりになっており、鋼板の「種類」「厚み」「幅」「総重量」で識別・管理されています。
このコイル材のラベル例では、3.6 x 1050 x Cとありますので、3.6mmが鋼板の厚さ、1050mmが幅なります。最後のCはコイル材として巻き取ってあることを示す記号です。
コイル材の長さの計算について
鋼板におけるコイル材の長さは決まっておらず、コイルのサイズ表記の上でも、3.6 x 1050 x Cの前述の通り、全長はCつまりコイルであるため表記なしで記載されています。
コイルは製法上、厚みと幅、重さでサイズを管理されていますので、ロールをのばしていった長さについては計算で割り出すしかありません。
コイル材の全長(メートル)は以下のいずれかの計算式で割り出せます。なお、外径、内径、幅、板厚はすべてメートルに換算、コイル材の密度もkg/m3へ換算して計算すると出しやすいです。
- コイル材の全長(m)= 3.14(円周率)x (外径2-内径2) / 4 x コイル幅 x 板厚
- コイル材の全長(m)= (コイル材重量 kg) /(コイル材密度 x コイル幅 x 板厚)
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