鉄鋼におけるミルとは
鉄鋼分野で耳にするミルとは製鉄所、つまり鉄鋼メーカーのことを意味しています。英語ではMillと書きます。ミル在庫といった場合、メーカー側で持っている製品在庫となります。
日本の製鉄所であれば日本ミル、中国の製鉄所なら中国ミルという略し方もあります。ミルメーカーともいいます。英語のMillそのものには製鉄所以外にも他の業種の工場や製作所についても使われるため、口語ではsteel millという具合に、製鉄所であることをより明確に表現する方法もあります。
鉄鋼材のスペックを示す検査証のことをミルシートといい、成分や強度などの重要な値が記載されていますが、これは和製英語で、Mill Test ReportやMill Test Certificateという言い方が正式な英語表現です。単にMillと使われていることからも、工業分野をはじめ、ミルという用語自体に製鉄のニュアンスが定着しているとも言えます。
鉄鋼材には様々な仕様・形状がありますが、一から実際に製品の材料として使えるようになるまでかなりの期間がかかります。このため、ミルに対しては鋼材を扱う専門の商社が発注しミル在庫から出荷された母材が商社在庫となり、商社側で鋼材を保有しながら使用者である顧客に提供するスタイルが一般的には取られています。
商社在庫からコイルセンター(CC)に送られ、ユーザーの希望する寸法にスリットして、それがユーザーに送られます。スリット済みの鋼材を在庫として持つことも珍しくありません。
各サプライチェーンにおいて鋼材の在庫が切れてしまい、さらにミル在庫がなくなると、鋼材の仕様にもよりますが、入手までに3〜4カ月以上はかかります。場合によってはそれ以上ということになるため、材料切れで生産ストップということにもなりかねません。
鋼材の取引は独特の商慣習があり、どこかの鋼材商社と価格でもめたりして別の商社から購入するというようなことが簡単にできません。またミルから直接購入というのはよほどの大口取引に限定されます。
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