貿易の支払条件の一覧|英語での支払い条件の種類

2018年3月13日更新

支払条件を英語ではpayment conditionsと言いますが、これにはいくつかの種類があり、海外企業との物品売買の取引ということであれば貿易による品物の発送あるいは受領、その代金回収あるいは支払という問題は、取引の決め事において最重要項目といっても過言ではありません。一部誤解されることがありますが、支払条件とFOBやCIFといったインコタームズによるトレードタームは無関係です。それぞれ別個に取り決めます。トレードタームがFOBだからといって、支払条件があるものしか使えない、ということはなく、すべて相手方と交渉して決めるべき話になります。

貿易の支払条件はなぜ重要か

貿易での支払方法はときに、取引を左右することもある重要な条件の一つとなります。海外企業との取引の場合、支払方法によっては相手方との取引をしないという選択も必要なことがあります。あるいは、よりリスクの大きい支払条件をとるのであれば金額を上げる、逆にリスクの少ない支払条件であるならば多少の値引きにも応じるというような交渉も行われることがあります。品物を送っているのに代金回収ができなかったり、支払を行っているのに品物が届かない可能性やそうした事態になった際に費用を回収できないというケースは少なくないのが実態です。

通常の国内取引と同様、海外との貿易においても相手へ物品を届ける輸送をどうするかという問題(デリバリー)と、支払い方法(決済)をどうするかという問題は取引を始める際に事前に決めておく必要がある項目です。

冒頭でも少し述べましたが、海外・国外との取引と国内取引との大きな違いのひとつに、FOBなどの「貿易条件」の設定がありますが、この貿易条件では支払い方法や支払い条件(何を基準にいつまでにどのように支払う必要があるか)については何も決まりません。

したがって、取引契約を通じて決めていく必要があります。まれに、「取引契約や売買契約のようなものなどない」という状況で貿易を行っている会社もありますが、非常にリスキーで、何かあった場合には自社が丸損をするどころか、状況によっては相手から損害賠償などを請求されても何ら抗弁できないことにもなってしまいます。

海外企業との取引には、それが自社のグループ会社であっても、取引契約や取引基本契約は必須となります。その中の重要項目のひとつが支払い条件となります。

貿易の支払条件ごとのメリット、デメリット

支払条件は、一般には「先払い」「後払い」「代金引換」などがよく知られますが、貿易の場合、代金引換はめったに使わず、「信用状によるL/C決済」が基本となり、他に条件によっては「荷為替手形による決済」を用いつつ、グループ会社の間の取引や担保が確保・提供できるなどの特殊な条件が揃っている場合には「先払い」「後払い」といった方法が取られます。

代金引換は英語ではCOD、Cash On Deliveryの頭文字をとって略された言い方がなされますが、使える地域が限られていることや、金額にも制限があり、手数料も日本国内の代金引換とは比較になりませんので、ほとんど使われません。

法人間の貿易取引はある程度の数量があったり、取引金額が大きくないと輸送費のこともあり割にあわないことは周知のとおりです。

また代金回収にリスクがありそうな取引を行う場合、ファクタリング会社に売掛債権を売却して回収する方法があります。なにやら小難しそうな話に聞こえるかもしれませんが、国内のファクタリングと同様、海外でも国際ファクタリングはよく使われますので、金額が大きい場合や代金未払いの場合に回収する手段がないときは、海外企業との取引契約を交渉する段階で、ファクタリングを使った取引にするという内容を盛り込んでおく必要があります。

また支払が得られないといった信用リスクに関しての貿易保険もありますので、そうしたものも状況によっては活用されています。

貿易における支払条件の一覧

日本から輸出する場合に有利な支払条件

製品の売買を行い、売り手は製品を輸出し、買い手がその代金を支払うという図式で見た場合の支払方法の特徴とリスクを見ていきます。

この場合、輸出側にとって有利となるものから1から順番に列挙してみます。売る側(輸出側)にとっては1がもっとも有利で、6がもっとも不利、ということになります。輸入する側(買う側)から見た場合は、この有利、不利の関係がそっくりそのまま入れ替わります。

すなわち、自分たちが買い手となる場合は、6の後払いでの電信送金がもっとも有利となり、1の先払いの電信送金がもっとも不利になります。

  1. (1)T/T in advance
  2. (2)L/C (at sight)
  3. (3)L/C (Usance)
  4. (4)D/P Document against payment
  5. (5)D/A Document against acceptance
  6. (6)T/T (deferred payment)

T/T in advance

T/Tとは電信送金のことですが、いわゆる銀行振込のことです。T/T in advanceとは、前払いでの電信送金となりますので、輸出する側、つまり売る側にとってもっとも有利な支払条件になります。これは輸入者の支払が確認できない限り、輸出しないということになります。

但し、支払条件はよいとしても、これにも一つネックがあり、工業製品の多くは使用者のためだけに製造されているようなものが少なくなく、買い手からの注文を受けてから製造する製品の場合、発注時点あるいは発注内示をもって生産着手してしまっていることがあります。この場合、他に転用できない場合、支払い前に相手側が倒産、となったような場合や支払を拒否されたり、取引条件が折り合わなくなった場合に製造側での損失となってしまいます。

特殊な材料・資材などの発注が必要な場合も、上記の期間とあわせ、輸出直前ではなく、そうしたものの発注前に入金を依頼するというのが最も有利な支払条件となります。

ただし、売り手の側でこの支払条件に持ち込めることは稀で、よほど売り手が有利な立場にない限り合意を得るのが難しい支払条件です。

L/C (at sight)

L/C(信用状)を用いた取引です。一言で言えば、「信用状」を買い手の銀行から発行してもらうことで、輸出側の銀行に為替手形を買い取ってもらう形のため、代金回収のリスクが銀行に移転する方式です。売り手が発行した為替手形を銀行が買取りするので、買い手が実際に支払わなかったとしても、売り手側には売買代金が手に入ることになります。買い手側の銀行も信用状を発行しているわけですから十分に与信管理をした上で発行するため(自分の銀行にその会社が口座を持っており、決済金額以上の現金を預金している等)、通常は銀行が損をすることはありません。

売り手から見た場合、発行銀行がしっかりしており取消不能の条件がついているものであれば、原則、とりっぱぐれがありません。支払う側としても、輸入側の銀行に支払うことでB/Lを引き換えにもらうため、費用だけ支払って品物がないということがありません。

この「at sight」というのは一覧払いのことで、L/C買い取り銀行から為替手形が呈示された場合、猶予期間なくただちに支払うというものです。為替手形を入手できればすぐに現金化できるため、売る側にとってはL/Cを用いた条件では最もよいものとなります。

ただし、信用状を発行してもらうにはある程度の与信が必要なことが多いです。個人事業主が相手の場合や、財務状況があまり思わしくない相手の場合などとの取引ではそもそも使えません。また、L/Cの発行銀行についても、名の通った銀行の取消不能信用状(Irrevocable Letter of Credit)でないと代金が回収できなくなるリスクは残ります。あるいは、日本側でL/Cの買取銀行になってくれる銀行が見つからなかったり、買取銀行側がL/C発行銀行から代金を回収できない場合、L/C発行銀行への督促費用などを日本側の売り手へ請求するというようなケースもあります。

L/Cの発行手数料もあるため、T/Tなどの送金手数料に比べると費用がかかりますが、買い手と売り手の双方のリスクを最小限にという意味では、一番バランスの取れた支払条件といえます。

L/C (Usance)

ユーザンスとは期限付き、猶予付きのことを意味し、ユーザンスL/Cの場合、支払期限が決まっています。例えば、at 60 days after B/L dateとなっていれば、船積後60日払いということになります。国内の手形と同様、現金化するのに猶予があるというほうが、買い手にとっては資金繰りの点で有利になるため、実際にはこのタイプのL/Cが多いように見受けられます。

ユーザンス期間を長く設けることについては、それだけ現金化が遅れるということだけでなく、相手方の資金繰りやビジネス環境も変わるリスクがあるということです。

D/P Document against payment

D/PやD/Aは荷為替手形を使った決済方法です。L/Cと手続きがほぼ同じですが、信用状がない取引になるため、支払の確約を銀行がしてくれるL/Cと違い、費用回収できなくなるリスクがあります。銀行は仲介するだけ、との役割で動きます。

まずD/Pですが、輸出する側、つまりこの場合は日本側の売り手ですが、B/L(船荷証券)が発行されるとともに、輸出側となる日本の銀行に振り出した荷為替手形とB/Lの双方を提出します。輸出側の銀行は、これを輸入側の銀行に送ります。輸入側の銀行は、輸入者に対して為替手形だけを提示します。輸入者がこれに対して支払を行うと、輸入銀行が日本の輸出側銀行から送られてきたB/Lを輸入者に渡します。

B/Lは有価証券の性質を持つ書類で、これをもっていると現物と引き換えることができるようになります。

あとは、輸入側の銀行が輸出側の銀行へ輸入者が支払った金額を送金し、輸出側の銀行は輸出者へ支払うという流れです。

D/Pを使うメリットは、L/C発行手数料の軽減やL/C開設のための手間が減るといったものがありますが、率直なところ、この方法を使うのは、買い手側の信用格付けが低く、相手方の銀行でL/Cが開設できないというような場合が見受けられるため、注意を要します。L/Cも使えず、ファクタリングも使えないというような場合で、こちらが売り手ならば、先払いを強く主張すべきところです。

D/P決済の場合、理論上、相手方の輸入銀行に何か起きない限りは、買い手が支払を行うまでB/Lも相手に渡らないため、物だけせしめて代金の支払なしというようなことは起き難いですが、相手がいつまでも払わなければ、自分たちの費用で品物を現地からシップバックする必要があります。内容が決着するまでの保管料についても同様で、輸出した側がそれら費用を丸損することを考えれば、L/Cに比べると圧倒的に不利です。

D/A Document against acceptance

D/Pと手続き上は途中まで同じですが、買い手側がB/Lを受け取ることができる条件が違います。B/Lを受け取るということは品物を手にすることができる、ということと同義ですので、この違いは非常に大きいです。端的にいえば、D/Pについては輸入側銀行から提示された為替手形に対して輸入者が支払を行わないとB/Lをもらうことができなかったのに対し、D/Aの場合は、為替手形を引き受けることで、B/Lを受け取ることができます。為替手形を引き受けるとは、その手形で指定された期日までに費用を支払うという約束を行う、ということですが、この方法の場合、とりあえず支払う約束はしたのでB/Lは受け取ったが約束を守らなかった、ということが起きてしまう可能性があります。

その場合であっても銀行は仲介しているだけなので、なんらか保証もなく、品物の持ち逃げということも可能性としてはあります。D/Pの場合は、支払がなければB/Lが相手に渡らないので最悪、返送費用や現地での滞留費用などですみますが、D/Aの場合、B/Lは相手に渡ってしまうので、支払よりも先に品物が相手に渡ってしまうことになります。

日本から輸出するケースではきわめて不利な条件ですが、逆に輸入する場合であれば、製品が品質通りのものではない可能性が高いような場合、先に品物を受け取っておき、物が契約どおりのものでなければ減額や支払拒否などの方法で、相手からの譲歩を引き出すというような方法もあります。

こうしてみると、今回紹介した主要な6つの支払条件のなかでも、D/PとD/Aの間で、品物が支払より先に相手に渡るかどうかという点で真っ二つに線を引くこともできるほどの大きな違いがあることがわかります。

T/T (deferred payment)

売る側としては最もリスキーな支払い方法です。物品を送ったあとに、たとえばinvoice dateの何日後、B/L dateの何日後までに電信送金(銀行振込)してほしいというものです。物品は相手の支払状況とは関係なく、無条件でまずは相手の手元に届きます。

基本、この方法を使うのはグループ会社などの資本関係、系列関係のある会社に限定されることが多いと思います。

相手が指定された期限までに購入代金を振り込んでこない場合、売り手からは先に物品を輸出してしまっているので、品物を取り返す術もなく、督促するしかないということです。相手企業の身元がはっきりしており、売買契約で紛争解決手段が明記されているのであれば、その記載に則り、ADRや裁判などで争っていくことになりますが、時間・手間・費用いずれもかかります。

資本関係のない会社との取引でこの手段をとらざるを得ない場合は、ファクタリングや貿易保険などの方法でリスクをある程度はヘッジする必要があります。何度も会っている、信用ができる相手だとこちらが思っていても、突然いなくなったり、相手方のさらにその先の取引先に起因する連鎖倒産やカントリーリスク(非常危険)など、回収できなくなるリスクは山ほどあります。多少高額な費用を払ってでもリスクをヘッジする方法をどこかに担保しておく必要があります。

以上貿易における6つの支払条件について見てきましたが、率直なところ、支払条件における「信用」とは相手からの費用回収の手段があるかどうかという点から見ていくことが肝要で、人物が信用できる云々ではどうにもならない面があります。新規で海外企業への販路が広がるとまずは売り上げばかりに視点がいきがちですが、代金回収できなければ売上げがいくら上がっても何の意味もありません。取引契約においては支払条件について最後まで気を抜くことができない部分といえます。

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