海上輸送の錆対策

2024年2月5日更新

海上輸送中の製品品質保持を行う上で、金属素材を使っているものについては錆対策がしばしば頭の痛い問題として立ちはだかります。海上輸送によく使われるコンテナは海水がかかっても中に入らないよう密閉はしていますが、空気はある程度入りますし、湿気も同様です。加えて、海上輸送は時間がかかり、昼夜の寒暖差も激しく、航路によっては赤道直下を行き来したり温度差の激しいエリアを出入りすることになります。

海上輸送の錆対策|目次
  1. 錆対策の種類
  2. 輸送トライアルで実証試験

錆対策の種類

錆の面でいえば、海上輸送は塩気も心配ですし、あまり有利な方法とは言えません。

とはいえ、錆が心配なのですべて航空輸送で、となると莫大な輸送費が掛かってしまいます。小さなものならまだしも、大きな金属系の製品は特に比重もありますのでかなりコストがかかってきます。したがって、海上輸送のコストメリットを活かして錆を以下の効率的に安く防ぐかというのは、輸入や輸出担当者の悩みの種でもあります。

海上輸送品の錆対策としてはいくつか種類があります。以下分類別に特徴を見ていきます。

梱包方法による改善

最大の特徴は、製品の仕様変更等や製品に影響を及ぼす変更が不要で、物流面のみからの変更で完了するという点です。

防錆袋、防錆紙

VCIバッグやVCIペーパーとも呼ばれます。揮発性の薬品が塗ってあり、製品の性能に影響を及ぼすことなく、それらが製品表面に付着し、錆を防ぐものとなります。

ビニール

乾燥剤とセットにして使われる場合と単独で使われる場合があります。物理的に水分から守ってくれる効果が期待できますが、湿気が発生したり、中で結露となると錆を助長してしまうこともあります。

乾燥剤

一定の密閉空間を作ることができる場合、その中に必要量いれることで、空気中の湿気をある程度落とすことができます。ただし、条件によっては吸い込んだ水分をふたたび放出することもあるため、使いどころをよく検討する必要があります。

製品仕様変更による改善

錆びにくい材質に変えたり、錆びる金属面が直接露出しないよう塗装する、あるいは防錆液や防錆油を塗るといった製品に直接干渉する方法です。設計担当者の関与がないと難しいため、物流担当や輸出入担当だけではできない改善です。

梱包材では防錆対策にも限度がありますので、製品の種類によっては早い段階からこちらも並行して検討したほうが良いケースがあります。

輸送方法による改善

温度を一定にできるリーファーコンテナ等の使用を検討するのも輸送コストに余裕があるなら一考の価値があります。ただし温度だけで湿度管理は難しいため、あくまで寒暖差による結露等の対策ということになります。

輸送トライアルで実証試験

錆の発生する条件は同じ海上輸送でも異なるうえ、どのような梱包方法がその製品・その区間での輸送に最適なのか条件はかなり変わってきます。このため、錆を防ぐための荷姿仕様や梱包仕様を決めるため、輸送トライや輸送トライアルと呼ばれる輸送試験を行う方法も有効です。

これはいくつかのパターンの荷姿を設定して実際の輸送区間で相手方に送り、開梱して中身検品してもらい、錆の最も少なかった荷姿を採用する、というものです。

注意点としては実施する時期が雨期なのか乾期なのかといった湿度や温度の条件が変わると結果が変わるため、最悪と思われる時期に行うのがベストです。

また、輸送トライに使用するものは同一条件で作ったものにする必要があります。よくあるのは、防錆液などを製品に塗布しているものでも、製品によって塗布にムラがある等の事情があると、梱包をいくら改善したところで正しい結果が得られません。輸送試験を実施する場合はこのあたりの条件も、製造部門や品質管理部門の協力を得ながら行うのが良いでしょう。

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