アルミニウムの錆の原因と種類|腐食メカニズム
アルミニウムが錆びないといわれるのは、その表面に酸化アルミの薄い膜が生成されることが理由ですが、決して錆びないわけではありません。一般に、白錆といわれる白色の腐食生成物がアルミには発生することがあり、本体には影響しないものと、深耕して破壊につながってしまうものとがあります。
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錆に強いのは酸化アルミ皮膜によるもの
アルミニウムは非鉄金属のうち、軽金属を代表する強度や耐腐食性にも優れた金属で、錆に対してはもともと強い性質を持ちます。そのアルミが錆びる原因は、腐食に耐える要因ともなっている表面の酸化アルミニウムの薄い膜が破壊されるからですが、この膜が破壊される原因については以下に述べていくとおり、まずアルカリ性や酸性の環境にはあまり強くありません。
こうした特定の環境下ではアルミの破壊につながるような腐食を引き起こすため、防止方法を事前に講じる必要があります。特にアルカリ環境では腐食に弱い金属ですが、酸性、アルカリ性双方で腐食するという性質を持つ両性金属に該当する材料です。
アルミに含まれるアルミ以外の元素が錆やすさにも影響
実用上は、純アルミというよりは、他の元素を混ぜて強化したアルミニウム合金の形で使われることが多いので、アルミの錆を見る場合、発生している錆や腐食の種類がどのアルミ合金についてなのかも腐食のしやすさ等を見る上では重要な指標となります。
純アルミニウムのほうがアルミ合金よりも腐食や錆には強いですが、アルミは合金にしないと強度に難がある材料のため、主として見るべきはアルミ合金の種類ということになります。
合金化する際にアルミよりも貴な金属を添加した場合、強度はかなり上がるものの、粒粒界腐食の原因ともなるため、腐食には弱くなります。反対に、Mn系、Mg系、Zn系のアルミ合金は、これら添加した元素がアルミに比べ卑となるため、耐食性はあまり落ちず、強度もそこそこ上がります。
アルミ合金ごとの錆や腐食に対する強さ
アルミと一口に言っても、種類がたくさんあります。アルミ合金も他の金属と同様に合金元素を転嫁することでパラメータが変わりますので、用途に応じて使い分けられています。下表のように錆に対しても強い合金と弱い合金があります。
アルミ合金の種類 | 特徴 |
---|---|
A1000系 | 純アルミであり耐食性はもっとも強いが、不純物として含むFeの量によっては耐食性がかなり落ちます。A7000系やA2000系などの耐食性に難があるものに対して、表面だけをクラッド等でA1000系にするという方法もあります。 |
A2000系 | アルミ−銅系の合金です。ジュラルミンや超ジュラルミンに代表されるとおり、強度は最も強い部類ですが、粒界腐食を起こしやすいです。耐食性はアルミ合金の中で弱いほうです。貴な元素であるCuを添加することで耐食性劣化が避けられません。 |
A3000系 | アルミ−マンガン系の合金です。添加元素がマンガンのため、マンガンの固溶体硬化により耐食性も維持できるアルミ合金です。加工性にも優れます。 |
A4000系 | アルミ−ケイ素系の合金です。シリコンを添加すると融点が下がるので鋳造用で威力を発揮します。磨耗に対して強くなったり、耐熱性向上に寄与しますが、耐食性については特筆すべき点がありません。 |
A5000系 | アルミ−マグネシウム系の合金です。強度にすぐれ、耐食性もよい部類です。 |
A6000系 | アルミ−マグネシウム−ケイ素系の合金です。アルミサッシに使われることからも、強度や耐食性、応力腐食割れにも優れるアルミ合金です。ただし溶接はしにくい材料です。 |
A7000系 | アルミ−亜鉛−マグネシウム系の合金です。超々ジュラルミンに見られるように、アルミ合金の中でも最強の部類になるが、状況により、粒界腐食を起こしやすい材料です。ただA7072はMgZn2を熱処理で析出させて強度を上げている合金で、電位が低く、犠牲陽極作用からアルクラッドの皮材としても使われ、耐食性には優れています。 |
アルミニウムの錆の色、成分と化学式
白錆とよばれるように、アルミニウムの錆は白く、酸化アルミニウムが水和酸化アルミニウムといった水和酸化物へさらに変化したものです。
アルミニウム錆の成分名 | 別称 | 化学式 | 色 | 錆名(通称) |
---|---|---|---|---|
酸化アルミニウム | アルミナ | Al2O3 | 透明 | 錆というよりは不動態皮膜 |
水和酸化アルミニウム | バイヤライト | βAl2O3・3H2O | 白色 | 白錆 |
水和酸化アルミニウム | ベーマイト | AlOOHもしくはαAl2O3・H2O | 白色 | 白錆 |
水和酸化アルミニウム | ギブサイト | αAl2O3・3H2O | 白色 | 白錆 |
アルミニウムの腐食メカニズム
アルミは乾燥した空気中では、その表面に酸化アルミニウム(Al2O3)のごく薄い膜に覆われています。その厚さは約2.5nmともいわれる極小で透明な皮膜です。この皮膜は酸素がない環境でも水分さえあれば生成されます。ただしこの酸化アルミニウムは、保護膜として機能するもので、アルミを強力に保護するものです。実用上は、アルミの耐食性をあげるためにこの酸化アルミを人工的に成長させた上でさらに塗装をするなどのアルマイト処理が行われることがあります。
空気中に水分のある環境や湿った大気中では、このAl2O3の膜のさらに上に、水和酸化物が生成されていきます。この厚さも約50nmから100nmといわれるほど薄いものですが、これら水和酸化物は色が白いため、「白錆」と呼ばれることがあります。白錆の成分となる水和酸化物にはいくつかの結晶形の異なるものが知られており、例えば、バイヤライト、ベーマイト、ギブサイトがあります。
こうした白錆はアルミとの間に酸化アルミニウムがある限り、害にはならず、腐食が進んでアルミニウムが破壊されるということにはなりません。白錆が発生するにも関わらずアルミが腐食に強いとされるのは、酸化アルミニウムの皮膜に覆われているからです。
こうした保護膜はステンレスにも存在しますが、不動態皮膜と呼ばれるものです。ただし、アルミを破壊してしまうような腐食はこの皮膜が壊れてしまう場合に発生します。アルミの酸化皮膜は、酸性やアルカリ性の環境下で破壊されてしまい、塩化物イオンやアルカリ環境には特に弱い性質を持っています。
アルミの場合、全面腐食というよりは、以下のような局部腐食が起きることが知られています。
アルミニウムの孔食
金属表面に小さな穴状のものが空き、進行するとそれがどんどん深くなっていってしまう腐食です。アルミの場合は、浅い穴で収まることが多いですが、環境によっては深くなることもあります。
孔食は、塩化物イオンが存在すると酸化アルミニウムの保護膜が部分的に破壊されてしまうことで起きるもので、大気中でも塩気のあるような環境ではすぐに発生します。
アルミの場合、pH4から8程度がこの腐食が発生する範囲とされます。淡水のなかに塩化物イオンがなければ腐食に強い金属ですが、もし塩化物イオンがある場合は、アルミを守っている唯一の保護皮膜ともいえる酸化アルミの膜がすぐに破壊されてしまい、腐食が進行します。
アルミ合金の粒界腐食
これはアルミ合金に添加されている元素に依存しますが、添加元素によっては発生することがあります。典型的な例が、強度の高いアルミ合金のジュラルミンに添加されている銅などの例です。銅は電気化学的には貴な金属であるため、アルミとのガルバニック作用によって粒界部分が腐食が起きることがあります。
金属は極論すると、小さな粒の結晶があわさったものですが、この結晶粒の間に「粒界」と呼ばれる境界面が存在します。この部分は、結晶粒に比べると不純物がたまっていたり、原子の並びが乱れているため、腐食には弱い部位となります。粒界腐食は、この境界部分が腐食してしまう現象です。
アルミの応力腐食割れ
「割れ」という材料の物理的な破壊を伴う腐食である応力腐食割れについては、応力、材料、環境の3つの因子が複合的に重なって起きるとされますが、アルミやアルミ合金についても発生することが知られています。粒界腐食とも深いつながりのある現象の腐食のため、上述のとおり、アルミ合金が粒界腐食と無縁ではない以上、発生には留意が必要です。材料加工時や成形時に残る応力があとあとまで尾を引くという特徴を持つため、熱処理などで応力を除去するアニーリング等の対処方法もありますが、熱の加減次第では逆に粒界腐食を促進させてしまうこともあるため、注意を要します。
異種金属接触腐食
ステンレス鋼や銅合金で作られた配管などと接合して用いると電位の高いステンレス・銅に対して、電位の低いアルミ合金のほうが錆びていってしまいます。アルミは特に電位が低く、卑な金属であるため、水に含まれているわずかな銅イオンや鉄イオンが原因でも腐食が進んでしまうことがあります。水道管にもともと使われないことの一つの理由となっていますが、より電位の高い他の金属と接触させるような場合にも注意が必要です。
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