溶存酸素の計算方法と単位|腐食速度へ影響する因子

2018年1月1日更新

溶存酸素とは、水に溶けている酸素のことをいいますが、この指標が錆や腐食の世界で重要となるのは、水に溶けている酸素がしばしば酸化剤として金属の腐食や錆の発生の促進に関わってくるからです。溶存酸素を英語ではDissolved Oxygenと呼称するため、略して「DO」と表記されることも多いです。これは雨濡れや結露などによる水や、水中、海中に常時接している場合でも同様に重要な因子となります。

酸素が水に溶ける一般的な特性として、低温の水ほどより多くの酸素が溶けますが、気圧にも影響します。

溶存酸素の単位としては、mg/Lがよく使われます。1リットルあたりの水に何mgの酸素が溶けているか、を見ることができます。

溶存酸素の量
温度・気圧条件 溶存酸素の濃度(DO)
1(atm)気圧、20℃ 8.84mg/L
1(atm)気圧、100℃ 0mg/L

溶存酸素の計算には、ヘンリーの法則とダルトンの法則を用いて行います。

ヘンリーの法則では、

溶解度=kH x 分圧

と定義され、kHがヘンリー定数と呼ばれる気体ごとに異なる値となります。

酸素の溶解度を計算する場合、

溶解度=酸素分圧 x ヘンリー定数

の式が適用できます。これに下記の計算式のように飽和水蒸気圧の影響を加味します。

大気圧(atm)=「気体の分圧」+ 「飽和水蒸気圧」

酸素分圧=飽和水蒸気圧−大気圧(atm)

1気圧20℃のいわゆる大気中の常温環境下での溶存酸素量がDO=8.84mg/Lとなっているのは、以下のような計算によるものです。

20℃の温度における水の酸素に対するヘンリー定数kH(1気圧、1リットル当たり)=1.3 x 10-3mol/L・atm

例えば、海水面の酸素分圧は0.21気圧となるため、

溶解度=酸素分圧 x ヘンリー定数 の式にあてはめ、

0.21 x 1.3 x 10-3mol/L・atm = 2.7 x 10-4mol/L = 8.6mg/Lとなります。

0.00027 mol/L x 32.0(酸素の分子量)x 1000 = 8.64 ≒ 8.6

これに飽和水蒸気圧を加味すると、溶存酸素の濃度は約8.8mg/Lとなります。

水に含まれる酸素の影響により錆の防止対策などを検討する場合は、実際に溶存酸素がどのようになっているか理論上の計算値のほか、状況を確認する必要があります。

河川や池、湖、水道水など大気に触れる環境にある水は、通常酸素は限界まで溶け込み、飽和していることが一般的です(通常、8から10ppm前後とされます)。ただ、夏季と冬季の気温差によっても、酸素の溶け込む量が変わりますので、給湯設備などによっては冬場の溶存酸素量の多い水が供給され、ガスなどで過熱した際に密閉された給湯管から酸素が逃げることができずに、酸素が過飽和状態になっている水(湯)が出てくることがあります。これによって酸化が余計に早く進み、錆が進行することもあります。

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