FBOの意味とは何か
FBOとは自動車業界や自動車部品サプライヤーの業界で使われた場合、取引を終了とする際の最後の注文数を意味しています。FBO quantityあるいは略してFBO QTYともいいます。英語の略称になりますが、日本語では「打ち切り後の残り必要数」「最終取引での発注数」と称されるものです。
特に海外の自動車メーカーや海外工場で使われる用語です。何の略称かについては諸説あり、Final Back OrderあるいはFinal Build Outではないかとの説があります。使う自動車メーカーやサプライヤーが限られているため、一種の社内用語が広まったもの、と考えられます。自動車メーカー1社に対して、その取引先の裾野は広く、規模によっては最終的に数十万社に影響するとも言われますが、こうしたことから自動車分野は社内用語が一種の業界用語になってしまうことが多々あります。
自動車は量産での車両生産が終わっても、15年前後の補給・補用としていわゆる修理・交換用のサービスパーツの供給義務が自動車部品メーカーにはあります。これは契約で明文化されていないことが多いですが、自動車メーカーごとに完全に部品供給を終了してよい条件を明確にして部品や材料のサプライヤーに説明会等で内容説明していることがほとんどです。
こうした商慣習の中、FBOについては自動車メーカー側が了承した場合に提示する最終供給必要数となります。つまり、「この数を最後の納品してもらえれば今後納品は必要ない」という意味での最終提示数となります。
「最終生産にしたい」という意思表示を、部品メーカーからカーメーカーへの申請によって受付しているところもあれば、カーメーカーから一定期間サービスパーツのオーダーがなかったものを選定して部品メーカーへ通知するところもあります。部品メーカー側から申請できない場合は、カーメーカーからの通達があるまでは供給義務が生じるため、仮にオーダーがなくても作ることができる状態にしておく必要があります。
部品メーカー側からするとFBOによってサービスパーツとしても供給の必要がなくなるため、金型、治具や設備などこの部品専用に使っていたものがあれば廃却ができるため、非常にメリットが大きい話です。というのも、ほとんどの部品メーカーにとって補給品や補用品でサービスパーツを供給し続けるというのは、赤字部品をいつまでも供給し続ける、しかも発注は月に数個から数年に1回しかないようなものまで需要予測がまったく立たない状況のものが多いためです。加えて、サービスパーツの供給は、量産時よりも単価を若干上げられたとしても、採算が合うレベルの値上げはとうてい認められませんので、年に1回使うかどうかというような金型と設備をいつまでも保有し、1回動かしても利益が数百円となれば、金型を倉庫から引っ張り出してメンテして段取りするだけで利益が吹き飛んでしまいます。
供給サイドである部品のサプライヤーからするとFBOには大きなメリットがあるわけですが(よほど利益率が高い製品でない限り)、製品の生産ロットや材料の調達ロットによっては最後に大きな赤字を残して終了する、というパターンもよく見受けられます。
例えば、自動車メーカー側からのFBOとしては最終的に34個納入してくれれば、今後の納品は必要ないという連絡をもらえたとしましょう。この製品に使う材料が特殊なもので一度作ると30000個の製品ができてしまう、となったらどうでしょう。また加えて自社の製造設備の関係で1回の生産でこの製品は3000個できてしまうというような状況もあり得ます。こうなると、たまたま材料切れを起こしていて、材料から調達、製品も在庫0というようなところでFBOとして34個ほしいといわれた場合、まず材料最低調達ロットの30000個−製品生産最小ロット3000個=27000個の材料が最後に残ります。加えて、製品になった3000個のうち、34個しか売れないわけですから、3000−34=2966個の製品が残ってしまう、ということになります。
サービスパーツはもともと赤字で供給しているケースも少なくないため、このように最後に大きくさらに赤字を出して終了となると製品によっては部品メーカーの収益に影響を及ぼします。こうした場合、部品メーカー側からは最後の発注数量であるFBOを増やしてもらえないか、あるいは在庫がある場合、その在庫限りで最終納品としてもらえないか(いわゆる欠量完納)、残った材料を引き取ってもらえないか、調達が困難なことを理由に取引辞退させてもらえないか、同種の材質の小ロット材料に変更して最終納品させてもらえないか(小ロットで販売してくれる材料メーカーや商社に工程変更。別途評価・承認プロセスが必要となることが多い)といった方法で損害を低くおさえる交渉がなされることがあります。こうした相談に対し、どのように対応するかは自動車メーカーごとにかなり異なるのが実情です。
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