日産の部品における製廃|部品供給はいつまで続くか

2021年1月29日更新

日産で使われる「製廃」(「せいはい」と読みます)とは製造廃止の略を意味する用語で、自動車部品のサプライヤーから見た場合、部品供給を終えてもよい部品という意味になります。製廃対象となった部品は、供給義務がなくなります。

自動車自体の、例えば固有の車種・車型が生産終了や生産中止となったあとも、いったん車が市場に出回れば、その車が走り続ける限り、それに使われている部品というのは十数年、時にはそれ以上の長期間、修理をはじめ、一定数需要が生まれるため、自動車部品サプライヤー側にも供給義務が生じる仕組みになっています。

車検で修理が必要になることはもちろん、部品の種類によっては自分で交換される方もいるかと思います。こうした部品はサービスパーツあるいは補用品、補給品といった呼ばれ方をしますが、日産の場合、相模原に巨大な部品センターがあり(サービスパーツセンター、SPCとも呼ばれます)、量産での車両生産が終了した後は各社部品のサプライヤーはここに補給部品を注文に応じて納めることになります。

自動車部品の供給義務や供給責任というと、一見法令で規定があるように思われますが、日本の場合、法律で生産終了した後も何年間の供給義務がある、というような定めはありません。自動車メーカーごとに臨機応変に運用ルールを作成し、要望に応えているというのが実態です。

このため、日産の純正部品をはじめとする補給部品の供給年限についても、独自のルールをもとに部品メーカーと取り決めを行っています。

日産では5年製廃、8年製廃、15年製廃、15年継続発注の4パターンがあります。製造廃止になる部品としては、5年、8年、15年の3種類のものがあります。

自動車はいったん販売されると生産終了後も長く走り続けるものも多く、そうなると自動車部品のメーカーは未来永劫、部品の供給義務が契約上あるのかという話になってしまいますが、現実的には金型や設備も数年に1個程度の需要の部品のためにいくつも保有している余力がないのが実情です。

自動車部品の原価構成は、大量生産、いわば薄利多売が基本となります。というのも、自動車部品として量産で流れるボリュームというのは車種にもよりますが非常に数が多いためです。量産で大量に流れているときは利益確保もできますが、これが生産終了となり、年に数個に落ち、やがては数年に1個というような状態となっていくと金型や設備・ジグが他の製品に使い道がない場合、その管理コストだけでも赤字になってしまいます。

このため一定のルールのもと、部品メーカー側に対して製造廃止が認められており、これはどのカーメーカーでもそれぞれ類似の制度を持ちます。おおむねパターンがあり、生産終了してから一定年数経過していることと、その間の販売数が一定以下であることが条件として採用されていることが多いです。生産終了からの年数がより大きいほど、販売数の基準は緩くなります。生産終了、つまり工場のラインで新車を生産するのをやめることを「打ち切り」ともいいますが、例えば打ち切りから10年経過していて求められる販売数と、20年経過していて求められる販売数とでは、後者のほうが多い数になっています。その基準にあてはまるものは製造廃止にできる、ということになります。

また、製造廃止のパターンは、一括で最後に大量に作って納入するという場合や、部品メーカー側で在庫を持っておくという場合、残り必要数をカーメーカー側から提示してそれを納入し終わったら製造廃止になるといったものなどがあります。 さらに、製造廃止自体を部品メーカー側からの申請方式にしているか、自動車メーカーからの通知方式にしているか、その両方かというような違いもあります。

部品メーカー側から申請する仕組みの有無という点で見ると、日産の場合、部品メーカー側から製廃の制度を使って申請することはできません。

実際に製廃の対象品を作っている自動車部品メーカーに対して、年1回(例年5月前後)、条件を満たす場合、日産側のほうから連絡が来ます。

この製造をやめてもよいという製造廃止の連絡が来る条件というのは下表の通りとなります。

日産の製造廃止の年限
製廃の種類 適用条件
5年製廃 量産打ち切り後(ライン打ち切り後)、5年以上経過しており、過去4年間で合計受注数0個の部品
8年製廃 量産打ち切り後(ライン打ち切り後)、8年以上15年未満経過しており、過去4年間で合計受注数50個以下の部品
15年製廃 過去に8年製廃に選定されていない部品で量産打ち切り後、15年以上経過したもの

ただこの基準は一律適用というわけではなく、永久保証品となるシートベルトやエアバッグ、あるいは海外向けにも販売している車種の場合、各国で自動車部品の供給義務の年限を法律で定めているところもありますので、供給義務の有無が変わってきます。また、他のカーメーカーの車を相手先のブランド名で生産するOEM車の場合も、生産終了から10年の供給義務があるとされ、製造廃止の検討はそのあとからになります。

緊急車両や特殊車両に使われる部品の場合も例外で、これらは需要は少ないですが、かわりが効かないため、流動数が少なくとも15年経過するまでは製造廃止の判断自体を行わないことになっています。エルグランド、キャラバン、ウィングロードに使われる部品が比較的生産終了から長期間手に入りやすいとされるのは、これら車両が緊急車両にも使われているためです。

またその他例外としてはKD部品があります。KDとは海外の生産工場へ送るタイプの部品ですが、日本で完成車の生産(CBU)が終わっても、海外へKD品として使われている場合は、それが終了してから年限のカウントに入ります。

製造廃止を予定していたものの、新しい車種にも使われるようになった場合は復活となり、その車種が打ち切りとなるまでは製造廃止の判断は停止となります。

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